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地下鉄防衛戦  作者: 睦月
第弐章・出会いに出会う
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第二十三話 綺と鐵昌

「お…おにぎり!」

「りす」

「す…す…スマートフォ…スマホ!!! 」

 綺と晃はやることが無かったのでしりとりをしていた。


「あー。そのまま言ってたら綺の負けだったのにー」

「スマホだよスマホ。早くほから始まる物言って」


 綺と晃のしりとりを、美香子は暇そうに眺めていた。

 鐵昌は一人でエアガンを分解していた。


「あさがお」

「お…? お…おにぎり…」

「それさっき言った」


「そうだった! お…あ! お風呂!! 」

 晃がよく思いついたね。と言う。

「…最近入ってないわね~。久しぶりに入りたいわね~」

 美香子が髪を触る。


「そういえばここにきてからシャワーとか浴びてないよね。もしかしたら私達気づいてないだけでめっちゃ臭いのかな!?」

 綺の言葉に晃が顔をしかめる。


「ちょっと。綺はともかく俺とか美香子さんとか鐵昌さんまで臭くしないでくれる?」

「あ、ご、ごめん…って!! 私はともかくってどういう意味よ!! 」

「おっとつい本音が」


 晃はニヤニヤしながら口を手で覆う。

 綺は晃の膝を叩いた。


「でもまぁ確かに…お風呂は入りたいな~」

 晃が天井を眺めながら言った。



 一晩が明け、綺は起床して背伸びをしていた。

 晃と美香子はまだ寝ていたが、鐵昌は昨日と同じ位置でエアガンをいじっている。

「鐵昌さん徹夜したんですか? 」

「そうだけど…あ」


 鐵昌の手から小さなねじが転がった。

 綺はねじを拾って、鐵昌に渡した。


 凄い手だなぁ・・・。


 綺は鐵昌の手を見て思った。

 大きさ、太い筋、血管。まるで激戦を繰り広げてきたような傷跡。

 綺は鐵昌の手を少し見ていた。


「…何見てんだ? 」

 鐵昌が尋ねる。

「な、なんでもないです! 」

 綺は鐵昌から目をそらした。


 数分経ってから、綺は鐵昌に質問した。

「…鐵昌さんは、どうして自衛官になったんですか?」


 綺の質問に、鐵昌は一瞬手が止まったように見えたが、何事もなかったかのようにエアガンをまたいじりだした。

「…別に…大した理由なんかねぇよ」


 そう言うと鐵昌は立ち上がり背伸びをした。

 荷物を取りに行くために、鐵昌は足元で寝ている晃と美香子を起こさないようにわきを歩いたが、寝ている晃と美香子を見て、立ち止まっていた。


「どうしたんですか? 鐵昌さ…」

 鐵昌の所に近づいた綺も、寝ている晃と美香子を見て固まっていた。


 寝ている晃と美香子は、お互いの寝相が絡み合って、寝ながらお互いを抱きしめていた。


 晃は寝ながら美香子に頭をすりすりする。

 その光景に、綺は二人を起こさないように声を殺して笑っていた。

 鐵昌は無表情で二人を見ていた。

 そして何も言わずポケットからスマートフォンを取り出し、寝ながら抱き合っている二人の写真を一枚撮った。

 その鐵昌の行動に、綺は思わず吹き出してしまった。


「て…鐵昌さん…」

 笑って上手く呂律が回らなかった。


「…晃がなんか言ってきたらこれ見せればいいんじゃね? 」

 鐵昌が撮った写真を見せながら言ってきた。


 少しにやけていた鐵昌。


 何気に初めて見た鐵昌の無表情以外の表情に、綺は新鮮な気がした。

「ちょ、鐵昌さん性格悪いですよ」

 綺が笑いながら言う。


「はぁ…人のこと勝手に臭くする奴よりかはましだと思うけどな」

「あ…その節はすみませんでした」

「別にそんな気にするほどのもんでもないけどな」


 綺は ん? と思い、鐵昌に聞いた。

「え、あの、鐵昌さん」

「あ? なに? 」


「スマホ…使えるんですか?」

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