第1話 8
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隣の部屋は検査課といって、工場で製造された製品の品質検査や、入ってきた原材料のチェックを行っているそうだ。部屋は実験室になっていて、10人ほどの男の人が作業服を着て、容器に入った何かの液体を混ぜたり、板をじっと眺めたりしている。
「マキちゃん、ちょっとお呼びがかかったので席を外すから、適当にその辺みといてくれるか?」
社内用の携帯電話で話していた先輩があたしを置いてどこかへ行ってしまった。あたしどうしよう。
少し小柄でぽちゃっとした、おとなしそうな感じの、女子事務服を着た女の子が、検査課の端で書類に書き込んでいたので話かけてみる。胸の名札には「若鮎」と書いている。
「今年入社の鉄火マキです。よろしくお願いします」
「あら、あなたが鉄火さん。わたしは若鮎朝海っていうの。よろしくね。わたしは青婦部の幹事なの。今度のJIMでの歓迎会楽しみにしててね。」
なんかあたしをじーっと見つめながら、にこやかにしているが、目が笑っていない。なんか蛇ににらまれているようだ。こころの奥を覗かれているような迫力を感じた。
「折角なので少しお話ししたいわ。隣の部屋に会議室があるから、今から時間大丈夫?」
あたしは先輩に置いて行かれて途方に暮れていたので、時間つぶしできるなら大歓迎だ。
「わたし、あなたにはとても興味があるので、いろいろ教えてね。
まずね、あなた達今年の新入社員研修でのことなんだけど、なにかあったと聞いてるわ。なにがあったの?」
え?この人なんでそんなことを?研修での襲撃事件とか雪ちゃん巨大化のことは誰にも言わないように会社から厳重に口止めがあったのに。
「え、えーと、あたしはぼんやりしてたから、よくわかんなかったので・・・」
ごまかしきれるとは思わないが、できるだけはぐらかしてみる。
「それじゃあ、今年の新入社員は全員第二世代のMoNStErを一人ずつもらったそうだけど、あなたのMoNStErはどんなのかしら?」
第二世代をもらったこと自体も秘密にしなければならない。どこで聞いたの?
「どう?ペットの様子は?ちゃんと言うこと聞いてる?」
「雪ちゃんはペットじゃありません!あたしのパートナーで大事な友達です!」
あ、しまった!つい・・・・。
「ふーん、雪ちゃんっていうの?今度会わせてね?」
誘導質問に引っかかってしまった。この人危険だ。
「あなたの同期の子たち、ちょっと変わってるわよね?たとえばレイノルズの双子。
なんか、秘密をいっぱい持ってそうな感じするわよね?おかしいわよね?大卒でもないのに本社採用なんて。なにかあるわよね?」
「あたし、人の学歴とかよくわからないので・・・」
「そう?じゃあ総務課の衣奈さん。わたしあのタイプ嫌いなんだよね。清純そうでおとなしそうだけど、裏でなにをやってるかわかったものじゃないわよね?ね、聞いてる?」
「あ、あの!メルちゃんはあたしの友達で、あたしはメルちゃんのことが大事で、大事な友達がそんな風に言われるととても悲しくて。
若鮎さんだって大事な友達がいるでしょう?友達をそんな風に言われると嫌でしょう?あたしは・・・」
「わたしには・・・、友達なんていないわ!友達に見える人達はみんなわたしを利用して、わたしの気持ちにも気がつかないで、わたしはいつだって、友達と思ったことない!そんなモノいらない!」
若鮎さんが突然叫びだした。あたしはどうしていいか、どうしてこんな話になってしまったのか、途方にくれてしまった。
そのとき、会議室のドアが開いて本能寺先輩が入ってきた。
「お、マキちゃんこんなとこにいたんだ。そろそろ次の所に行かないと今日中に全部廻りきれないぞ」
「は、はい。若鮎さん、お話ありがとうございました。では」
あたしは逃げるように会議室から出て行った。
「マキちゃん。あいつには気をつけろ」そして、本能寺先輩がぽつりとつぶやいた。




