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第1話 6

6

 ところが、次の言葉であたしのふわふわした思いは吹き飛んだ。

 「もしもこの研修が終わるまでに、コミュニケーションが全く取れなかったり、人間との生活に支障のある能力、性格と判断された場合は、その個体は失敗作として廃棄処分となり、担当した人は研修が終わって各箇所に配属された後に、新しい製品と再チャレンジとなります」

 え、今なんて言ったの?あんなかわいい子を廃棄するって?そんなの駄目だよ!廃棄ってつまり捨てるってことでしょう!?会場からも困惑の声やブーイングが出ていた。


 あたしは思わず立ち上がって、大声で言ってしまっていた。

 「お姉ちゃん、そんなのあんまりじゃない?もし失敗したらあの子達を殺しちゃうってことでしょう?失敗だからって捨てないで残こすってことはできないの?」

 「マキちゃん。ここではお姉ちゃんではなくて、先生と及びなさい。

あの子達はあくまで工業製品で試作品。しかも生物ではなくてただの化学物質が生物のような姿をして動いているだけなのです。

仮に失敗品を全て残していたら、倉庫がいくらあっても足りなくなるでしょう?」


 そうなのだ。ただの化学物質なのだ。それでも、いったん見ちゃうと、もう捨てるなんて無理だよー。

でも、普段のお姉ちゃんとはまるで別人の厳しいモノの見方。家でしろちゃんと接している姿はとても優しくて、大事な家族と思っているように見えたのに。

 「失敗にはもう一つの意味があります。個別能力が危険でとても一般消費者へ届けられないと判断された場合です。普通の第二世代の子は、」

そう言って、お姉ちゃんは後ろに座っているユキヒョウの方を振り向いて言った。

 「しろちゃん。凝結」

 そう言われたユキヒョウの周りの空気が次第に白っぽくなっていきしろちゃんの毛に水滴が付着し始めた。

「しろちゃん。冷凍」で、周りの水滴がしろちゃんの鼻先に集まって凍り始めた。

小さな氷の粒は次第にアイスコーヒーのグラスに入れるような大きさになって床に落ちた。

 なにそれ、すごいね!夏にいつでも冷たいモノが飲めるよ!


「第二世代の子達の能力はいろいろあります。

この子は氷を作る能力だけど、固体によっては火や電気、風を起こしたり、大きく膨らんだり、見たモノを録画したり。能力の強弱も様々なのです。

実際に個別能力を訓練してみないとわからないものなのよ。危険なモノはきっちりと管理して、市場に出さないようにしないといけないし、管理出来ないものは廃棄するしかないの。事故が起こってからじゃ遅いのよ。それに・・・」


 とっさに、なにも考えずにあたしは大声で言ってしまっていた。

「わかった。あたしがこの子達を危なくないようにする!

ううん。危なくても危なくならないようにしてみせる!

なにをすればいいかわからないけど、なんとかしてみせる!」


 あたしの巻き込まれ体質、そしてここの新入社員おおよそ二十名をも巻き込んだ、波乱を含んだ研修はこうしてスタートした。


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