第1章 6話 束の間の平穏
正直、まだ頭が追いついてない。
数日前まで日本の高校生だったのに、今は異世界で剣と魔法の世界を旅してる。
しかも能力は「無属性魔素を自在に操れる」って……チートすぎるだろ。
でも、使えば使うほど魔素が体に負担をかけてくるし、完全コピーできない神級魔法とかもあるから、油断できない。
それに……エターナルって神が俺を「芽を摘む」対象に指定してるらしいし。
怖いよマジで。
今日の宿は街道沿いの小さな宿屋。
古びた木造で、暖炉の火がパチパチ鳴ってる。
リリアが剣の手入れをしながら、隣で座ってる。
「ユウマ、魔素の増幅は順調?」
「うん、セイルの装置のおかげでだいぶ安定してきた……けど、疲れる」
俺は掌を軽く握って魔素を感じてみた。
確かに増えてるけど、体が重い。
セイルは机でノートを広げて、何かを計算してる。
「ユウマの無属性は枯渇の影響を受けにくい。
理論上は魔素を無限に近づけられるけど……実践はまだ未知数だ」
ミアはベッドに寝転がって、天井を見ながら尻尾をパタパタ振ってる。
「ユウマってさ、異世界人なのに意外と普通よね。
もっと『おお! 俺TUEEE!』とか騒ぐと思ってたのに」
俺は苦笑いした。
「騒ぐ元気なかったよ……転生した瞬間から魔物に襲われてさ」
リリアが笑いながら剣を鞘に収めた。
「ユウマは真面目すぎるのよ。
もっとリラックスしてもいいのに」
ミアが突然起き上がって、俺の顔を覗き込んだ。
「ねえ、ユウマって彼女いた?」
「は? 急に何!?」
俺は思わず後ろにのけぞった。
セイルがメガネを押し上げて、冷静に言った。
「興味深い質問だ。異世界人の恋愛観を知る良い機会かも」
リリアもニヤニヤしながら寄ってきた。
「そうよね〜。ユウマ、どんな子がタイプ?」
俺は顔を赤くして手を振った。
「いやいや! そんな話じゃなくて!
俺たちは世界を救うために集まったんだろ!?」
ミアが尻尾をフリフリしながら笑う。
「ふふっ、照れてる〜。可愛いじゃん」
セイルが真顔で言った。
「照れは魔素の循環に悪影響を及ぼす可能性がある。
今すぐ白状した方がいい」
「白状って何だよ! 俺は普通の高校生だったんだぞ!」
リリアがクスクス笑いながら言った。
「まあまあ、ユウマは純情なんだから」
俺は頭を抱えた。
(……このメンバー、みんな変だろ……)
その時、宿の外からドカン!という爆音が響いた。
窓から見ると、遠くで黒い霧が立ち上っている。
ミアが耳を立てた。
「使徒の気配……近いわ」
リリアが剣を抜いた。
「行くわよ、ユウマ!」
俺は立ち上がり、魔素を集中した。
「了解!」
旅はまだ、始まったばかりだ。




