第1章 第3話 獣人の斥候
三人で町を出て、北へ続く街道を歩き始めた。
ユウマはセイルの横を歩きながら、魔素枯渇の話を聞いた。
セイルはクールに説明する。
「魔素は大陸の地脈から湧き、生き物が使うと拡散して戻るサイクルだった。
でも今、還元率が50%以下に落ちてる。
これは魔素がどこかに吸い取られている証拠」
ユウマは掌を広げ、無属性魔素の可能性を感じた。
「俺の能力は普通と違うんだろ..どうにかなるんじゃないか?」
セイルはメガネを直し、興味深げに言った。
「無属性のことは僕もあまり詳しくはないが多分俺の推論になってしまうが無属性は魔素枯渇の影響を受けない。この世界の大部分は無属性魔素でできている。だがそれを利用しようとしたら体が負担に耐え切れず崩壊してしまう。お前のようなやつは別だがな。だからこの世界の生物は進化した。そしてそれぞれの体に適した属性の魔素へと体内で変換しそれを魔法に加えて発動する。それが各属性魔法の成り立ちだ。だが所詮は無属性の派生にすぎず、エネルギー変換効率は劣ってしまうんだ..だから無駄な魔素を消費してしまう。
だが君にはそれがない!
ならば僕の水属性魔素で作った水泡を君の無属性魔素能力でコピーをしてしまえば、通常よりも高い濃度の魔素を含んだ水泡が作れる。それを繰り返していけば微量ではあるが魔素が増えるんじゃないか。完全に予想でしかないが可能性は0ではない...ものは試しだ...
早速やってみよう」
セイルが手のひらに魔素を溜めて水泡を作り出した
「これをコピーしてみてくれ!」
「こんな感じでいいのか?」
「ああ..ちょっとまっててくれ。今測定装置を取り出して数値を測ってみる...」
三人で街道の脇に止まり、セイルが測定装置を取り出した。
小さな水晶の球に先ほど作った水泡を入れる。
球が光り、セイルの目が輝いた。
「魔素が……僅かだが増幅している...
いけるかもとは思っていたが本当にいけるとは....」
リリアは剣を握りしめ、笑った。
「私が呼び出した人なんだからこれぐらいできなきゃね!」
その時、森の奥から足音が聞こえた。
軽やかで、獣のような。
リリアが剣を抜いた。
「ミアかも」
木陰から、猫耳の少女が現れた。
17歳くらい、尻尾が揺れ、弓を背負っている。
ミアだ。
彼女は三人を見回し、ニヤリと笑った。
「リリア、遅すぎるのよ。一体いつまで待ってたと
思ってるの...それであなたが異世界人?」
「ああ...初めまして、僕はユウマ!この世界には訳あって転生してきたんだけどまあ..色々あって神を倒す事になっちゃって...仲間を探しているんだ...」
リリアが
「前回、あなたは強い仲間を連れてきたら仲間になる
って言ったわよね!ちゃんと連れてきたわ!これで
仲間になってくれるよね?」
だが、ミアは怪訝そうな顔をしていた..
(なんか、俺めっちゃ見られてる....ちょっと気まずいな
...でもミアか..獣人てのは初めて見たけど結構可愛いなあ...)
と邪な考えを抱いていたら
「こいつそんな強くないでしょ!確かに魔素量は
すごい量だけど魔法の適性はないじゃない...
そんなの豚に真珠よ...」
リリア
「もう察しが悪いわね...そんな通常よりも魔素量が多い異世界人を連れてくる訳がないじゃない....
ユウマはね...「無属性」の適性者なのよ!」
「嘘つきは嫌いだ!大体「無属性」なんて使ってる人を
実際に見たことも聞いたこともないぞ!」
「まあ見てもらった方がはやいから...」
(またこの流れね..少しは信じてくれてもいいじゃねーか...)
「なんか魔法だしてみてほしい。」
「なんであんたの命令を聞かなきゃいけないの?」
「まあまあ..見たらわかるから」
と言われミアは気だるそうにしながらも風を起こす魔法を放った。
「はい..コピー」
ユウマも風を起こす魔法を発動した。
ミアは唖然としていた。
「あんた...名前は?」
「だからユウマだって!」
「そう...ユウマね。わかった。私が仲間になって
あげるわ。」
「いいのか...?」
「まだ完全に信じている訳ではないけど、無属性てのも気になるしね...それに私も復讐したいからね....」
すると突然ミアが弓を構え、試しに矢を放った。
矢が木に刺さる。
「私の村は枯渇で壊滅した。
すべてはエターナルのせいよ」
ミアは加入を了承した。
彼女は獣人族の斥候で、隠密と弓の達人。
過去に村を失い、一人で生きてきた。
(やっぱりこの地域だけじゃなく大陸全域で被害を被っているんだな...)
「ひとまず仲間を増やせたしこれからどうするんだ...
各地で被害が拡大しているならはやく止めなきゃいけないからここで足踏みしてる場合じゃないよな...」
すると突然ミアの耳がピクッと動いた。
「この近くに魔物の群れがいるわ...私の実力を
見せるいい機会だしまずはそいつらを倒しましょう!」
枯渇で暴走した魔物群──角狼の群れだ。
10体以上が街道を塞ぎ、赤い目を輝かせて咆哮を上げる。
リリアが剣を抜いた。
「これは前の魔物よりも強いわ..腕がなるわね!」
セイルは本から離れ、メガネを直した。
「僕も少し頑張ろうか... アクア・サージ・ドミヌス! (蒼淵神流支配)」
中級魔法の詠唱とともに、水の波が地面から湧き、角狼の足を滑らせる。
リリアが突進し、剣を振り下ろした。
「はあっ!もう一体そっちに行ったわ」
ユウマは無属性魔素を一点に集中させた
セイルの水魔法をコピーし、水の壁を構築させた
水の壁が角狼の攻撃を弾いた。
そして連続でリリアの火属性魔法のコピーを行い発動した。
イグニス・フレア! (劫火神焔)
角狼は消滅した。
「ミア!そっちは大丈夫か?」
「心配無用よ!見てなさい。私の力を!
ヴェントゥス・ガスト・エクリプシス・ドミヌス! (虚空神風蝕影支配)」
上級魔法で風の魔法で地面が削れるほどの威力を持った
風が周囲に吹き荒れて残っていた角狼は殲滅された。
「....すごいな。俺もコピーしようとしてみたが、完璧にコピーはできそうにないな...」
「当然よ!私だって上級魔法を習得するまで4年の月日を費やしたのよ!それを二週間そこらしか魔法に触れてないあなたに使われたら私も泣けてくるわ....」
「ユウマとミア!その話はちょっと後にして!さっき
倒した角狼の魔素が一点に集まってるのよ!これは
何か起きるわ....」
するとその一点から禍々しい光が溢れ...次に見えたのは
さっきの角狼の3回りぐらい大きな角狼だった。
「なんか狼てよりもうライオンみたいだな...」
「魔素量もかなりのものだよ..これは一筋縄では
行かないかも...」
両者睨み合いの拮抗している状態の時に誰も気づけな
かった....俺らが索敵している間に徐々に角狼は近づいてきていた...そして俺らがやつの間合いに入ったその
瞬間---一瞬にして距離を縮められ攻撃を繰り出された。幸い俺は無詠唱での水の壁を発動したため
無傷ではあったが...リリアは防ぎきることができず
傷を負い、セイルは水の壁の展開が少し遅れ、傷は浅いが魔素が尽きかけていた。ミアも先ほどの戦闘で上級魔法をぶっ放したため魔法は発動できず、弓だけの戦闘となってしまう。
「どうするのユウマ!今の私は足でまといなるから
この場で期待できるのはあんたしかいないのよ!」
「....やるしかねーか」
(火属性魔法はここ最近の旅の途中リリアから少し
聞いていたから大丈夫だろう....風に関してはさっき見たばっかで心元ないが今は悩んでる場合じゃない...」
ユウマは魔素を全開に。
無属性で体の右半分には火属性、もう片方には風属性の魔素を構築し、それをミックスした。
本来は火属性魔法使いと風属性魔法使いの合わせ技なの
だがユウマはそれを1人でやってのけた
「いっけぇぇー!」
炎の竜巻が角狼を飲み込み、焼く尽くす。
それはどちらも上級に届くレベルであった...
「信じられないわあなた...さっき完璧にコピーはできないって言ってたじゃない!私に嘘をついたの?」
「いやいや、できてなかっただろ...だから足りない威力を補うために火の魔法を追加したんだよ...」
「それよそれ!私の上級魔法なんて非じゃないレベルの
神業よそんなの。それにできてないとか言ってるけど
私の目から見てもあんたの風魔法は私のと遜色ないわよ..謙遜するのもいいけどそれは時に敵を作るわよ..」
「多分土壇場でやったからまぐれで成功したんだよ...
実際今もう一度やれって言われたらできないだろし..」
「まあそういうことにしておくわ。リリアとセイルは傷は大丈夫なの?」
「大丈夫だよ!セイルが回復魔法をかけてくれたから。」
「問題ない...だが少し疲れた。魔素が回復されるまで
少しゆっくりしよう。それに伴って少し調べて
おきたいことがある。」
「一体何を調べるんだ?まさか実験じゃないだろうな..
お前の実験に付き合うと少々..というかだいぶ面倒な目
にあうからな...」
ミアは顔を顰めながら..
「一体どんな実験をしているのよ..」
「実験ではない。エターナルの事だ。各地で起きている
事件に目を通しておきたい。被害が多い地域から
助けていかないといけないからな。」
「なるほど..話を遮って悪かったな。では次は
エターナルに関する事件について調べていこう。」
4人は歩き出した。




