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11. 一方その頃

※ここからはまだ修正されていません。ので話が繋がらない部分があります。

レンツラウ国 第三神殿にて


 ヴェローネは額に手を当ててため息をついた。

 彼女はレンツラウの南西に位置する、火の神を奉る第三神殿に仕える巫女の長である。彼女を悩ませているのは、今の神殿の状況だった。


 ヴェローネには召喚の事も魔術のこともよく分からない。彼女は代々巫女を輩出してきた名家の出だ。母も父も、髪の色は白くて目は赤く、日の光に弱い。勤めが終わる年齢になった時、彼女は従兄弟の家へと嫁ぐことが既に決まっていた。


 妹たちはどうなるか分からない。他の神殿で仕えている妹も嫁ぐことになるかもしれないが、長女ではないから神の贄になる可能性だってある。


 すぐ下の妹とは、ヴェローネが神殿に仕えることが決まって家を出た時から会っていない。ヴェローネの記憶では、妹は小さい姿のままで止まっている。妹が数年前に第六神殿に仕えることとなったと母からの手紙で知った時、彼女はそれを喜んだが同時に胸を痛めた。


 白い髪に赤い目、日に弱い体。この姿で生まれた者は膨大な魔力を有している。この魔力を召喚士や英雄へと身を捧げ、彼らの力となり、この国を守る。ただそのために、巫女は存在している。


 捧げられた巫女は魔力が尽きるまで役目を全うし、最後は天の花園で永遠の命を得ると聞く。ヴェローネはそうはならない。次の巫女を産む役目があるからだ。しかし、妹は――? あの可愛かった妹のことを考えずにはいられない。


 先日、来たる日に向けて神殿で召喚の儀が行われた。


 救世主である召喚士を異世界から召喚し、彼らには彼らの世界の英雄を召喚してもらう――何だかまどろっこしいとヴェローネは思うが、そうしなければ強大な力を持つ英雄を召喚することが出来ないと聞いて、そういうものなのかと納得した。


 贄に選ばれたのは、下層階級出身の巫女であった。最初に召喚士に捧げられる魔力は多い方がいい。色付きの親から突然生まれた彼女は体が丈夫であることもあってか、魔力がとても豊富だった。それに明るい性格であったことから、最初の救世主との橋渡し役も兼ねて選ばれたのだった。


「巫女長様! 私、ちょっと怖いけれど、救世主様とお話が出来ることがとても楽しみなのです。向こうの世界のことをいっぱい聞けるといいなぁ」


 そう、嬉しそうに話していた彼女のことをヴェローネは忘れない。忘れられるはずもない。

 あの儀式を見て何事もなく明日を楽観出来るのなら、それは――。


「巫女長様」


 扉が叩かれた音でヴェローネは現実に引き戻された。椅子から立ち上がり、扉を開く。そこには巫女が不安そうな顔で立っていた。


「どうしたの?」


 その表情の原因の予想が付くので、ヴェローネは出来るだけ優しく、彼女に声を掛ける。


「巫女長様、救世主様は……」


 彼女の問いにヴェローネは首を横に振る。

 つい昨日のこと、召喚された救世主の女性が閉じ込められていた塔から逃げ出していた。残されていたのは布で縛られていた当直の憲兵のみ。背後から殴られたと彼は言っていたが、この神殿から消えたものはいなかった。外部の者の仕業か、それとも内部の者の仕業か――怒り狂った神官長は周囲や物に当たり散らし、捜索する憲兵達に怒鳴り散らしている。あの状況では、きっと巫女の方にもとばっちりが来るだろう。


「まだ見つかっていないわ」

「そう、ですか……」


 落胆したような、ほっとしたような巫女の様子。

 無理もない。救世主が召喚を行い魔力が切れた後、次はこの巫女が捧げられる可能性があった。


「でも、一体どうやってお逃げになったのでしょう」

「それはまだ分かりません」

「塔には救世主様の力を封じる術式が施されていると聞きました。もしかして誰かが逃したのでは……」

「『誰か』とは一体誰のことでしょう。救世主様の部屋は憲兵が交代で見張りをしていました。その彼らが中には救世主しかいなかったと言っているのです。あなたの言葉は彼らを疑っていますよ」

「も、申し訳ありません。そのようなつもりは全くありませんでした」


 謝る巫女にヴェローネは息を吐き出した。恐らく神官長が戻ってきたら、憲兵長だけでなく巫女長のヴェローネも呼び出されて尋問されるだろう。あの怒り方だったら容易に次の行動が予測出来て頭が痛くなる。


「他の人に言わないように気を付けなさい。皆を不安にさせることはよくありません」

「はい。かしこまりました」

「もう寝なさい。明日も早いですよ」

「はい……それでは、失礼しました」


 部屋から離れていく巫女の後ろ姿をヴェローネは見送る。数歩離れた所で巫女は足を止め、肩を動かしていた。本当は不安に違いない。身も裂けてしまいそうなほど辛いに違いない。救世主が見つかって戻ってきたのなら、彼女はどうなってしまうのだろう。


 感傷に身を任せている場合ではない。不安になっている巫女たちに気を配らないといけない。憲兵長にも状況を聞かなければ。神官長をなだめないといけない。

 他の神殿でも救世主と異世界の英雄は召喚されているだろう。また救世主を抑制出来なかったとあれば、神官長どころかこの神殿にいる全員が罰を受ける可能性がある。


 ヴェローネは頭を抱える。考えないといけないことが多すぎるからと。そして、考えてはいけないことを頭から振り払うために。






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