2話
休憩室のレンジで温めなおしたお弁当を開ける。
美味しそうないいにおい。
同期の女子は、私を残して全員寿退職していった。
後輩は外へランチに出かけるが、一緒に行くことはない。
入行したての頃は人付き合いもあって外へ行ったが、
同期が一人減り、二人減りしていくうちに、お弁当派に鞍替えした。
おばあちゃんの影響で、私も料理は苦じゃない。
二人でよく台所に立っていた。
よく、弁当を持ってくるなんてえらいね~とか、大変だとか言われるけど、
私自身は特にそんな風に思ったことはない。
むしろ、好きなものを好きな味で食べられるので満足だ。
「お、ハナちゃん。旨そう」
同期の田中が声をかけてきた。本店に残る数少ない同期だ。
ちなみに、こいつは元カレで、同期のなかでも特にかわいい子と結婚した。
後から知ったが、二股だったらしい。
「あげないよ~」
「ケチ」
「あーら、見目麗しい奥様にお作りいただいたら?」
「あいつ、料理が下手でさー。やっぱ、ハナちゃんと結婚すればよかった。」
再会してからずっと、こいつはこんなことをぬかす。
妻とうまくいってないのか、はたまた、おばあちゃんの遺産でお金があると踏んでいるのか。
こんな奴と付き合っていた過去をどこか遠くへ放り投げたい。
結婚した後、地方へ行ってせいせいしたのに、4月に異動してきた。しかも、私の上司だ。
どうにかスルーする。
「ところで、さっきの伝票、ミスがあったよ。」
「え、マジ」
「付箋つけといたから、なおしといてくれる?」
「えー、ハナちゃんなおしてよ。」
「そんな権限はございませんことよ、か か り ちょ う。」
「あいかわらず、固いよなー。」
「そういうところがお嫌いだから、よそさまとご結婚あそばされたんでしょう?」
あんたはどっかで勝手に食べてくればいい。
これで話しは終わりと、切り上げるように食事を再開する。
私の貴重なランチタイムをあんたで無駄にする気はない。
不機嫌そうな面持ちで、外へ出て行った田中を見て、やり込めた満足感が胸に広がった。
しかし、これが私の転機になるとは、思いもしなかった。




