27、終わるときはあっさりと。
今回の総括をしよう。
結果を先に言えば、私が脳味噌を掻き切って、あの出来事が起こって、魔女が私の血で逝った。
……。訳の分からない話である。寓話にもならない。今昔物語集にも載らない奇妙な話。そんな話を友達である夏夏呼にぼかして伝えて見た所、「エンドならええやんけ」とただ一言さらり言った。
ハッピーエンドがいいだとか、バットエンドだとか、それまたトゥルーエンドがいいだとか言ってこないあたり良い価値感をしている。まず、終わったことに感謝しなければならない。
私はその言いに「確かに」と返答を返して、もうこんな事どうでもいいと思ってしまった。だから、私は「なんか今日食べに行きましょうよ。ちょっとぐらいなら奢ってあげますよ?」と言った。
迂闊だった。
「舞天凛香~。恵神が奢ってくれるってってさ~」
「へ、ちょっと」と止めた頃には遅かった。てか舞天凛香のゴロは気に入った。
「やったー。へーどこがいいのかしら?やっぱり叙々苑?」と天ちゃん。
「駄目だよ~。そんなとこ~。学生らしくサイゼで良いでしょ~」と伽華さん。
「因みに私はサイゼで喜ぶ彼女よ。だからモテるの」と小野倉さんが言った。
「モテる訳ないないやろ」
「はあ?」とか、言うといつもの通り喧嘩が始まった。
宥める伽華さん。仲介する天ちゃん。いつものようだった。
私はこの光景を見て幾らか安心していたようだった。私の求めていたものが、憧れていたものがここにあったのだなと納得して、頬杖を付いて見守っていた。
無機質ではない。色のついた日々を過ごせている。
短命な人類と長命な神や天使。
私は前者を素晴らしい生き方だと思う。
落ちたことが間違いじゃあなかったと自覚するオチであった。
***
「あーあ。耐えられませんでしたか」
翅を仕舞いこんで、仕方がなしにこの地に降り立った。
そこに転がっているから見たくもない人間が醜く淫らに堕落していた。一番最初にその人間と出会った時のようにただただ軽蔑した。それ以上か。ボロボロの雑巾のように枯れ果てているようで、これでは穢れてしまう。ならば綺麗にするべきだと、裁きを与えようと思った瞬間に「ああ……あはっ。んっ」と目の前の人間が聞くに堪えない喘いだ声を発した。
「あ……。何、もしかして、天使様……。わたくしの前に……。んっ。も、申し訳ございませんわ。お約束を……。わ、わたくしは……」
汚らわしい手をこちらへ向けてくる。知らない。こんな人間は。
やめろ。やめろ。この体躯は全て我が知恵の神のためのものなのだ。決して人間如きに指触されてたまるか。
ぐしゃり。
期せずして、その人間の手を踏み潰していた。踵と云う最も重心がかかる位置で、だ。
「あああああっ!!!!あはっ。んっ」
悲鳴と、よがり声の混濁した声は癪に障った。
「汚らわしい。ああどうして……。無礼と思いながらも直接お聞きしたのにこのようなことに……」
そんなことに怒りがこみ上げて来て、もう一つ踏みつけてやろうという思いを致したけれど、なにもそこまで悪魔的ではない。むしろ七つの大罪であるし、そもそもこの人間に構ってやるほどには興味がない。視線が誘導されるのは、注射器だった。いや、注射器に入った血液だった。
「我が知恵の神がこのような選択をしたのは正直、この貰ったばかりの全能を使っても理解に及びませんが、その慈悲深きお意思を無下にした人間がいたのだろうと……」
そこに泡を吹いて倒れている人間を一瞥した。やはり裁きを……。
いいや、こうなったのはこちらにも責任があるとも言える。チェスに負けたのは駒のせいにする人も早々いないことだ。
駒の責任ぐらいは取ってやろう。
我が知恵の神の血液を優秀にも数ミリリットルも摂取したからなんていう理由もあるかもしれない。それが最もか。
一つ、注射器を取り上げて、その中のものを口に含んだ。
「ああ。まだ、まだ神聖さは失われていません」
まだ。まだだ。まだ。取り戻す余地はある。
我が知恵の神には止めて頂かなくては。この状況の一切合切を。




