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第250話 勇者として


「セシル、何してる? 置いてくぞ」


空を見上げるセシルにそう言った。


「待って!」


白い尾を揺らしながら、獣人セシルはまた空を見上げる。

空は快晴。そんな光景さえも、今となってはまた違ったものに見えて来るーー。




俺たちが魔王を討伐後、地上に出る為に使ったのはソフィア王国所有の船。

その船は飛行し、浮遊する島を見上げながら空間を飛んだ。ソフィア王国の技術には本当に感心しかなかった。

そして皆の視線を集めるのは紫黒の輝く物体。魔王の城に眠っていた秘宝はアルギナの“転送”の能力によって運び出された。

発見時、魔物たちが周囲に群がっていたものの、多勢に無勢。掃討する時間はそうかからなかった。


地上では天変地異かと思うほどのことが起きていた。

海は荒れに荒れ、天は暗く染まり、大地には異常なほどに大きい穴が出来ていた。

それが全てたった一体の魔竜の力だったというのだから驚きだった。


破壊竜ブレイクドラゴンは破壊の限りを尽くし、数時間足らずの間に地上、海、空を変貌させた。

観察眼の発動は何故か通った。



ブレイクドラゴン

LV.333

ATK.666

DEF.666



これが、その時のブレイクドラゴンのステータスだ。

俺がみた中で最も高いステータス。討伐した魔王もこれくらいあったのだろうか。

破壊竜の咆哮は天を突き抜け、地上に数多の流星群とも言える攻撃は大きな爪痕を残した。


それだけではない。

海の魔竜と比喩されるリヴァイアサンは荒れる海をさらに荒らし、幾つもの大渦を作り出した。

地上では破壊竜による大地の破壊が始まり、まさに地獄絵図となっていった。

人類の終焉、そう表現された意味が身体の髄より理解出来た。



だが、それらに反する力はまだあった。

各国は兵団を走らせ、暴れ狂う破壊竜に立ち向かった。問題は破壊竜だけではなかった。

いくら封神玉による弱体化をしたとしても、魔物の脅威はまだ健在だった。

しかし人類はこれを機に畳み掛けるように、協力し手をとりあった。

ギルドの勇者、魔物撲滅本部の勇者、あらゆる勇者によって地上に残る魔物の掃討が始まった。


そんな中、過去の魔物大戦で活躍した者たちは破壊竜との戦いに挑んだ。

センヴェント、ヴィンスを始め、ギルド長たちが総出だった。

さすがに壮観。俺が生きて来た中で二度は見ないだろう光景。

空には天空陣が浮かび上がり、ヘリオスの村の連中までもが参戦した。もちろん、魔王の城を後にした俺たちもこの戦いに参戦。

後に知る、魔王を討伐した勇者たちの登場に戦場はさらに士気を上げることになった。



その結果、破壊の限りを尽くしたブレイクドラゴンは大地に落ち、人類は闇との戦いに勝ったのだった。

ブレイクドラゴンが地上に出て来て、半日ほどの出来事だった。




その日の夜ーー。

俺は懐かしきシーラ王国にボルティスドラゴンの力を借りて仲間と共に向かい、アリス王女の元へと戻って来た。ボルティスドラゴンの登場に相当驚かれたが、理由を話せばさすが王女の器だ。

相変わらず纏うオーラは一般人の比でない。真紅の髪は美しく、言葉一つ一つが洗練されているようだ。


そして俺は、アリス王女……正確にはシーラ王国が欲した魔王の城の秘宝を渡した。

アリス王女は秘宝に近づきじっと見つめた。途端、力が抜けたように床に落ちる寸前に護衛であるルチアがさっと支える。

相変わらず、俺を見るその目は変わっていないようだが、頭を下げられた。


シーラ王国の王女という立場になり、悪しき魔物時代の終焉を強く願った彼女は、あの手この手で情報を収集した。反感を買ってしまったこともあった。一国の王女というだけでやり過ぎだと他国から忠告されたこともあった。

いくら武力大国として世界の上に立つ王国だとしても、一国で全てを補えるはずもなかった。

が、やはり世界の均衡を保つ為には武力という力を使い他国から反感を買うことがあったとしても、シーラ王国が先に立っていたのは過去からある事実。

そうしたことが背景にありつつ、今回、アリス王女が先導して行動していたことに対して、良くないと思う者たちが多かったそうだ。

シーラ王国の王ではなく、あくまで先導して動いていたのが王女というのは、一部の国においては理に反すると敵対しそうになったという。

それでも、アリス王女はあらゆる情報を収集し、遂に見つけたるは魔王の城に眠る秘宝の存在。


“融合石”という代物は、魔人と黒龍を融合させ、三代に渡って魔王を誕生させた。

神なる力を持つ黒龍は一体の魔人に強大なる力を与え、人類最大の恐怖を生み出してしまった。

俺たちが見た紫黒に輝く物体、あれこそが魔王の城の秘宝。

発見時、さすがにこの大きさは持って帰れないと思っていたのだが、アルギナの能力である転送はそれを可能にした。

元々、アルギナが魔王群側の勇者になったのも、シーラ王国のアリス王女からの推薦。魔物撲滅本部はソフィア王国にあり、シーラ王国とは親交が昔から深く、そんな無謀な推薦も通ったらしい。

後に聞くアルギナの言葉では魔王群に行く気などさらさらなかったそうだが、それで世界の平和に一歩でも近づけるのらと、重い腰を上げたのだという。

反面、アルギナと同志である勇者たちは猛反対したそうだが、アルギナの強い意思により、彼の覚悟を受け入れたそうだ。

クランはそんなアルギナの覚悟を見届け、自分に出来ること、魔物の数を減らし、彼ではなく、自分に注視させる為の行動をとっていった。

それは魔物を目立つように討伐したり、魔王の城に行き来すると聞けば魔人の討伐に積極的に励んだ。

そうすることで、魔王や魔人の視線を外に向けさせたのだ。結果、アルギナは俺たちが来るまで無事生存していたということに繋がった。ただ、魔王やジバルドはアルギナの身元に薄々気付いていたようなのだが……結果オーライということで。


そして封神玉の存在を忘れてはならない。

アリス王女はあらゆる情報を収集していく中で、魔物が出現し出した当初より、魔物の力が総体的に強くなり出した時期があったと知り得た。

封神玉の存在に辿り着くまではあくまでアリス王女の推測でしかなかったそうだが、俺がサラから聞いた話と同じだったのだからさすがとしか言いようがなかった。


黒龍は“死”を司り、神龍は“生”を司る。

古文書には神龍が封神玉に封印されてしまった後に記された為、この世を守るただ唯一の存在は黒龍とされていたようだ。

ただし、古文書にはそう記されているのだが、実際は黒龍と神龍は表裏一体であり元々は一つの存在。

それが、初代魔王によって神龍が封印されてしまったことで、世界のバランスが崩れ始めてしまった。

そうして強大になっていく闇側の力に対抗するように、勇者という者たちが手を上げ、地上に蔓延る魔物を討伐していく活動を始める。

国の兵団然り、勇者たち然り、それぞれの目的は違えど最終的に行く着くのは魔物なき平和な世界。



そして“融合石”に関しては、シーラ王国が厳重に管理することになった。二度と魔物が溢れる世が来ないように……


重要な話があったのを忘れていた。

俺たちがシーラ王国へ魔王の城の秘宝を持ち帰った後の話。

俺はシーラ王国から金貨10000万枚に、食事や宿屋が無料という待遇を受けた。

他にもここでは話しきれないほどに様々な待遇があったが、俺には必要ないものだと断っておいた。

食事や宿屋にしても、得たお金で支払ってこそ価値があるものだと、丁重に断った。

ただ、金貨10000万枚だけは貰っている。


その後、メアとセシルと共にバタリアに向かう中、幸いにもカリダ村へ増援へと向かうシーラ王国の兵団に会った。その時、俺たちのことを知っていた兵団は、テールをカリダ村まで送り届けてくれることになり、ラピスもアルンを連れて彼に付いて行った。

ラピスは何でもカリダ村にあるセルモクラ鉱石を見たいとか言っていたが、実際どうなんだろうな。



ああ、そうそう。俺と『血の契約』をしていたボルティスドラゴンは魔王の城からシーラ王国に送ってもらった以来、見ていない。何処で何をしているのか。封神玉の影響を受けているだろうから、もしかすると勇者か兵団にもうやられてしまったのかもしれない。

ただそれも、魔竜という存在はあくまで人類の敵。俺たちの旅にとっては重要な役割を果たしてくれた。

もし、何処かで再会したその時は、お礼でも言いたい。



そうしてテールたちと別れた俺たちは、バタリアへと歩みを進めた。

以前、来た時とは比べものにならないくらいあっと言う間にバタリアに着き、セシルが顔も知らない獣人たちを仲間にするという名目の元、買い占めた。

いくら魔王が討伐されたと言っても、三日と経っていない。それもあってか、違法売買をする店の取締りはまだまだ出来ていない現状だった。

俺が獣人たちを買い占めたのには、店の人間たちも相当驚いた様子だったが、俺たちがした所業を慌てて入って来た者が伝えた時の顔が今でも思い出す。

結局、金はいいと返してもらい、その店の獣人たちも皆解放された。


バタリアを出てからは、何十人と列をなしながら俺たちは進み、獣人たちが集う場所へ解放された獣人たちを送り届けた。

皆、抱き合い喜び、俺たちは感謝の宴だと丸一夜、獣人たちの元で世話になった。

翌日の朝、まだ眠る獣人たちを最後に、俺とメアは出発しようとしていた。

気持ちよさそうに眠るセシルを残して……




だが、俺とメアがこれからのことを話しながら進んでいると高速で向かって来る者。

セシルが何か言いたげで俺とメアの目を見つめて、置いていったことを怒られた。

俺もメアもセシルを思っての行動だったのだが、セシルは初めから俺たちについていくつもりだった。

そうして俺たちはまだまだ残る魔物を討伐する為の旅を始めている。




歩く道は真っ直ぐに。

勇者とは時として孤独な者であり、人が決して行かない場所や困難な状況にも遭遇することだって何度だってある。

それでも勇者は進み、己の信条を貫き通し、勇者としての使命を果たす。

その使命は様々。

勇者の数だけ抱える使命は違う。

こうして恵まれた仲間に出会うことだってある。

今思い返せば本当にいろんなことがあったなとつくづく思うが、そのどれもこれもが今となっては懐かしい。



勇者2人と獣人1人。

俺たちの旅はもう少し続きそうだ。


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