第1章 5話 使徒の影
ユウマたちは枯渇の村を後にし、さらに北へ進んだ。
大陸の風景は変わり始めていた。
木々がまばらになり、地面は乾いた土に変わる。
魔素の枯渇が深刻な地域に入った証拠だ。
ミアの猫耳がピクピク動く。
「ここはヤバいわ。魔物の気配が増えてる」
セイルは測定装置をチェックしながら言った。
「魔素濃度が20%以下。
このペースじゃ、1週間でこの地域は魔法が使えなくなる」
リリアは剣の柄を握りしめ、ユウマを見た。
「ユウマの無属性魔素が、唯一の希望よ」
ユウマは頷いた。
「試してみよう」
四人は街道の脇で休憩を取った。
セイルが装置をユウマに近づける。
「無属性で魔素を増幅して」
ユウマは掌を広げ、魔素を集中した。
装置の水晶が光り、セイルの目が輝く。
「増えた……枯渇を逆転できるかも」
リリアは剣を握りしめ、笑った。
「やっぱりユウマはすごいわ」
その時、森の奥から重い足音が響いた。
地面が微かに震え、黒い霧がゆっくりと広がる。
ミアが弓を構え、低く言った。
「使徒……本物だわ」
霧の中から現れたのは、エターナルの使徒。
黒い霧に包まれた巨躯の人型で、高さは5メートルを超える。
体は魔素の渦でできていて、触れるものを瞬時に枯らす。
目だけが黄金に輝き、声は低く、地響きのように響いた。
「調停者リリア……そして異世界人か」
使徒はゆっくりと手を上げ、霧が渦を巻く。
「エターナル様は言われた。
この世界は汚れすぎた。
人間の争い、欲望、破壊……すべてをリセットし、新たな無から創り直す」
使徒の声は嘲るように続いた。
「魔素は汚染された。
だから、すべてを無に還す。それがエターナル様の愛だ」
リリアは剣を構え、叫んだ。
「愛? それが愛なら、私はそれを拒む!」
使徒は笑った。
「拒むか……ならば、罰を受けよ」
使徒が手を振り上げ、黒い霧が爆発的に広がった。
霧は触れたものを枯らし、地面がひび割れ、木々が一瞬で灰になる。
四人は散開した。
セイルが詠唱を始めた。
「テラ・クエイク・ドミヌス! (大地神震支配)」
中級魔法で地面が震え、使徒の足元を崩す。
ミアは弓を連射。
「当たれ!」
矢が使徒の体を貫くが、霧のように再生する。
リリアが突進し、剣を振り下ろした。
「はあっ!」
剣が使徒の腕を斬るが、霧が再生し、リリアを吹き飛ばす。
ユウマは無属性魔素を集中。
セイルの土魔法をコピー、無詠唱で発動。
地面から岩の壁が湧き、使徒を囲む。
「これで!」
使徒は壁を壊し、ユウマに襲いかかる。
ユウマは火の魔法をコピー。
イグニス・フレア・エクリプシス・ドミヌス! (劫火神焔蝕影支配)
上級魔法の炎が使徒を焼くが、完全には倒せない。
使徒は低く笑った。
「面白い……無属性か」
使徒が手を広げ、黄金の光が爆発した。
「神級魔法……デストロイ・ディヴァイン・ブレイズ! (破壊神聖業火)」
神級魔法の炎が四方を包み、すべてを焼き尽くそうとする。
空気が焼け、地面が溶け、仲間たちが悲鳴を上げる。
ユウマは魔素を全開に。
使徒の神級魔法をコピーしようとした。
無属性で炎を相殺、無詠唱で発動。
イグニス・フレア・アビス・ソブリン・ドミヌス! (劫火神焔深淵主権支配)
神級魔法の炎がぶつかり合い、爆発する。
衝撃でユウマは吹き飛ばされ、腕に火傷を負った。
神級は完全にコピーできず、少し傷を負った。
使徒は霧を揺らし、言った。
「その力……実に脅威だ。
早いうちに芽を摘んでおきたいが……ここで争うのは少々危険かな」
使徒は黒い霧を巻き上げ、ゆっくりと後退した。
「次に会う時は……お前を消す」
使徒は消え、静かになった。
リリアが駆け寄り、ユウマの傷を押さえた。
「ユウマ! 大丈夫?」
ユウマは息を荒げ、笑った。
「神級……ヤバいな」
セイルは測定装置を拾い、言った。
「エターナルは本気だ。
リセットを加速させてる」
ミアは弓を下ろし、言った。
「次はもっと強くなるわ」
ユウマは立ち上がり、拳を握った。
「俺が止める」
旅は続いている。




