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12.むかし語り
彼女の名前は橘美月という。もともとは神職を兼任する豪農の家柄で、地主としての仕事に加えて、周辺の神事や祭りなどの行事をまとめて仕切っていたらしい。それが戦後間もなくに行われた進駐軍の農地改革で一変した。財産の大半を強制的に取られ。神主だった曽祖父は食うためにサラリーマン化。もともと、見る力は女性に引き継がれていたので、神主のくせに神様が見えなかった事がコンプレックスになっていたことも大きかったらしい。
昨日一緒だった女性も、弱いながら見ることができる親類で。相談にのってもらっていたそうな。
見える上に会話まで成立する力が災いし。周囲からは異常者扱いで気味悪がられていた。先日泣いていたのは、古い塚に悪さをしようとしていた悪ガキ達を止めようとして、暴力を振るわれた上に塚を壊されてしまったから。おかげで、「妖精さんが死んでしまった」らしい。
日本にも妖精さんっているのかな、それって妖怪か土地神みたいなものでは。と突っ込むのも無粋なので。とりあえず、後日、同行して塚を確認。可能なら復元する約束をして別れた。
教授からの評価は低かった。見た目は会話してないもんね。というか、声に出して女性と話してないのは事実。話してたのはシロじゃないか、と、自己突っ込みしつつ、研究室を後にした。




