勇者の剣
「それで、話してもらいましょうか」
「何をだ?」
「アンタについてよ、私に隠してくる事いっぱいあるでしょ」
家に帰った私は家事を終わらせて、お弁当を作り終えた後ソファに座りながらクリカラに問い詰める事にした。
「分断の力とか私知らなかったし」
「それは言ってないからな」
「なんで言わないの?」
「我にも色々あるのだ、優理にすら話せない秘密や我の力がな。まあ、今の我には分断の力しか残っていないがな」
「それって昔は色んな力があったってこと?」
「そうだ」
分断の力でも体から薬の効果を切り離すとかいう魔法の様な能力だったのにそれを複数持っていたのね・・・
「なんで今はないの?」
「秘密だ」
「なんで!?」
「秘密だからだ、これを知ってしまうとこの世界の為に優理をどうにかしないといけない」
「そんなに!?」
「そんなにだ。しかし状況が変わってきているのも事実、我達の予想では魔物はいなくなり平和になっていると思っていた。勇者と魔王の歴史は語り継がれ人々はあの激闘を忘れないはずだった」
「でも、違ったのね」
「ああ、何があったのか分からんが勇者と魔王は忘れられて魔法も空想のものになった。何かがおかしい、魔物も優理の前に現れるしな」
「ふーん、でも一つ言える事があるわ」
「なんだ?」
ソファから立ち上がりテレビ台にある引き出しからとあるゲームソフトを取り出す。
「勇者と魔王は形を変えて存在しているのよこんな風に」
私がクリカラに見せたゲームソフトは勇者と魔王が戦う王道ロールプレイングゲームだった。
この作品には魔法も存在するし勇者と魔王もいる。
この作品は勇者は仲間と出会い共に世界を救いながら魔王を倒す物語だ。
「そういえば出会った時に言っていたな、ゲームがどうのと」
「そうそう、クリカラが言ってるのって勇者と魔王の戦いが実際にあったのにそれがフィクションの様に語られるってのがおかしいんでしょ?」
「そうだ」
「でも、ここに勇者と魔王と剣と魔法の物語があるわよ。あれじゃない?勇者と魔王の戦いから何千年も経ってるんでしょ、長い歴史の中で忘れ去られたとかないの」
「それは無い」
私の予想としてはそうかもしれんとか言うと思ったけどクリカラは断言した。勇者と魔王の戦いが語られる事が当たり前と言わんばかりだ、なにか策でもあったのかな?
「うーん、勇者と魔王の戦いは歴史から消えたけど勇者と魔王という存在はこうして今も残ってる・・・」
「それが不思議なのだ。現実がフィクションとして語られ人々は真実を忘れてしまった・・・」
「勇者と魔王の存在が無かった事になるとかなら分かるけど中途半端に残ってるって感じ?」
「うむ・・・考えても分からんな。優理と舞桜の恋路に邪魔にならないのならとりあえず放っておこう」
なにやら秘密の多いクリカラの最優先事項は私と皇さんが恋人になり世界滅亡を阻止する事みたい。ま、その為に私といるんだしね。
「考えてもしか無いってのは賛成。そうだ、このゲームやってみる?マジの勇者と魔王知ってる人・・・じゃない、剣の実況プレイとか貴重じゃん!」
「えぇ?我は別に、」
「いいじゃん!それにやってみたら何か分かるかもよ?」
「・・・はぁ、そこまで言うならやってみるか。それで?これはどうやって遊ぶのだ?」
「今、ゲーム機に電源付けたからディスク入れ替えたらできるよ。ほら、コントローラー・・・」
私のコントローラーを手渡したところで気づく、こやつ剣だから手がねぇ!腕もねぇ!
「・・・腕生やして」
「しかないな」
クリカラがそう言うと剣の鍔からニョキっと両腕が生えてきた。
「うっわ!キモ!」
「はぁ!?優理が生やせといったのだろうが!」
「あ、ごめん。こう、魔法的な腕かと思ったらまんま人の腕だったから、つい」
「我にはこちらの方が楽なのだ」
「分かった、ごめんってば。ふふ、でも剣から腕生えてるのすっごいシュール」
「やっぱ、やめる」
「ああ!ごめん!ごめんってば!機嫌直して〜」
なんとかクリカラの機嫌をなおした後、ゲームを最初からプレイさせる。
名前とかを入力した後にオープニングトークが始まった。
よくある世界が闇に閉ざされたからその原因である魔王を倒して来い的なやつだ。
そして主人公は伝説の勇者の血を引く者で王様に呼び出され魔王を倒す旅に出る事を言い渡される
「・・・伝説の者の血を引いてるからといってそのものが勇者の素質があるかはまた別の話では?」
「まあまあ、そうかもしんないけど続けてみて」
そして会話が進むと王様から木の棒と少しのお金をもらう。
「木の棒!?これから死地に向かわせる者の装備ではない、山賊でももう少しマシな武装をしておるぞ!この世界に剣はないのか!?」
「普通に街に売ってるよ」
「なおさら木の棒はいらんわ!!!」
「あっはははは!」
期待通りのリアクションをしてくれて思わず笑ってしまう、クリカラは顔こそないが聞こえてくる声で感情が伝わってくる。
「心配になる始まりだな・・・こんな装備で大丈夫か?」
「大丈夫よ、問題ないわ。まだフィールドにいるモンスターは弱いし。木の棒でもなんとかなるよ。これゲームだから、気楽に楽しんで。まずは仲間を酒場で集めてみたら?」
「我はゲームをよく知らないからな、そうさせてもらう」
横からアドバイスしながらクリカラはゲームを進めて行った。
「勇者が魔法を使える!?あんなに下手くそだったのに!?」
「驚くところそこ?あと、前世の私も下手くそだったんかい」
「違和感が強いな・・・いや、努力して使える様にはなったが下手くそだったしなぁ・・・」
「下手くそでごめんなさいね!!!」
クリカラに前世の私と今の私は似ていると言われたけどそんなところまで似ているのか・・・
仲間を集めモンスターを倒してレベルを上げてストーリーを進めると最初のボスと戦う事になった。
戦闘に参加できるのは4人までで、主人公と攻撃役の戦士、回復役の僧侶、魔法攻撃役の魔法使いと王道な編成で挑んでいた。パーティー編成には口出ししていないがクリカラはこの編成を選んでいた。
「もしかして、そのパーティーって当時の再現?」
「我と出会う前の勇者もこんな感じのメンバーだった。それを思い出してな」
「へぇー、偶然もあるもんだね」
ゲームの勇者の名前はクリカラになっているがその他のパーティーメンバーにはしっかりとした名前が入力されてある。
戦士にはアベル、僧侶にはセリハ、魔法使いにはウミリと名付けてあった。
「名前も一緒なの?」
「ああ、アベルはカルノクスで屈強な戦士だった、セリハは心優しい少女でずっと平和を望んでいた。ウミリは癖のある魔法使いだったが頼もしかった・・・懐かしいな」
「・・・そっか」
クリカラにとってはそれが青春の様なものなのだろうか。
勇者達と共に世界を救う旅に出た思い出がいつまでも色褪せない絵の具になっているのね。
「ちなみに前世の私の名前ってなんて言うの?」
「ゼロだ、勇者ゼロ。前にも言ったが農民の生まれで世界を救う為に旅に出た大馬鹿ものだ、でも人々は奴の事を勇者と呼んだ」
その事を話すクリカラはなんだか楽しそうだった。
前世の私、ゼロとは相当仲が良かったのか、私にもその事を知って欲しいのかクリカラは饒舌になっていった。
「そういえばゼロも女にはモテていたな、旅で訪れた街や村には必ず一人は熱心に見送ってくれた者がおったなぁ・・・」
「ゼロもってなによ」
「優理もモテるだろ?」
「否定はしないけどね、てかマジでゲームの勇者みたいな感じなんだ・・・うん?ちょっと待って」
「どうした?」
「その・・・前世の私の子孫とかっているの?」
「おらんはずだ。ゼロは最後まで魔王だけを愛していた、それにあの時から数千年は経っている。いたとしても数が多いぞ」
「それは確かに」
なんだ、実は私がその子孫で魂も勇者のもの!みたいな展開かと思ったけど違ったか。
昔のことを話すクリカラはなんだか嬉しそうなので二人でゲームをする時間を週に一回は取ろうかなとか考えているとクリカラがゲームの最初のボスを倒していた。
「おお!やったぞ優理」
「おめでとう、一発クリアとはやるね」
「剣と魔法の戦いはよく知っておるからな」
その声はすごく誇らしげだった。




