第4話 6
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2043年4月11日 Suzu Tekka
とうとう今朝から衣奈君もわたしに話しかけなくなった。
そうだよね。こんな田舎娘。優しくされて、独りで舞い上がって、そして独りぼっちになって。
衣奈君は誰かからわたしの悪口を聞いて、わたしが悪い子だと知って、もうわたしと関わらないようにしているのかな。
そうだよね。だって、わたし悪い子だから。
彼女たちからしたらわかりやすい悪者。いきなりよそから来て大事な王子様をさらっていく悪者。
悪者がいたら正義の味方が成敗する。
この世の理。
わたしなんで鎌倉まで来たんだろう。
自分の大事な時間を削ってまでしたかったことなのかな?
無理して青森を飛び出してきたことが今更ながらとても悔やまれる。
2043年4月10日 Suzu Tekka
やはりというか、予想通りにいじめが「きちんと」始まった。
上履きを隠される、机の上に落書きされる、ロッカーを荒らされる、通りすがりに嫌みを言われる、校舎の裏に呼び出されて衣奈君に近づくなと脅される。
まさにカタログ通り。
昔の漫画からなにも変わらない、独創性のないいじめ。だけど効果はある。
わたしのこころは早くも折れそうだ。
それを知ってか知らずか、隣の衣奈君はわたしに優しく話しかけてくる。
もうこれ以上話しかけないで。
わたしどうしたらいいかわからないの。
2043年4月9日 Suzu Tekka
なぜか今朝からクラスの女子の態度がよそよそしい気がする。
昨日まではわたしが話しかけても普通に返事をしてくれていたが、周りから無視されているようだ。
やはりわたしが訛っていて目立つのが気にくわない人がいるんだろうか?
それとも昨日、変質者から衣奈君に助けてもらって、家の前まで送ってもらったのを目撃した人がいて、それが気にくわないのだろうか。
衣奈君はカッコイイし、ここの理事長の息子ということで、学園の女子の中では王子様扱いだ。
女子の中では不可侵条約のようなものができていて、抜け駆けをすると制裁に合うといわれている。
夕方に雨が降っていたが、わたしの傘がなくなっていた。朝、学園の玄関の傘立てにちゃんと立てていたのは憶えている。
わたしが傘がなくて困っていたら、衣奈君が来て傘を貸してくれるという。
とんでもない。これ以上迷惑を掛けるわけにはいかないので、わたしは雨の中、走られないのでできるだけ早足で歩いてその場から逃げた。
けどわたしの歩きはあまりにも遅くてすぐに衣奈君に追いつかれてしまった。
そしてあろうことか衣奈君は相合傘で帰ろうという。
これ以上衣奈君と接触するとわたしの命が危ないと思いつつ、ちょっとうれしかったので家まで送ってもらっちゃった。
明日からさらにいじめが強くなるのは目に見えているけど、今だけはうれしいからいいやと思った。
でも、衣奈君はわたしのことどう思っているのかな?
どうして優しくしてくれるのかな?
2043年4月8日 Suzu Tekka
学校で変な噂が流れている。学校の周辺に変質者が出るというのだ。
ここの学校はお金持ちの子息が多く通うので、学校内外のセキュリティはかなり高く設定されているそうだが、家に帰るまでに変な人にあったら恐いな、と思う。
変質者を見た人の証言では、『調子外れの歌を歌いながら踊る黄色い人』というそうだ。
そんなに目立つならすぐに捕まるかな?と、思っていたが学校の帰りに後ろから調子外れの歌が聞こえて来た。
これがもしかして変質者なの?そう思ったら恐くて膝が震えてきた。
わたしは走られない。走るとすぐに熱を出して倒れてしまう。
もう駄目。と思ったところ、動けないわたしの手を引いて路地へ連れて行ってくれた人がいた。なんと隣の衣奈君だった。
変質者は恐かったけど、衣奈君に助けてもらってとてもうれしかった。
だって昨日から衣奈君のことが気になってしまって、柄にもなく授業中もちらちら見てしまったの。
わたしもマキお姉ちゃんと同じイケメン好きだったのかな?
あれだけマキお姉ちゃんをからかってきたのに血は争えないってことかな?
へんなの。
でも変質者に感謝かな?
(中略)




