第二十二話 男飯
「…ってなわけで、一緒に活動することになった藤原 鐵昌さんです!」
晃が言い、綺と美香子が小さく拍手をする。
「初めまして~鐵昌さん~。私の名前は天智 美香子よ~。よろしくお願いします~」
美香子が自己紹介する。
鐵昌は美香子を見ていた。
「…似てんな」
「似てる? 」
「こっちの話だ」
その後は、鐵昌の話題で盛り上がった。
「シリア…? そこに小さいころ住んでたんですか?」
鐵昌は小さいころシリアに行き数年過ごしてから帰ってきた帰国子女らしい。
「そう。小学五年ぐらいの年齢の時日本に帰ってきた」
「そのぐらいに日本に帰ってきたってことは、中学に入ってから英語楽だったんじゃないですか?」
「…シリアの公用語は英語じゃなくてアラビア語だ。中学に入ってからの英語は決して楽じゃなかった」
「でもそこから英語を学校で習って~日本語と英語とアラビア語話せるって~トリリンガルでかっこいいじゃないの~」
綺と晃と美香子が一斉に鐵昌に押し掛けるが、鐵昌は顔色一つ変えず三人の言葉を聞いていた。
そんな時だった。
ぐうぅぅぅ~!!!
静かな部屋に、鐵昌以外の三人の腹の音が谺する。
「…お腹~…すいたわね~…」
「ずっと何も食べてなかったから…でもまた生の野菜食べなきゃいけないのか…」
「電子レンジあるから温めたらいいんじゃない? 」
「それ名案」
お腹が空いて床に倒れている三人を見た鐵昌は一人立ち上がった。
「…ちょっと待ってろ」
鐵昌はコンビニの従業員部屋から出て行った。
まず鐵昌がやったことは、安全の確保。
コンビニ内に謎の生物が入ってこないようにシャッターを閉めた。
コンビニの中に謎の生物がいないのを確認してから、商品を物色した。
「最近のコンビニは便利だな…こんな物もあるのか」
鐵昌が見ていたのはコンビニの生野菜コーナーだった。
人参や甘藍などが置いてあり、賞味期限を確認した鐵昌はそれをいくつか手に取った。
それから糵、占地、塩や胡椒、だしスープの素、紙皿や割り箸などといったものをかき集め、テーブルが無いのでレジカウンターに置いた。
「…あ」
包丁が無い。これじゃあ野菜が切れない。
鐵昌は少し考えた。
甘藍は手で出来るが、さすがに人参は手で折ることしかできない。
鐵昌は暫くして、ある考えにたどり着いた。
包丁の代用品を思いついたのだ。
代用品を探しに商品棚を物色する。
「…さすがにこれは賭けだったが…一安心だな」
手に取ったのは、キッチン鋏だ。
キッチン鋏は元々食品を切ることを想定して作られているため、刃の部分がギザギザしている。
鐵昌は調理を始めた。
調理と言っても食材を切ったりして電子レンジで温めるだけの簡単なものである。
切った野菜を温め、最後に少量の塩と胡椒とだしスープの素をかけ、プラスチックのスプーンでよく混ぜる。
鐵昌作、野菜炒め(?)が出来た。
そのころ、綺が空腹の体を何とか立たせてコンビニに食料を取りに行こうとしていた。
「晃…美香子さん…決して死なせはせん!」
綺がドアに手を持っていこうとしていたその時、乱暴にドアが開いた。
鐵昌が蹴って開けたのだ。
「あだぁ! 」
驚いて綺は尻餅をつく。
「あ、いたのか。すまん」
鐵昌は謝ると両手に持っていた野菜炒め(?)と割り箸を綺たち三人の前に置いた。
「ここ、これは…! 」
「さっき作った。尻餅突かせた詫びだと思って食え」
鐵昌はその場に胡坐をかいて座り口に割り箸をくわえて割って野菜炒め(?)をガツガツと食べだした。
その様子を見ていた晃は涎がたれ、割り箸を手に取った。
綺と美香子も割り箸を持ち、手を合わせた。
「「「いただきます~! 」」」
綺と晃はバクバクと野菜炒め(?)を口に入れる。
時々、美味い!と感嘆の声を上げていた。
「て゛つ゛あ゛き゛さ゛ん゛あ゛り゛か゛と゛う゛ぅぅぅぅぅ!!!!! 」
綺が口に物を含んだまま泣き、感謝の気持ちを伝えた。
「鐵昌さんありがとうございます! めっちゃ美味しいです!! 」
「とても美味しいわ~! ありがとうございます鐵昌さん~」
鐵昌はどういたしましてとは言わなかった。
ただ、幸せそうに自分の作った料理を食べる三人を見て、
鐵昌は思わず口の端が僅かに弧を描いていた。
野菜炒めといっても炒めてないからね、(?)が付いています。




