【混ぜる一手】
『配送完了いたしました。奇声をあげるくらい、驚愕してくださったみたいです。今後ともよろしくお願いいたします。』
男は数時間前に別れた仕事仲間にメッセージを送り、スマホを懐に収めた。
「それでは……いただきます」
両手を合わせ、スプーンを手に取る。
――綺麗、ですね。
運ばれてきた『冷製ホワイトソースのオムライス』を前に、男は頬を緩めた。
都内某所の人気カフェということもあり、二十時を過ぎても店内は賑わっている。客たちは各々の時間を過ごしており、カウンター席の男が一人、薄笑いを浮かべながらオムライスを眺めていても、気にとめる者など誰もいなかった。
――ああ、今日も食事が、美味しい。
一口ずつ、しっかりと噛みしめるように食事を堪能する。数年前、あの方に出会うまでは、ただの生命維持でしかなかった行為なのに。
「またこんな気持ちになれるなんて……人生、何があるかわかりませんね」
脳裏に浮かぶのは、先ほどの仲間の顔だ。出会ってからまだ日は浅いが、今はどんな太客からの連絡よりも、彼からの連絡が待ち遠しい。
――いつでも頼ってくださいね。私はあなたの味方ですから……。
男は満面の笑みを浮かべ、もう一度オムライスにスプーンを入れた。
そして、心のままに手を動かす。
ケチャップの赤が艶々と映えるチキンライスと、
純白の美しいソースを、
ぐちゃぐちゃに、掻き混ぜた。




