78.聖戦にあらず
”東方の夜明け”はテロリスト扱いされているが、一般にテロ組織と呼ばれている連中とは大きく異なる点がある。それは、神を信仰してるわけではないので、聖戦という概念がない事だ。神のための戦いで死んだら天国に行ける。などと思っていないから。自爆特攻はまずしないし。最後まで死にものぐるいに戦って死ぬほど、戦意も高く無い。
つまり降伏してくれる可能性がある。若くて、重い罪を犯してない奴らに限っては。と条件がつくが。
老人で、ましてや大量虐殺犯人だと、捕まって裁判を受けたら有罪確定。通常は死刑だが、もし無期懲役になったとしても、老い先短い余生を獄中で尋問や虐待を受けながら過ごすことになる。これなら、万に一つの可能性にかけて抵抗したほうが良い。と、考えてもおかしくない。故に老害は殲滅一択。無理に逮捕しようとして、味方の被害を増やすのは愚策。
ただし例外もある。ユラン・ゾルターン。東欧を中心に活動し、18世紀のロシア宮廷で、パーティーに出席した事が文書で確認されている大魔導師。つまり、200歳以上は生きている、”東方の夜明け”の魔術サイドの精神的&術的支柱。
今の俺なら、修行を重ねれば同じ程度まで生きられる可能性が高いので、さして不思議にも思わないが。地球の常識からしたら驚異。とくに延命の法を求めるのは、始皇帝の例にもあるように権力者の多くが抱く夢。故に、この人に関しては殺さず捉えるようにと、各所から要請という名の圧力がかかっている。
なので、侵入したら接触して説得。説得できなければ無力化して拉致。この無力化に、俺の能力が期待されている。最初は同年代の若者に接触して説得する役だと思ってたのに。お爺さんの相手とは予想外。
大魔導師相手だと。制限付けた”舐めプ”すると危ないかも。なので、段階的制限開放の手順を定めておく。最初は模擬戦で見せた範囲。二段目は術式と呪符カードを身内用に変更し、加えて式神も使用。これで戦闘力が2倍程度にあがるはず。三段目は異世界のデバイスと術式も解禁。ただ、これをやると、あとの追求が煩さそうなので、できれば避けたい。
というわけで。往きますか。




