第248話 5人の勇者と魔王
巨大な白の剣。それは美しくあり、魔王の身体を守るように俺たちの斬撃を何度も防いだ。
巨大な黒の剣。それは悍しくあり、魔王の身体を離れ読めない動きで俺たちを翻弄する。
6つの巨剣が俺たちの攻撃を阻み、魔王自身はほとんど動いていない。
にしてもあの白い剣、相当な硬さだな。
全ての斬撃を防ぎきった上、尚もその美しく壮観な巨剣は俺たちの前にある。
アルギナが魅せる豪快な剣技。消えた斬撃は衝突して白剣を後退させる威力。
だが、それでもなお白の剣の防御は硬く、魔王を守るように立ち塞がる。
こうした防御を固めるのも、やはり、封神玉が破壊されたことによるものか。
ただ、だとしてももう一つの巨剣、黒剣から繰り出される斬撃の威力が計り知れない。
振られた圧だけでずっしりとした空気が流れ、それでいて大きさの割に動きが早い。
「まずは一本」
が、そうこうしている間に、斬撃を受け続けていた白の剣の一つが漸く折れる。
何度か斬りつけるうちに刀身にヒビが入り、その箇所から折れた。ただ、後二本もある。
が、その二本も執拗に斬撃を放っていたクランとアルギナによって盾としての役割を失った。
「これでもうお前を守るものはない! ーーなっ!?」
クランが白の剣を折った直後に言うが、魔王の背後に翼のように出て来たのは何十という白の剣。魔王の背後で円を作るようにあり、大きさは多少小さくなってはいるが、巨剣には変わりない。
そう何本も剣を出せるなんて、ある意味羨ましいな。
と、そんなこと考えている場合じゃない。
黒の剣には悍しい目玉が幾つかついており、黒剣が振られても俺から視線を逸らさない。
しかもだ、俺が放った斬撃を喰うという黒い巨剣。喰う、というより吸収しているようだ。
斬撃が黒の巨剣に直撃した瞬間、どす黒い煙とも何とも言えない何かが斬撃に絡みつくように呑み込んでいってしまう。
この魔王、フォリスモスの王冠やら白と黒の剣やら、守りが強いな。
が、それも時間の問題。
攻迅斬波、天魔。
攻迅斬波による天魔は、吸収させる間もなく黒剣の一つを折った。
その間、メアやセシルも黒の剣の攻撃を避けつつ、攻撃を入れていたことも折れた要因だろう。
そうして残る二本の黒剣が折れるのも時間の問題だった。
セシルの猛攻とも言える激しい連打の嵐は黒剣の目玉を潰し、メアの斬撃は斬るたびに氷結を起こす。
そこへ俺が止めの斬撃。残る一本の黒剣はクランによる光の速度の斬撃によって粉々となっていた。
能力の本領発揮か。
テクニック・ザ・トーナメント終了後のこと。
クランは俺に自身が持つ能力について詳しく話してくれた。
“光化”は攻撃力の上昇、および速度を飛躍的に上げ、表面的なダメージはほぼ抑えらえるという能力。
だが、魔物相手ならばそうはいかない。
魔物の本質は“闇”であり、光と相反する闇の属性を持つ魔物はダメ-ジを抑えられるどころかむしろ倍増するとクランは言っていた。
「お主の噂はかねがね聞いておるぞ。お主もそこの勇者と共に必ず葬らねばならぬ者」
円状にある白剣が飛んでいき、上で回転しながら広がっていく。さらに白剣の数は増え、びっしりと張り巡らされるように周囲をドーム状に囲われてしまった。
「……こんな大層なの作っても俺たちは逃げも隠れもしねえよ」
剣先は全て内に向き、触れようものなら痛いでは済まされないだろう。
何百、いや、何千とあるだろう数。
「あの剣は先ほどまでの剣とはまるで別物。我のエネルギーの一部から出来たアビスの剣はあらゆる攻撃を奈落へと誘なう」
「なるほど、それは面倒だ」
クランは光る斬撃波を放ったのだが、向かれている幾本もの白剣の内に広がる波紋に吸収されていった。
ただ、幸いなのはあの無数にあるアビスの剣とやらがまだ俺たちに向かって来ないこと。
「魔王、お前はまだ本気を出しちゃいないようだが、それは俺たちもだ」
「……ならば、望み通り」
周囲に幾つもの黒球が現れる。それは放たれ床に当たると、数メートルにわたって凹ませた。
これは重力!
当たれば潰される。
そんな攻撃が何発と飛んで来る。
避けるのはさほど問題ではない。問題なのは足場が不安定になっていくのと、その速さ。俺やクランは何なく避けられているのだが、時折、メアが危なっかしい様子を見せる。
アルギナもアルギナで、前戦の影響からだろうか、動きが鈍くなって来たかのように感じる。
「メア!!」
迅斬波で黒球を狙い放つ。
迅斬波は黒球に吸い込まれるように直撃し相殺される。
「ありがーー!!」
黒球が再度メアを襲った。
だが、その時身を挺して助けて入ったのはアルギナだった。
「アルギナ!! くっ!」
黒球は止むことなく、助けに行こうとしたクランまでをも襲う。が、彼の光化した斬撃は外すことなく黒球を消し去る。
アルギナは右脚を押さえており、立ちはするものの不安定だ。
当たったのか。
「ーー先ずは1人目」
漆黒のブレス。アルギナとメアがいた方向に放たれた漆黒のブレスは白剣の壁に当たり大きく波紋する。
……いない?
2人の姿がない。
と、近くで空間がねじ曲がり、2人が出て来た。
アルギナには感謝しきれないな。
「アルギナ、頼みがある」
手短にアルギナに話した。
アルギナの能力を使ってメアをこの場から離脱させてほしいと頼んだのだが、彼女はきっぱりと断った。
自分も覚悟を持ってこの場所まで来た。最後まで皆と戦い抜いてみせる、と。
正直な話、俺はメアやセシルにはこの場から離脱してほしいと戦いをする中で感じていた。
メアは俺と出会ったことで、こんな危険な旅に付いて来てしまった。そうでなければ、もう少しマシな旅が彼女には出来たかもしれない。
セシルには仲間の元に帰るという想いがあり、此処で死んでしまっては元も子もない。
「……メア、そう何度も助けられると思うなよ」
「わ、分かってるわ!」
メアがアルギナに助けられたのは既に三度目。
そうでなければとっくに死んでしまっている。
そして、そうこうしている間にも次の攻撃が始まった。
魔王の龍の爪は床をさらに破壊させ、そのたびに俺たちの足元は減っていく。
狙った頭への斬撃は龍尾で防がれるものの、身体へのダメージは次第に入り出したと見える。
封神玉の破壊による力の低下は魔王の弱体化を現していた。
だが、それでも黒龍の姿へ変貌を遂げた魔王の力は俺たちと戦闘をやり合う。
5体1。どう戦うかは決めていなくても、俺とクラン、セシルが攻撃に徹し、アルギナとメアは援護の形をいつの間にかとっていた。
そして一瞬出来た隙。
攻迅斬波による絶空は魔王を斬り、続けて夢幻斬をMAXの撃技+8で放つ。
それでもなお止まない魔王の攻撃。大咆哮は衝撃波に衝撃波を生み出し、足場を崩れさせた。




