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藤森イチカの忍術試験!  作者: 桜花 山水
5章 藤森イチカの進級試験
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暗がりの襲撃者

 あきえとのんが戦っている頃、イチカは校庭外周をはんけい回りに半周し、開始地点に戻っていた。

 前方、昇降遊具の斜面板しゃめんばんに寄り掛かり、腹部ポケットから救命丹(きゅうめいたん)代わりの麩菓子を取りだす。

 袋の上部には、めんたい(あじ)の刻印。

 (かじ)ると、サクサクの甘辛い風味が口に広がる。

 辛み成分が()(こう)を刺激し、生命力が活性化されて疲労回復が促進される。

 喉が少し渇いたが、これでしばらくは軽快に動けそうだ。

 やがてイチカは昇降口へと駆け出すが、直後、頭上から悪戯(イタズラ)っぽい声を浴びせられる。


「あっ、イチカ発け~ん♪」


 顔を上げると、屋上から滑空して来た柳沼(やぎぬま)理乃(りの)が、大腿(だいたい)()横の飛行翼を閉じて

着地する。


「今度は理乃さん!? どうしてさっきから連続で、皆さんとばかり当たるのぉ~!」


 イチカが戸惑うあいだに、理乃は鎖鎌を振り回して戦闘態勢を整える。


「あっれ~。イチカ、知らなかったの? いま残ってるのって、ボク達と委員ちょ(いいんちょ)のペアの他には、イチカを含めて4,5人くらいだもん。当たる確率の方が高いに決まってるじゃん。さっきだって、校舎裏で委員ちょ(いいんちょ)に会ったし」


 するとイチカは、理乃の言葉を参考にして、このえとの戦闘前後を振り返る。


「そっか……。だから途中から、委員長さんが追いかけて来なかったんだ」


「まっ、その辺りはど~でも好いよ。どうせ今から、ボクにまとめて()られるんだからねっ!!」


 理乃が振りかぶるのに合わせて、イチカは斜面板(しゃめんばん)の裏手に回り込んで、フェンス側へと逃れる。

 虚しく地面を穿(うが)つ鎌の刃先。

 理乃はすばやく鎌を引き戻し、今度は前方上空へ投げ、斜面板の(はり)を滑車代わりに、鎌の軌道を変化させる。

(まさか……!)

 月光によって地面に生じた影を頼りに、イチカはよこに大きく飛んで回避した。

 間近に振り下ろされた鎌が、直線上の地面を(えぐ)り裂き、持ち主のもとへと戻ってゆく。

 後退して距離を稼ぐイチカ。

 それを追いかけ、校庭遊具の横へと理乃りのが回り込んだ。


「障害物を利用したって無駄ムダだよ。この武器は、使い方次第で軌道を変えられるからね」


「くぅ……。逃げ場がない!」


 イチカと理乃のあいだにあるのは、(いっ)()の木造雲梯(うんてい)のみ。

――戦闘か、降伏か。

 決断を迫られるイチカだが、不意に、特訓前の出来事を思い出す。


鉄棒(コイツ)なんてガッタガタですぐ外れるし、あっちの雲梯(うんてい)と来たら……』


 目の前にあるのは、校内融和をはかるオブジェじゃない。

 絶対殺人()ようの兵器である。

(もしかして、これなら……)

 雲梯(うんてい)に近付くイチカへ向けて、理乃が再び、鎖鎌を横薙ぎに振るう。


「それでこそイチカ! 往生際が悪い♪」


 雲梯(うんてい)端から鎖鎌が回り込むが、その途中、イチカが女子高生らしからぬ雄叫びを上げる。


「どおおぉりゃああぁぁぁ!!」


 全身の血液が力強く流動して、筋機能を拡張させる。

 イチカが未固定の雲梯うんていを強引に引き抜いた!


「地面から引っこ抜いた!? どんな怪力!!」


 倒れ込んだ雲梯が鎖鎌くさりがまの軌道を狂わせ、先端部の(くさり)をハシゴの支柱にからめとる。

 背筋、太腿(ふともも)、体重移動。

 全身の力で雲梯(うんてい)を前へと押し続けて、イチカが決死の特攻を試みる。


「コレならどうだぁぁぁ!」


 斬空刀を(はる)かに(しの)ぐ質量兵器が、地面をスライドして理乃に迫る。


「うわあ~。こっち来んな~!!」


 理乃は校庭中央へと後退するが、鎖が雲梯に(から)まっているので、一定距離から

離れられない。

 それに気付いたイチカが、校庭東で片足を(じく)にして全身を回転(スピン)させる。

 ジャイアントスイングの要領でブン回すと、()(にん)仕様で風を受けやすい理乃が宙に浮いた。

 遠心力で鎖が(ほど)けて、彼女の身体は空中高くへと放り出される。

 脅威が身近から遠ざかると、興奮状態のイチカが落ち着きを取り戻した。


「あっ、飛んだ……」


「うわぁぁぁぁあん……。イチカのバカァ~!!」


 このままでは場外負けとなる。

 とっさに理乃は、鎖鎌を屋上フェンスに引っ掛けて、場外への投げ出しを(かろ)うじて防いだ。

 強敵を強引に引き離したイチカだが、休む(ひま)は得られない。

 激しい戦闘音が、周囲にいる敵の注意を誘い、校舎中央、職員室(した)の池のそばから、付近を警戒中の剣豪娘に捕捉された。


「あ~!! あきえじゃなくて、イチカ発見!」


「しまった! こんな時に、()(のん)さんがぁぁぁぁ!!」


 焦ったイチカは、雲梯をにぎったままダッシュ。

 暗がりのせいで目測を誤り、先端部分が校舎に激突する。


『ガッシャ~ン!!』


 2階窓からななしたのイチカは、背徳的な破砕音を聞いて、自分の()()()()()ミスを形容する。


「うわぁ! 勢い余って、窓ガラスがぁ!!」


 思わずイチカが動きを止めるが、それは華隠も同じであった。

 トラブル好きの彼女は条件反射で立ち止まり、イチカを指差して、面白おかしく(はや)したてる。


「イチカの(ヤツと来たら、盗んだバイクはまだだとしても、校舎の窓を叩き割るだなんて、見事なまでの不良だわさ!」


「わ~ざとじゃいんです~ぅ!!」


 イチカが弁解してる(あいだ)も、上空の理乃から手裏剣が放たれる。


「マズイ。このままじゃ2対1だ……」


 走って逃げても、前後に挟まれたらお終いである。

 それ以前に、陽忍術を使って追いかけられたら振り切れない。

 仕方なくイチカは雲梯(うんてい)伝いに二階へ移動し、割れた窓から()()(づき)型の掛け金――クレセント錠を外して、教室内へと強引に侵入する。


「ううっ……。まさか正式に忍者になるより先に、泥棒(まが)いのことをするなんて」


 嘆くイチカは、2年陣組(じんぐみ)の教室を飛び出して、月影のみの薄暗うすぐらい一本道を西へ

疾走する。

 者組(しゃぐみ)を横切り、水道前を通過して、中央階段のすぐ近く、職員室(まえ)の廊下で停止した。

 後方に敵の気配はない。

 追跡を諦めたのだろうか?

(問題は此処(ここ)からだ……。希更ちゃん、どこに隠れてるんだろう?)

 短く思案していると、壁際にある掃除そうじどう入れの横から、忍びの気配が急速に

高まる!


「しまった!!」

・合成忍術3種『三力さんりき連環』

上忍昇格の登竜門。相生そうじょうする3種の要素を一度に発動させる技。

技のバリエーションや戦闘スタイルが爆発的に広がり、攻・防・回避の前衛と、

遠距離・支援偏重(へんちょう)を自在にこなせることから、3種混合技を使えて、初めて一人前の陽忍として認められる。

なお、2種混合と違って呼び名は固定。


(例)

 練丹術 + 氣術  + 霊術 → 三力連環・~(技名)

 霊術  + 神通力 + 法術 → 三力連環・~

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