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枯れゆく時に思ふこととは  作者: 靉靆
序章
1/13

桜、思ふことあり

何話かに分けて書きますが本質的には短編です。

行き当たりばったりな所もあるかもしれませんが、人に公開する作品としては私の処女作になります。

どうぞお付き合い頂ければと思います。

 僕は毎年咲き続けた。

 四百年近くも前にこの世に生を受け、人々を見送り続けた。


 雪が溶け、陽の光が暖かく感じられる頃が僕の咲く季節。

 人々は僕が咲かせた花を見るために毎年この季節に集まってきた。豪華な料理を持ってきて笑顔で食べる人たちもいれば、お酒を無理して飲んでしまったのか調子を悪そうにしている人もいる。また、ある人はずっと僕を見上げている。


 人々はやっていることも考えていることもきっと違う。しかし、きっとこの春という季節が好きなのだろう。

 ここに来ている人々の表情は皆、穏やかに感じられる。


 そんな代わり映えのない風景が毎年、この春という季節に訪れる。そして、僕はそんな風景を見るのが大好きだった。


 しかし、それも今年が最後になる。

 もう来年からは花を咲かせることはできないだろう。


 僕は今年に死ぬのだ。


 何故それが分かるのかは、自分でも分からない。

 言っている事をおかしいと感じる人もいるかもしれないが、僕が死んでしまうことはなんとなく分かる。


 だから僕は精一杯咲こう。


 少しでも人々の思い出に残るように。少しでも人々の穏やかな顔が見られるように。



■◇■◇■◇■◇■◇■◇■◇■◇■◇■



 ひと際立派な桜の木、その下に一人の少女が佇んでいる。


 少女は桜の木をしばらく見上げていた。やがて少女は何かに満足したような微笑みを見せると、その根元に寄り添うようにして座った。


 少女は肩から下げていた小さめの鞄の中から一冊の本を取り出した。彼女は一度伸びをすると、栞を挟み込んでいたページをそっと開いて目を落とした。


 彼女が開いた本はブックカバーがしっかりとかけられており、栞は桜の花びらの形が切り抜かれたステンレス製の品だった。


 それらの品は、彼女が本を好んでいることを表す為に十分な力を持っているように感じられる。


 あたたかな日差しが桜の木によって切り分けられ、穏やかな木漏れ日となって彼女の周囲を包み込んでいた。その光景はなんとも神秘的な雰囲気を醸し出している。


 そんな雰囲気の中で本を読む少女のことを桜の木は知っていた。


 自らに寄り添い、やわらかな風の中で本を読む少女。


――この子は……。


 桜の木は自らの記憶の海に沈んだ。



===================



 その少女を初めて見かけたのは十数年前に遡る。


 それは桜の木が力いっぱいに花びらを咲かせている頃だった。


 一組の男女が穏やかな表情を浮かべて歩いてきた。女性の方は生まれたばかりであろう赤ん坊をおくるみに包み込んで、幸せそうに抱きかかえている。


「楓、僕は本当に幸せだって感じているよ」


 男性の方は隣を歩く女性、楓に向けて優しい表情を顔一杯に浮かばせながら話している。


「正直言うとこれからについて不安な所も多くあるけど・・・それでも、僕はこの子と君を一生かけて守っていきたいと思う。そして、幸せを守り続けたいと思う」


 男性は穏やかながらも引き締まった顔を作りだして並んで楓に向けて告げた。


 その男性はまだ若かった。


 桜の木がこの男を初めて見かけたのは数年前。当時の男性はまだ学生であった。


 これまでも桜の木は様々な人を見てきた為、すべての人を記憶できているわけではなかった。しかし、その男が桜の木を初めて訪れたことは桜の木には分かった。


「すごいなぁ」


 一人の学生服に身を包んだ少年が桜の木を見上げながら感嘆の声を漏らしていた。樹齢が四百年近くになる桜の木。その桜の木を見て目を大きく見開いているのが桜の木には妙に滑稽に映ってしまった。そのため、桜の木は少年がここに来たのは初めてであるということがわかり、さらにこの時のことを良く覚えていたきっかけにもなった。


 それから数年経ったこの日。男の年がまだ二十半ばほどであるのは容易に想像がつく。桜の木からすれば当然でもあり、人間から見てもまだまだ若輩と言われる歳である。


 そんな彼からするならばこの先はまだまだ不安も募るだろう。しかし、愛する我が妻と子を守るためならば弱音も言っていられないということも大いに理解できる。


 そんな彼の強い意志を捧げられた楓は驚くこともなく表情は穏やかなまま告げた。


「伸吾さん。私も今すごく幸せです」


 楓は目を細めて隣を歩く男性、伸吾にさらに告げた。


「私と弥生だけではなく伸吾さんの幸せも守って行けないと家族とは言えませんわ。ですから、これからは家族三人一緒に幸せになれるように頑張りましょうね」


 楓は抱きかかえている子供、弥生の顔を伸吾に見せながら笑っている。


「ははっ。そうだったね……。ありがとう、楓」


 伸吾と楓、そして弥生。この三人の家族は本当に幸せなのだろうと桜の木は思った。もしもまたこの場所に来てくれるのならば、その家族を見守っていきたい。桜の木は漠然とそんなことを思い浮かべていた。


 そして、この時はまだ赤ん坊だった弥生が今現在桜の木に寄り添っている少女である。その三人の家族との出会いは桜の木が少女を知るきっかけであり、初めての出会いでもあった。

はじめまして、靉靆です。

分かりやすいハンドルネームにしろよってツッコミがありそうですが、それについては私がなんとなくこの名前を気に入ってるのでご勘弁を。。。

ちなみに読み方は「あいたい」です。

意味は古語辞典やネット検索で調べれば出て来ると思います。古語単語なので。


まずは、この作品に目を通していただいてありがとうございます前書きにもありますが、私が小説を書くのはこれが初めてなので心機一転と言わんばかりにオリジナル作品を書いてみました。

さてさて、今回は短文ですが小説家としてのタブーとかも色々やらかしてしまっているのではないかと思っています。正直不安です。申し訳ありません。

まだまだ若輩者なので、そういう点について指摘や感想がいただければなぁ・・・なんてことを考えてたり。。。

もし頂ければ今後の参考、及びやる気の糧にさせていただきたいと思います。

指摘については辛辣な言葉を浴びせられても挫けずに頑張りたいという所存でございます。

ぜひ私を成長させていただければ……なんて。。。

この作品は短編として短くするつもりですが、その間お付き合いいただければと思います。

次回更新に関しては本当に申し訳ないですが不定期になりそうです。本当に申し訳ないです。なるべく早くアップできるように頑張りますので見捨てないでいただければ……。

以上よろしくお願いいたします。

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