第22話
【ケルベロスが追い付けないでいる】
ほっ。このまま逃げてくれ。
【あ、マインちゃんが立ち止まった】
【今度はシロツメクサで花冠を作り出した……】
【ケルベロスは襲ってこないぞ?】
えーっと?どういうこと?
【様子をうかがっているのか?ケルベロス……】
【うわっ、うなり声をあげた!】
【マインちゃんがしりもちをついたように見えたんだが?】
ケルベロスが頭を寄せているぞ?
【そうか、ケルベロスの頭を寄せさせるために座りなおしただけでしりもちじゃないのか】
いや、うなられてびっくりしてしりもちついただけだと思う。
【シロツメクサの首飾りをかけてるぞ……】
【なんでケルベロスは襲わない?】
【やはり、花冠に重要な意味があるんじゃ……】
【ちょ、今見に来たんだけど、どういう状況?】
【ああ、イクシオ様が動き出した!うー、あっちも気になるけどこっちも気になる!】
イクシオが?まぁいい。いけ好かないイケメンのライブ配信なんて後で録画を5倍速再生流し見で十分だ。
【やばいっ!ケルベロスが巨大化した!】
【マインちゃんっ!】
【逃げ……ん?】
【ん?】
【ん?】
【マインちゃんの後ろに足を踏み出しただけ?】
【拡大した。よく見ろ、アドレスはこっち】
はられたアドレスを見に行くと短い動画が再生された。
スターマインの後ろを拡大表示した動画だ。画質は悪いが、シロツメクサの間にちょろちょろと角兎の姿が見える。
次の瞬間、角兎は巨大化したケルベロスの足にふみつぶされていた。
【……助けたのか?】
【マインちゃんを……?】
【ケルベロスが、巨大化して全力で角兎をやっつけた?】
【オーバーキルすぎwwww】
【いや、驚くとこそこじゃない、ケルベロスがどうしてマインちゃんを助けたんだ?】
【テイムしたんじゃない?】
【テイム?いや、ダンジョロイドがモンスターをテイムなんて聞いたことがないぞ!】
【マジで?】
【お前、何で知らないんだよ!】
【いや、常識なの?】
【常識だろ!】
常識なのかな?モンスターの名前も知らない人も配信見てるし、テイムできないのを知らなくても普通?
そもそも、今スターマインを動かしてる義姉ちゃん、テイムって単語すら知らない可能性……。
いや、勉強してるのかもしれないけど……。
テイムってラノベやなんかでは、名前を付けて契約が成立するとか、強制的に従わせるとかいろいろあるけど……。
【なぁ、花の首飾りをつけてたじゃん、マインちゃん】
【あれが、隷属の首輪みたいな役割してたりして?】
【まさか?】
【いや、あり得ない話じゃないよな】
【ちょ、俺、花冠の作り方調べてくる!】
【俺、蓮華畑で練習してくる!】
【いや、今は蓮華のシーズンじゃないだろう!】
【おまっ、蓮華博士か!】
【いや、田植え前に田んぼに蓮華生えてるもんだろ?もう田植え終わってるじゃん】
【そうそう、常識じゃん。蓮華は田んぼの土にすきこんで肥料にするんだ】
【緑肥っていってだな、蓮華やシロツメクサは根粒菌が窒素を作ってくれるんだ】
【農家さん、美味しいお米をありがとう】
【ん?職業バレてる】
【いや、どうしてバレないとwwww】
……蓮華とシロツメクサだったのは偶然なのか?何か役割があってのことか?
って、違う違う。意味はないよな。
だって、義姉ちゃんが意味ある行動をするわけはない。まったくの初心者なんだから。
ダンジョロイドで壁を触って「触れる~」とか言うレベルの……。
【おい、イクシオが立ち止まって、前を見たままだぞ】
【なんか見てるんじゃないか?ダンジョンじゃなく、コックピットで】
【マインちゃんの配信とか?】
【ああ、まぁ、ケルベロスをテイムしたなんてライバルとしては気になるだろう】
ん?ライバル?冗談じゃない。
【ドアの中に入っていくぞ!】
【階段が見える。3階層への扉だったのか】
【って、2階層のボスがケルベロスだったってことか?】
【初心者ダンジョンじゃないのかよ!】
スターマインがカメラに顔を向けて、両手を合わせて謝っている。
【え?なんで?】
【また見てねお願いってこと?】
いや、あのポーズはごめんね勇樹っていうときのポーズだ。
なんで義姉ちゃん謝ってんの?結果としてスターマインは無傷だし、登録者数増えてるし、ライブ配信視聴者数もすごいことになってて収入も上がるし……。
約束通りログインもしてくれたし、階段の踊り場でログアウトも守ってくれるってことだよね?
【ああ、配信終わっちゃった】
それから先もコメントはどんどん流れていく。まとめサイトや検証掲示板でも話が盛り上がっている。
スターマインがケルベロスをテイムしたと。他の魔物もテイムできるのではと行動を起こす者たちもいる。
さすがスターマインの声を多いが……。
お義姉ちゃん……テイムしたなんて思ってないよなぁ。もふもふさせてくれた。かわいい!くらいの……。
ピロピロとスマホのメッセージアプリが音を鳴らす。
「あ、そうだ。電話をしようとスマホを握り締めたままだった……」
メッセージアプリを確認する。
『かわいい犬とお友達になったの』
思わず額を抑える。
犬?
どうすれば犬に見えるのか!
しかもかわいいだ?
そう言えば、昔から義姉の「かわいい」基準は人とはちょっと違うところがあった。
『すごいね。おしゃべりができるのよ!』
なんだって?ケルベロスと会話ができるだって?
『雪月花ちゃんって言うの。左の子から雪ちゃん、月ちゃん、花ちゃんよ!』
……名前、付けてた。
ラノベ通りなら、それ、契約してる……。
義姉ちゃん……やらかしすぎ……!
第二章終了でーす
天然でちょっと抜けてる義姉ちゃんかわいよねー。
でも、いざとなったら命がけで義弟守るし、義弟を本気で叱り飛ばすの。
でも普段はぽやぽやーで、逆に義弟に世話焼かれてる。
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