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44. 情報提供

 広樹と晴樹の二人はとりあえず冒険者ギルドの2階へ戻っていった。クラウスに試してみたいことがあったからだ。

 先ほどはほかにプレイヤーがいたため見送った件だ。

 晴樹がそろりと中を覗くと、幸いなことに誰も残っていないようだ。

「今なら大丈夫っぽい」

「よかったね。それじゃあ、クラウスさんに話してみようか」

 なんとなく小声で確認しあった二人は、資料室の中へ入ってカウンターへと足を運んだ。

「クラウスさんこんにちは。ちょっと聞きたいことがあるんですが、今大丈夫ですか?」

 晴樹が声をかけ、広樹は軽く会釈する。

「はい、こんにちは。もちろん問題ございません。どのようなことでしょうか?」

 クラウスは笑顔で対応してくれた。

「実はネクタウダンジョンの3階では、ボアは必ず3体1組で出現してたんですが、資料にはそのことが書かれてなかったんですよね。それでどうしてなのかな、と思いまして……」

「左様でございましたか。それは失礼いたしました。こちらの資料は冒険者からの情報をもとに作成しているのですが、今回のようにすべての情報が提供されているわけではありませんので、不十分な内容となっておりまして。大変申し訳ございません」

「あ、いえ、それは大丈夫です。ただどうしてなのか不思議に思っただけなので」

 広樹は慌てて胸の前で両手を小さく振りながら否定した。

 晴樹も何度もうなずきながら広樹の言葉に同意する。

「です、です。クラウスさんのせいじゃないんで、ほんとそれは気にしないでいいです。ただ気になっただけなんで、ほんと問題ないんで」

 二人の慌てっぷりに、安心させるように小さく笑みを浮かべたクラウスは、改めて頭を下げた後に話を切り出した。

「それで、こちらの情報は資料に書き加えてもよろしいでしょうか? それとも秘匿なさいますか?」

「ああ。俺らは全然書いてもらって構わないですが、今まで書かれてなかったのはその秘匿ってやつを選んでた人がいたってことですよね? その辺は大丈夫なんですか?」

「そのことでしたら問題ございません。そもそもこの件に関しましてはこれまで情報提供はありませんでした。それに秘匿といいましても、あくまでもほかの情報提供者が現れるまでの処置でしかございません。秘匿することを選ばれた冒険者には毎回その旨はお伝えしておりますのでご安心ください」

「だったら載せてもらおうか。な、ヒロ?」

「うん、せっかく資料室まで来てるんだから情報は多いほうがいいし、僕たちみたいにもやる人も減らせるし。問題ないならぜひ載せてください」

「承知いたしました」

 すっきりした二人は後のことはクラウスに任せて狩りに向かうことにした。

 踵を返そうとした二人の前に、クラウスがチケットのようなものを2枚差し出した。

「こちらは私からお二人へのささやかなお礼です。どうぞお受け取りください」


 アイテム名:クラウスのお礼チケット

 効果:資料室のクラウスへ情報を提供するとお礼に貰えるチケット。知力を1%上昇させる。最大50%までスタック可能。


 断る理由はないため、広樹と晴樹はありがたくそれぞれ1枚ずつ受け取った。

「ありがとうございます。またなにかありましたら報告に来ますね」

「はい、お待ちしております」

「それじゃ、俺らはこれで」

 そうして二人は今度こそ資料室を後にした。


 強化後の武器の威力を確かめるために、広樹と晴樹の二人はまずはゴブリン狩りへと向かった。

 西門を出てプレインウルフが出現するその先。そこがゴブリンの出るエリアだ。

 プレインウルフは称号効果でサクサクだったため、問題なく超えていけた。そもそもほかのプレイヤーもそれなりにおり、戦闘自体が少なかったせいもあり、移動はスムーズに行われた。

「毛皮でも集めてるのかな?」

「そういえば俺らの防具、どうなったのかな?」

「ドレッサーさんからはまだ連絡ないし、もう少しかかるのかもね」

「防具の更新ができたら、また少しホブゴブリン討伐が楽になるだろうし、出来上がってからボスに挑戦してみようぜ」

「そうだね」

 ようやく目的のゴブリンを見つけた二人は、やっぱりと思った。

 危惧した通り、剣と弓と杖を持ったゴブリンが3体1組になっていたのだ。

 よくある人型でぼろきれのような腰みのを巻いた緑色の肌をもつゴブリン。そんな魔物が1組ずつ固まって点在していた。

「これってどうやって戦うのがいいんだろう?」

 広樹は片手剣を持っているが、盾は使っていない。

 サンダーシールドという魔法は使えるが、盾のように剣を受け止められるわけではない。

「んー、やっぱり初回に弓と杖に魔法撃ち込んで削ってから、最後に剣だよなぁ。俺ら二人とも魔法使えるし、弓と杖、どっちか担当決めてさー」

「やっぱりそういう感じになるのかな。んじゃ、どっち担当する? 杖と杖だとどっちが勝つんだろう? 試しにハルが杖いってみる?」

「やってみるか。――あ、いや、そういや俺シャドーボール育てないといけないんだったわ。最初に3体巻き込む感じでシャドーボール撃ち込んで、そっから杖にアイススピアを試してみるかな」

「んじゃ僕が最初にアーススピアを撃って足止めできるかどうか試してみるよ。僕がアーススピア撃った直後にシャドーボール撃ってくれる? あとはさっき言った順で」

「おぅ。とりあえずそれで試してみようぜ」

 魔法が届く範囲まで静かに近づいていく。

 広樹はちらりと晴樹へ視線を向け、彼が小さくうなずいたことを確認すると、改めてゴブリンへと視線を戻す。

 とりあえず一番足を止めたい剣持ちをメイン対象に選択し、広樹は小範囲魔法を放った。

「アーススピア」

「シャドーボール」

 すかさず晴樹が続く。

 この2つの魔法を受けたゴブリンは、剣持ちは瀕死の状態ながらよたよたと向かってきたので広樹が斬って倒した。残りのゴブリンも、晴樹が杖持ちにアイススピアを、広樹が弓持ちにアイスニードルを放って倒すことができた。

 もちろん弓持ちは矢を放ってきたし、杖持ちもファイアボールを放ってきたが、どちらも大した威力はなく、避けてしまえばそれで済む程度のものだった。たぶんアーススピアとシャドーボールが効いていたのだろう。動きは全体的に鈍かった。

 晴樹の杖には『闇属性攻撃強化』の付与がついているのでシャドーボールの威力がいくらか上がっているため、広樹のように2撃目はアイスニードルでも十分倒せるだろうが、アイススピアの次の魔法を解放させるためにあえてこちらの魔法を使っている。

 広樹も『雷属性攻撃強化』がついているのでライトニングストライクを使えばいいのだが、そこまでの威力は必要ないだろうと考えてアイスニードルを使っていた。

「街に戻ったらスキル屋に行って僕もサンダースラッシュとか探してみようかなー?」

 Jude(ジュード)がダークスラッシュを使っていたので、もしかしたらネクストタウンのスキル屋に売っているかもしれない。

 今のところは最初の方法で問題なく狩れているので、今回のところはこのままでいいだろう。とりあえずは固まっているゴブリンをできるだけばらけさせないようにしながら魔法を当てていく練習も兼ねてどんどん試していった。


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