第4話 2
メル視点続きです。
2
【メルレポート第五報】P.S.(追伸)
驚いたことに御心さんにお付き合いする女の子ができてしまいました。(面白いので)とても大事なことなので、御祖父様に経緯と詳細を(暴露)報告いたします。このことは御心さんには内緒にしておいて下さいまし。
先日、御心さんの様子がおかしいと使用人達から相談がありました。姉として大事な弟のことが心配なものですから、御心さん(を相談という名目で問い詰めると)とお話すると、最近好きな人ができたといいます。(とても面白かったので)大事なお話でしたので、わたくしの解説をモナ香ちゃんの録音に添付して、若干の編集を加えてお送り致します。
「御心さん、あなた鉄火スズさんを殺してしまうおつもりですか?」
いきなりこれくらいのインパクトがないと、この色ボケしている弟の目を覚まさせることはできません。
御心さんはわたくしが知らないはずの相手の名前をいきなり呼んだこと、しかも相手を殺してしまうなんて衝撃的なことを言われたので、目をまん丸にして驚いていました。
「お姉様、いきなりなにをおっしゃるのです?それになぜ鉄火さんって?鉄火さんのお知り合いなのですか?まさか僕のことを監視していたのですか?」
「御心さん落ち着きなさい。お見苦しいですよ。わたくしは御心さんの姉ですからなんでも知っているのです。当然のことではないですか」
「そうなんですか、さすがお姉様です」
マキちゃん並に素直なのはいいのですが、この弟は相当鍛えないと悪い女に引っかかってしまいそうです。
御心さんがわたくしにお話したのはわずか三点、
1)最近学園で気になる子ができた、
2)方言が可愛い子だ、
3)でもここ数日元気がない。だけです。
徳言学院はお父様が理事長をされていますし、わたくしの母校でもありますので、何がおこるかはおおよその検討がつきます。
1)は好きな子がいる。
2)は今年地方から来た子。該当するのはマキちゃんの妹君のすずさんだけ。
3)はいじめにあっている。です。
姉のわたくしが言うのもなんですが、御心さんは美しいお顔をしています。そのような子がいたら、周りの女の子が黙っていません。しかし、今のところお付き合いをしている子がいないということは女子の間でお互いに牽制しあった結果、不可侵条約が結ばれているということ。それくらい簡単にわかります。
そして、該当の女の子が周りの人にわかるほど元気がないということは、完全にいじめにあっているということです。絶対に間違いありません。
いじめがエスカレートすると最悪の場合、自ら命を絶ってしまうことだってあるのです。その場合、殺したのは御心さんの無神経さと周囲を見渡すことができない無能力さということになります。
それよりも許せないのはマキちゃんの妹君をいじめているという事実です!これはいじめの首謀者は再起不能決定ですわね!
しかも学園の者はいったいなにをやっているのでしょうか?降格か左遷は間違いございませんね。
あ、理事長はお父さまでした。ではまずは、お父さまへ制裁のチョップ!ですわね!
御心さんは事の重大さに今更ながら気がつき、おろおろしていました。それはそうですわね、自分のせいで好きな人が危険な目に遭っているなんて夢にも思わないでしょうから。
さすがに言い過ぎたと反省をして、御心さんに助言を与えました。
「ご自分の不始末は自分でなんとかしなさい。それはそれとして、クラスの女子グループのリーダーの親御さんに圧力をおかけなさい。それでいじめは終わります。御心さん、我が家の家訓をご存じですか?」
「はい。『立っている者は親でも使え』です」
「その通りです。この意味はわかりますね?」
つまり親の権威でもなんでも使えるものは使って自分のしたいことをせよ、ということです。
その瞬間、御心さんがなにかに目覚めたように、急に『男』のお顔になりました。獲物を狩るオオカミのような。これで一安心です。御心さんも衣奈家の男子だったということでしょう。わたくしもマキちゃんの妹君をお守りできたので一安心です。
わたくしは冷静に御心さんとお話をしているように見えますが、心の奥では御心さんを褒め称えて浮かれておりました。
これでマキちゃんとより親密になるきっかけができました。
御心さんとスズさんが結婚まで行き着くと、わたくしとマキちゃんは姉妹になってしまうのです。なんて姉孝行な弟でしょう。見る目がある弟をもって、わたくし幸せですわ!
この恋は必ずや成就させなければなりません。そのためには全力で万難を排する所存にございます。
この流れでいくと、御心さんは明日にでもスズさんに告白することは間違いありません。
姉として(こんな面白いことは見逃せないので)御心さんの恋を応援するために、明日は会社の終業時間後に急いで徳言学園に行ってみましょう。
できればマキちゃんをお誘いして!
翌日、御心さんの告白にスズちゃん様がお応えになられたのでお二人はお付き合いをすることになりました。
数日後にスズちゃん様おひとりだけを鎌倉のお屋敷にご招待致しました。
一度ゆっくりとお話をしたいと思っていたからです。
その時のことはわたくしの気持ちの整理がつくまではお話できません。
一つだけ言えることは、わたくしには彼女ほどの覚悟はなかった、ということです。




