第1話 沈みゆく船の、最後の漕ぎ手
初の投稿になります。
この投稿小説は私の投資の勉強のためにAIを使ってnoteに同じ名前で投稿した作品になります。
私の未熟さで、リライトがうまくいっていない部分もあると思います。
ご容赦頂ければと思います。
楽しんで、かつ皆様の投資勉強の一助になれば幸いです。
当稿に出てくる名称は架空のものであり、実在の人物・団体・事件などとは一切関係ありません。
俺、鈴木学が三日かけて作ったツールは、
共有フォルダの底で、
誰にも使われないまま静かに眠っている。
検査装置のトラブル報告書。
客先から飛んでくるエラーログ。
それを自動で仕分けして、過去の対応履歴と照らし合わせ、原因の当たりまで付けてくれる。
流行りのAIと一緒に頑張って組んだ代物だ。
手作業なら一件三十分かかる初動調査が、ボタン一つで三分になる。
誇るほどの出来じゃない。
でも、確実に楽になる。みんなが楽になる。
そう思って作った。
「鈴木さーん、これどうやるんだっけ」
田所さんが、自席から振り向きもせず声を投げてくる。
役職定年でラインを外れた、俺より五つ上の先輩だ。
手元のモニターには、俺が配ったツールの画面が開いている。
「あ、はい。今行きます」
俺は席を立つ。
三度目だ。今週、同じ説明を、同じ人に。
「ここのボタンを押して、ログのフォルダを選んでもらえれば——」
「いや、それは聞いた。そうじゃなくてさ」
田所さんは大きくため息をついた。
世界中の不幸を一身に背負ったような顔で。
「なんで俺が、こんな新しいやり方を覚えなきゃいけないわけ?
今までのやり方で、別に困ってないだろ」
——困っている。あなたの初動調査だけ、いつも倍の時間がかかっている。
そのしわ寄せが全部、俺のところに来ている。
とは、言えない。
「いえ、慣れれば絶対こっちが速いので。最初だけ、一緒に——」
「だからぁ、その『慣れるまで』が面倒だっつってんの。
仕事増やすなよ、お前」
田所さんはマウスを乱暴に動かして、ツールの画面を閉じた。
そして、印刷した紙の束を引っ張り出し、見るからに非効率な手作業に戻っていく。
当てつけのように、わざとゆっくりと。
俺は自分の席に戻った。
(派遣の宮田さんは、隣の島からその一部始終を見ていた。
——鈴木さんのツール、私こっそり使ってるけど、神なんだよなあ。
なんでこの人、あんなに下手に出るんだろう。
その声は、学には届かない。)
午後、再雇用の沢渡さんが会議室に俺を呼んだ。
元部長。定年してからも嘱託で残り、なぜか現場に口を出し続けている。
「鈴木くん。今期、また若いのが一人辞めるってな」
「……はい。森くんが、来月で」
森。三年目の、まじめないい子だった。
俺が教えたことを、一番ちゃんと吸収してくれていた後輩だ。
「お前の教育がなってないからだろ」沢渡さんは腕を組んだ。
「最近の若いのはすぐ辞める。だがな、それを引き留めるのが先輩の務めなんだよ。
俺たちの頃はな——」
俺たちの頃は。
この言葉を、今日で何回聞いただろう。
「俺たちがいなくなったら、お前がこの会社を引っ張っていかなきゃいけないんだ。
わかってるのか? だからこそ厳しく言ってる。期待してるんだよ」
期待。重たい、ありがたい言葉だ。
その期待のおかげで、俺の担当は気づけば三人分に膨れ上がっている。
定時という概念は、もう何年も前に俺の人生から退職した。
「……すみません。もっと、ちゃんとやります」
会議室を出る。
(森は、机の引き出しに辞表のコピーをしまいながら思っていた。
——辞める理由、鈴木さんじゃない。
むしろ逆だ。あの人みたいに、すり潰されたくないだけだ。
あの人がいなかったら、俺はとっくに壊れてた。
最後にちゃんとお礼を言おう。言えるだろうか。
その声も、学には届かない。)
俺は、たぶん、無能なんだと思う。
沢渡さんも田所さんも、俺よりずっと長くこの業界にいて、
たくさんの修羅場をくぐってきた人たちだ。
その人たちが口を揃えて俺を叱るんだから、俺に足りないところがあるんだろう。
教え方が下手だから、後輩が育たない。要領が悪いから、仕事が回ってくる。
優秀な人は、きっと、もっとうまくやる。
残業して、最終のバスは間に合わないので、自転車を漕いで帰る。
築二十年のアパート。冷えた部屋。コンビニの弁当。
それでも、一つだけ、楽しみがある。
スマホを開く。証券アプリ。
半年前、現実から逃げるみたいにして始めた投資。
最初はおっかなびっくりだった。
でも、ひとつだけ、いい銘柄を見つけたんだ。
『テクノエルピス』。半導体まわりの装置部材を手がける中堅メーカー。
業績は右肩上がり、配当も厚い。証券アナリストも軒並み「強気」。
SNSでも、わかってる個人投資家たちが口を揃えて推している。
今日の終値も、また高値を更新していた。
含み益が、俺の月給の数ヶ月分になっている。
画面の緑色の数字を見つめていると、ほんの少しだけ、息ができる気がした。
もしかしたら。
もしかしたら、定年前で会社を辞められるかもしれない。
あと少し、あと少しだけこの含み益が育てば。
あの会議室の沈黙から、田所さんのため息から、
沢渡さんの「俺たちの頃は」から、降りられるかもしれない。
沈みゆく船にも、たった一つ、救命ボートがある。
俺は、その小さな緑色の光に、未来を預けた。
——それが、致命的な見落としだったと気づくのは、まだ少し先の話だ。
初投稿ですが、楽しんでいただけたでしょうか。
もう少しだけ暗い話が続きます。
次話はできるだけ早く投稿したいと思います。




