第二十四話 理解
思い返してみれば、前に永介が時間を確認しているときもスマホを使っていた。
綺は再度自分のスマホの電源ボタンを押す。
電源はつかなかった。
「…携帯、使えねえのか? 」
綺は静かにうなずく。
「充電もたっぷりあったはずなのに、いきなり電源が落ちて…」
「そうか…。ん? …綺。これ」
鐵昌は綺にスマホの画面を見せた。
SNSのサービスが使えなくても、ネット上のニュースを見たり、情報を検索することは出来るようだ。
画面を見て綺は無意識に「え? 」と、声を漏らした。
『〇〇県の中学生行方不明
今月十九日から、〇〇市在住の中学一年生 蘇我見 綺さんが行方不明になっております。警察の調べによりますと、綺さんは今月十九日に「友達と遊びに行ってくる」と家を出て、夜になっても帰ってこない綺さんを不審に思い、綺さんの母親が連絡を試みるも繋がらないということです。
警察は何らかの事件に関わっているとみて、捜査を続けています。
同じく〇〇県▢▢市在住の中学二年生 物岐 晃さんも行方不明となっており、関連性などを調べております』
綺たちの知らない間に地上では、綺たちは行方不明と思われているらしい。
無理もない。
逆に我が子が何の連絡もなしにいなくなったことに対して何も言わない方が可笑しい。
「行方不明…」
綺の顔に変な笑いがこみ上げてくる。
こめかみのあたりを汗が伝い、地面にポタっと落ちた。
「…まあ、何にも知らねえ外の人間が考えることだ。行方不明と考えて妥当だろう」
鐵昌はスマホをポケットに入れて荷物の所に向かう。
最初に持っていたショルダーバッグの中からBB弾を取り出して、エアガンの中に入れる。
「エアガンって、いつも持ち歩いてるんですか?」
「いや…流石にいつもは、持ち歩かねえよ。今日は射撃場に行ってただけだ」
鐵昌はライターと煙草を手に持ち部屋を出た。
それと同時に、晃がムクりと上体を起こした。
「う~ん。綺おはよ~」
晃が背伸びをしながら綺に声をかける。
「…フフフ」
綺は晃の顔を見て、さっきの晃が寝ているときのことを思い出して、つい笑ってしまった。
「なに笑ってんの? 」
「なんでもないよ~」
「っていうか聞いてよ。さっきめっちゃなんか気持ちいい夢見てたんだよ。もちもちのものの上に思いっきり沈んでぽよぽよしてたんだ~」
晃のその言葉で、綺はとうとう吹き出してしまった。
コンビニの外では鐵昌が周りを確認しながら煙草を吸っていた。
最近はやることがいっぱいあったので、こうして息抜きの時間が取れたことに、鐵昌は少し幸せを感じていた。
ヒタヒタ。
足音がした。
鐵昌はすぐさま足音に気づき、後ずさりする。
足音のした方向には一体の謎の生物がいた。
「…エアガン持ってくりゃ良かった」
鐵昌が小さな声でそう呟くと、謎の生物はだんだん顔を鐵昌の方に向けて行った。
「イッテタ…」
鐵昌が少し目を見開く。
「イッテタ! ニンゲン ウマイ! クイタイ! ウマイ!」
謎の生物は目玉が入っていない顔を鐵昌に向け、舌を出しながら発声していた。
「ニンゲン! ウマイ! イッテタ! 『ゴシュジンサマ』ガ!!! 」




