第3話 14
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建物の二階部分の割れた窓ガラスの隙間から真っ黒い煙が吹き出して、煙の間から炎が揺れているのが垣間見られた。
あたしは炎を見た瞬間、気がついたらアジトの建物の方に向かってダッシュしていた。
あたしに続いて月平、層君、乱ちゃん、メルちゃんが走って来た。
爆発が起きたためか、建物には邪魔もなくすんなり入ることが出来た。玄関の右手近くに二階へ通じる階段を見つけ駆け上がっていくと、反対に二階から逃げてくる白衣を着た数人の人達とすれ違った。彼らは妙にがに股で「おほほ、おほほ」とか言いながらあたしの姿を気にもせず、そのまま一階に降りて行ってしまった。
例のごとく一番足の速いあたしが先に二階に着いてしまった。
そこは煙で充満していて先が見えず、あたしは煙くて激しく咳をしてしまった。袖を口に当てるが、息苦しい。
後ろからようやく月平が追いついた。
「マキ、延焼の恐れがある。ここは危ない。急いで一階に避難するんだ!」
「嫌だよ!雪ちゃんがいるかも知れないのに、放っておけないよ!雪ちゃんを助けないと!」
「馬鹿!おまえが倒れたら誰が雪ちゃんを守るんだ!」
一階から上がってきたメルちゃんが廊下の隅にある泡消化器の起動ボタンを見つけて、プラスチックカバーを思いっきり叩いて中のボタンを押した!
すると、天井にあるスプリンクラーから泡が吹き出して、消火を開始した。
火災はまだ初期だったようで、炎は直ぐに鎮火された。
まだ焦げ臭い中、あたし達は二階の廊下を奥の方へ向かって歩いて行った。
ある部屋の前まで行くと、開けっ放しのドアの中が一番焼けていたので、ここが火元だろう。
部屋の中には実験用のテーブルと、なにかよくわからない高そうな分析機器が多数、その近くにはドラフトがあり、ドラフトの中にはフラスコやエバポレーター、マントルヒーターのような実験器具が黒く煤けていた。部屋の中は焼け焦げた臭いと有機溶剤臭がかなり強く残っていた。
あたしはこの中に雪ちゃんがいるような気がして、テーブルやドラフトの中を覗いていった。
「雪ちゃん、いたら返事して。雪ちゃん、マキが来たよ。雪ちゃん、どこにいるの?雪ちゃん・・・」
一向に返事がない。もともとここにはいなかったのか、それとも・・・。
あたしはどんどん悪い方に考えてしまう。
後ろから正殿と吹雪もやって来た。
「なんてこった。第三世代がいなくなった」
「あの子どこに行ったのかしら?」
「お前達のせいで雪ちゃんが-!!」あたしは怒りで正殿につかみかかった。
月平が後ろからあたしを羽交い締めにして押しとどめようとする。
ふと廊下側を見るとなにか白い大きなモノがゆっくりと、ずる・ずると音を立てて移動している。あれはなに?
音はゆっくりと近づいてくる。ずる・ずる・ずる。
そこへ、メルちゃんのパートナーのモナ香ちゃんが駆け込んできた。
「みんな、逃げて!食べられちゃうよ!」
一体なにが起きているというの?なにに食べられるというの?
急いで廊下に出てみると、そこには巨大な白い蛇の尻尾があった。直径1mくらいの太さで二階の暗い廊下の奥の方へ伸びている。長さはどこまで続いているかわからない。
奥の方から、がりっ、がりっ、ばくっ、ごろごろごろ、と何かが割れる音と飲み込んでいるような音が聞こえてくる。
そして、音が一旦止むたびに白蛇の胴体が太くなっていくような気がした
「ひょっとして、雪ちゃん、なの?」
あたしは雪ちゃんとは大きさが似ても似つかない巨大な蛇の尻尾に、雪ちゃんが生きている希望を感じた。
あたしはふらふらと巨大な尻尾の方に吸い寄せられるようにして近づいていった。
「馬鹿!早く逃げろ!」
月平があたしの腕をつかんで蛇の頭がある側と反対側の廊下に引っ張ろうとする。
その時、尻尾は急に持ち上がって直ぐに床に叩き付けられた!その衝撃で大きな音が発生し且つ建物全体に振動が起こり、廊下の床のタイルが砕け散る!
「ここは危険だ!建物が崩壊する恐れがある!一旦外へ!」
「でも雪ちゃんが・・・・」
「いいからまずは自分の心配をしろ!」
ほかのメンバーや正殿達は既に先に避難をしている。
ぐずぐずして動かないあたしにしびれを切らしたのか、月平があたしを無理矢理抱きかかえて、階段の方へ走り出した!
「いいから降ろしてよ!あたしあそこで雪ちゃんと!」
月平が廊下を走る間も、階段を下りていく間も、建物の衝撃によると思われる振動は数階続いた。そのたびに天井や壁からコンクリートの欠片がはがれ落ちて来た。そして振動は回を重ねる毎に強くなっていった。
月平に建物の外へ運ばれたあたしは建物が音を立てて崩壊していく様を呆然として眺めていることしか出来なかった。
「あの中に雪ちゃんが・・・・」あたしは地面に膝から崩れ落ちた。




