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僕らは一度も始まらなかったはずなのに、どうしてこんなに苦しいんだろう。  作者: 大天使ミコエル


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88 秋の始まり(2)

「あんたたちも行く?」

 なんて橘に聞かれて、僕と日向は3人の買い物に付き合うことになった。

 なんでも、ショッピングモールへ、修学旅行で使う品を買いに行くのだそうだ。

「まあ、同じグループだしね」

 なんて、澄ました顔でそう言われたら、莉子と買い物に行けるチャンスを、そうそう逃せるはずもなかった。

「僕も、買わないといけないもの、あるし」

 なんて。

 まあ、それは嘘じゃないけど。




 ショッピングモールをわいわい歩く。

 旅行前からこれだけ仲良く出来ていれば、旅行も期待できるのではときないかと思えた。

 莉子も、オフショルのトップスにショートパンツなんていう出で立ちで、女子に挟まれて笑っている。


 女子と歩いてるときの莉子、なんか緩いよなあ。

 僕も、莉子と軽口をたたくこともある。そのうえ、幼なじみで、もう10年以上一緒にいるんだ。

 それでも、ここまで緩い笑顔で笑ってもらえることなんてない。

 そりゃあ、女子と隣に住んでる幼なじみとじゃ、扱いが違うのは仕方がないことだろう。

 けど、それでも僕が、莉子のどんな顔だって見たいのに。


「視線が重い」

「え?」

 突然、隣を歩いていた日向にそう言われ、じっと日向を見た。

「お前、莉子見るとき、その重い愛がダダ漏れだから」

「へ?」

 予想外のことを言われ、面食らう。

「どういうことだよ……」

「『俺のだし』的な」

「そんなわけ……」

 ないとは言い切れないけれど。


 そんな会話をしているところへ、前の3人が、

「2人は何見たい?」

 なんて振り向くものだから、

「うおわっ」

 と、日向と二人して変な声をあげてしまった。

 橘の視線が、痛い痛い。

「僕、カバンがもう真っ黒でさ」

「真っ黒?」

 キョトンとした顔を向けたのは莉子だった。

 莉子と目が合うのは、今はちょっと照れくさい。


「バスケ友達と出かけたら、なんかドロだらけになってさ」

「あー。俺も」

「お前もか」

 合間に、橘のツッコミが入る。

「日向は何買う予定だったん?」

「まあ、タオルくらいは必要かなって」

「着替えも持っていって」

「服はTシャツなんだし、ジャバジャバって洗えばよくね?」

「よくないわよー!」


 そんなこんなで、みんなでそれぞれわいわいしながら買い物を進めていった。

 日向のタオルの柄にまでツッコまれながら。




「あ」

 橘が寄っていったのは、よりにもよって下着屋だった。

「これかわいい〜。新調しよう」

 おい。

 突っ込みたいが、声に出せずにいると、後の女子二人もそこに寄っていった。

 僕たちが見えないってことか?それとも男だと思われてない?

「確かにかわいい……。修学旅行だし、新しいの買おうかなぁ」

 莉子まで……!

 おい!僕の存在忘れないで……!

 まったく、恥じらいというものをうんぬんかんぬん。

 見ない見ない見ない。

 見たら想像してしまいそうだ。

「…………」

「うわ、目、ほっそ」

 隣にいた日向が笑い出す。


 結局僕は、日向と薄目でにらめっこをする羽目になってしまった。

 ……なんでこうなるんだよ。

準備段階からグループで楽しそうにしてるの、かわいいですね。

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