第1章 5話 使徒の影
ユウマたちは枯渇の村を後にし、さらに北へ進んだ。
大陸の風景は変わり始めていた。
木々がまばらになり、地面は乾いた土に変わる。
魔素の枯渇が深刻な地域に入った証拠だ。
ミアの猫耳がピクピク動く。
「ここはヤバいわ。強大な魔素を秘めた魔物がいる..」
セイルは測定装置をチェックしながら言った。
「魔素濃度が20%以下。
このペースじゃ1ヶ月でこの地域は魔法が使えなくなる」
「この辺りの地域が特にやばそうだな」
リリアは剣の柄を握りしめ、ユウマを上目遣いで見た
「ユウマの無属性魔素の力で増幅できるかやってみるない?..」
ユウマは頷いた。
「...まあやるだけやってみよう」
四人は街道の脇で休憩を取った。
セイルが装置をユウマに近づける。
「無属性魔素をこの水晶に流し込んでくれ」
ユウマは掌を広げ、魔素を集中した。
装置の水晶が眩い光に包まれた
「増えているぞ.....だがこれは微々たるものだ..
この地の延命はできるかもしれないが根本的
な解決には至らない...」
「やっぱり使徒を倒すしか方法はないってことか...」
リリアは剣を握りしめた。
「待って....さっきからずっと強大な魔素の反応がある」
ミアは顔を青ざめた...
「この気配は一度感じたことがある....前の使徒と酷似している....でも魔素量は倍以上だ..これは..」
その瞬間-辺り一面が神々しい光に包まれた。
??「我の微々たる気配を察知できるとは...だが
もう遅い....もうこの空間は我の結界魔法
「アーク・ガーデン」によって包囲されている」
「お前が本体の使徒なのか...?」
「先日は我の分身が世話になったな...先の戦いを
我も分身体を通して見させてもらった。実に見事
であった、転生者よ!どうだ...お前も世界を創りかえる
ために協力してくれないか!」
リリアとミアは怒りが込み上げてきた
「そんな話に乗る訳ないでしょう!ふざけないで」
「そうだぞ!大体お前らは何のために世界を滅ぼそうと
しているのか理解ができない。」
「黙れ、役立たずの調停者に愚かな獣人よ」
使徒はゆっくりと手を上げ、霧が渦を巻く。
「我が君は言われた。
この世界は穢れた
人間の争い、欲望、破壊……このままでは世界はどのみち遅かれ早かれ滅亡する〜ならせめて自ら手で終わらせたいのだ。
使徒の声は嘲るように続いた。
「魔素は汚染された。
だから、全てを無に返し全てを創造し直す。これは
我が君の慈悲の心だ。それが何故貴様らには響かぬ..
リリアは剣を構え、嘲笑った。
「そう...無茶苦茶な話ねそもそもエターナルは創造の力は有しているが未来を見通す力は持っていない...
なのに何故世界は滅びると決めつけているのか..
それは正常な判断ができていない証拠よ。貴方ら
使徒は洗脳されているだけなのよ...本当に可哀想...」
使徒から笑みが消えた
「何を言っても我の心は常に凪いている。全ては
我が君の御心のままに。私達の仕事は世界から
魔素を吸い取り神に刃向かうものの芽を摘むこと。」
「なんかやばいのがくるぞ!」
使徒が手を振り上げ、黒い霧が爆発的に広がった。
霧は触れたものを枯らし、地面がひび割れ、木々が一瞬で灰になる。
四人は散開した。
「いくぞ!」
セイルが詠唱を始めた。
「アクア・クエイク・ドミヌス! (侵食神断津波」
地面が震え、四方八方から津波の波が押し寄せ使徒の足元を崩す。
「今だ!」
ミアは弓を連射。
「消えろ!」
矢が使徒の体を貫くが、霧のように再生する。
「畳み掛ける!」
リリアが突進し、剣を振り下ろした。
「はあっ!」
剣が使徒の腕を斬るが、霧で再生し、体勢を崩したリリアに向かって光の光線を放った... そして
光の光線はリリアの胸を貫いた
「リリア!」
「....はあ、実につまらん...その程度で神に刃向かおうと よく言ったものだ...自分の実力も正確に物差しで
測れない役立たずの調停者はこの世界にいらない...
しね。」
ユウマは一瞬取り乱しそうになったが冷静を保っていた
「つまらないのはどっちだ。」
「...なんだと?」
「お前は所詮エターナルの意思の元コントロールされている傀儡に過ぎないんだよ。自由がない生なんか
生きている意味があるのかw。お前の方が死んだほうがいいよw 」
盛大に煽り散らかした。真顔を貫いてはいたが内心では
心臓バクバクでかなり焦っていた。
(これで俺の方に敵意を向いてくれ...その隙にリリアを
誰かが治療をしてほしい..)
これは敵の動きと味方の動き頼みの賭けだった。
「ふむ...そう焦るな。すぐあの小娘の後を
追わせてやろう」
(勝った....)
「使徒とやら...精々僕を楽しませてくれよ...」
使徒はその瞬間無数の光の光線を放った。
「ウォーター・ウォール!」
ユウマはコピー済みの水魔法のバリアを展開した。
「そんな軟弱なものはバリアとは呼ばん!」
使徒は壁を壊し、ユウマに襲いかかる。 だが
「お前を誘う罠に決まってんだろ!」
ユウマは火属性魔法を使った
イグニス・フレア・エクリプシス・ドミヌス! (劫火神焔蝕影支配)
上級魔法の炎が使徒の霧を包んだ...
この戦いの間にミアとセイルの2人がかりでリリアを
蘇生した。
そして少しだけ戦いに余裕が生まれた時に
「やったか」
(それ言っちゃいけないやつでしょ...ああ死ぬわこれ)
とセイルさんが特大フラグを立ててしまい、案の定
「ふふ...面白い。我と対等に戦える者はこの世界には
少なくてな。久しぶりに少し本気を出してやろう。」
使徒が手を広げ、黄金の光が爆発した。
「神級魔法……デストロイ・ディヴァイン・ブレイズ! (破壊神聖業火)」
神級魔法の炎が四方を包み、アーク・ガーデンの全範囲を焼き尽くす...
空気が焼け、地面が溶け、これを防ぐ術はなかった...
たった一つの事を除いて...
「やるしかねえか!」
ユウマは神級魔法をコピーした
無属性魔素を利用して今使用できるありったけの
魔素を込めた。
イグニス・フレア・アビス・ソブリン・ドミヌス! (劫火神焔深淵主権支配)
神級魔法の激しいぶつかり合いで結界が崩壊した。
衝撃でユウマは吹き飛ばされ、全身にやけどを負った
神級は完全にコピーできず、かなりのダメージを受けた
使徒は霧を揺らし、言った。
「まさか...あの攻撃を受けきりかつ俺に傷を負わせる
とは...ふふふふ面白い!ただ残念だ。もうお前は
ボロボロだ。もう私を楽しませられない...
久しぶりに楽しい時を過ごせて愉快であった。
今ラクにさせてやるぞ...ん?」
そしてセイルが
「今あなたを結界内に封じ込めました。そこからでれば
あなたは消滅します。大人しく消えてください」
使徒は一瞬顔を顰めたが、再び笑みを浮かべた。
「ふむ..ならば一度退くとしよう...だが近いうちに
また会いに行くぞ!その時はお前らの最期だ..。
精々残りの少ない余生を有意義に過ごすんだな..」
使徒は黒い霧を巻き上げ、ゆっくりと消えていった
「くそ...仕留めきれなかった」
リリアが駆け寄り、ユウマの傷を押さえた。
「あなたのせいじゃないわ...むしろあなたはよく
やっていたのよ...私にもっと力があれば....」
ミアが続いて
「それをいうなら私だって、使徒との戦いで
なにもできなかったのは一緒よ...」
セイルも
「僕だって最後もっと強力な結界を張っていれば完全に奴を消滅させることもできた...だから責任はある」
「とにかく今回の戦いはみんなに課題が見つかった
のだからよしとしましょう。それよりはやくユウマに
治癒魔法をかけてあげないと...」
ユウマの傷はかなり深かった。
神級魔法を受けたのだから当然だ。
「傷は消えたけど、痕が残るな...」
ユウマは息を荒げ、笑った。
「痕は残っていてもいい。これは僕らの敗北の証だ...
絶対に次は勝つぞ」
するとリリアは笑った
「なんだよ!なんか面白いこと言ったか?」
「ユウマ...ありがとうね」
ユウマは少し照れくさそうに笑いながら
「仲間を助けるのは当たり前だろ!」
するとセイルが怪訝な表情を浮かべて
「ユウマの脈拍が急上昇している。何か異常があるのではないか...?」
「はっ倒すぞ..」
「え..」
旅は続く




