37.異世界通貨と世界の形
口座ができたものの、中身は空っぽ。と、思っていたら。そこそこ入っていました。「アカウント取得の保証金が必要」だったそうで。山田さんからは、支度金兼眷属へのお小遣いと思ってほしい。ということです。「もっと欲しいなら。日本円をこの口座に振り込んでくれれば換金する」ということなので、連休明けに入ってきたパテント料の一部を振り込んでおきます。(全額振り込むと税金が払えない)
通貨単位は日本語訳だとMP。国家の発行する実態のある金貨や紙幣ではなく、ネット通貨やビットコイン的なものだそうだ。いまのところ、日本円換算で300万円くらいと、学生身分としては大金。でも、これからは、ネットの使用料もこの口座から自動引落なので、安心してると危険かも。
とりあえず、こちらでサーバーを構築できるハードウエアを注文しようと思ったら。配達区域外。と、表示されてしまった。山田さんに相談すると。「正式な市民証が届けば、それが転移座標のビーコン発振器を兼ねるので、少しまってください」との返事。というわけで、ハードウエアはお預け。
ソフトのほうは配達制限などないので。今まで買えなかった魔法コードやマニュアルを注文。30倍速の加速空間に籠もり。またも体感で数ヶ月経過する学習研究の日々。知的好奇心が満たされて幸せ。
さて、ここまでは単純に”異世界”という呼び方をしてきたが。複数世界にアクセス可能になったことで。この呼び方では不適切になってしまった。
現在、観測されている世界は5桁を超え、観測報告は日々増え続けているので、正確な数を知った次の瞬間には更新されているレベル。そのうち、観測機が実際に近傍通過観測したものが5桁。実際に人が行った世界が4桁。と、多すぎて、とても管理などできない。
名称は。個々の世界を単一世界と呼び、全体は、多次元的に図示すると雲のように見えることから複数世界雲と呼ぶ。地球人にわかりやすいイメージで説明すると、銀河やアンドロメダの星雲を思い浮かべると近い。
銀河の星雲と違うのは。この雲をより細かく超次元的に観測すると。個々の世界は点ではなく、メモ用紙を重ねた様に見える。これは地球で言うところの平行世界の重なり。超過去に分岐したと予想される世界群が近接して存在しており、生物相や発展の歴史も似通っている。この並行世界の重なりを姉妹世界と呼ぶ。
観測する技術や行き来できる技術力を有する世界は、僅かだが複数存在する。この移動技術を持つ世界を宗主世界と呼び、その世界を親として管理される子世界を植民地と呼ぶ。なお、植民地の名称は過去に宗主世界が収奪や移民を行っていた時の名残であり。現在は、大幅な干渉は減っている。
そもそも、まったく違う世界に行っても住めないし、産物も有効利用できるものが少ない。食べ物は、違う世界の生物には毒となる場合も多いし、食べられても味が違いすぎて受け付けない。おまけに、世界間の移動には膨大な費用がかかる。結果として、類似していて住める姉妹世界との貿易や行き来が細々と行われる程度。
他世界への旅行は一部の金持ちの道楽とされている。ただ、ネットの普及により、情報のやり取りは増えてきた。そのための共通仮想通貨制度。なのだそうな。
地球に例えると。ネットの普及でメールや通販を使う人は増えたが。海外旅行をする人はあまりいない。と、いう感じと思えば良いのだろうか。
ちなみに宇宙開発の方はどうなってるか調べたら。超光速航法技術はあるものの、多額の費用を浪費して住めない惑星に到着しても経済効果は劣悪。という評価が下されてしまい、宇宙開発は斜陽産業だそうです。
1MPは1.5円くらいを考えています。




