第2話 ハガネちゃんはとても可愛い
学校が終わった放課後、
あたしは例の美味いスイーツ店――〈グランスイーツ〉に
来てたのさ。
親友の日向夏と
転校生の佐世保ハガネちゃんと共にね!
店の中はこじんまりとしてる割には
オシャレでたまらんのです。
テーブルも少し小さくて丸いから可愛いしね。
ただしスイーツのお値段はかなり張るが。
「はぁ~、ハガネちゃんはとても可愛いなあ!」
それにしても本当に可愛い。
「あ……あの……」
だから頭を撫でてるんだけど、いつまでも撫でていたい!
「ねえ二実……一発食らう?」
「あっ、イヤ。いいです」
だけど夏に睨まれたら最後、
撫でてる手を退かす他ないのさ。
「はぁ……ごめんね佐世保さん、
この色ボケが失礼な事ばかりして」
おいっ!
「いえ……ボクは別に気にしてないです……」
「ほら、ハガネちゃんだってこう言ってるべ!」
「あんたは黙ってなさい!」
「あきゃっ!」
小さめなテーブル越しに頭をぶん殴られた。くそ痛い。
「あ……あの……」
「あうう……。ほら、ハガネちゃんだって
夏が暴力的だから戸惑ってるじゃないのさ!」
「あのねえ! はぁ……まあいいわ。
それにしても佐世保さん、本当に可愛い顔してるね?」
おいおい、言ってるそばから何で夏がタラシてるんだよ!
「えと……ボクはその……」
「私、あなたの可愛さにとても嫉妬しちゃう」
「ひっ……!?」
どうしていきなりハガネちゃんを睨む!
本人も怖がってるじゃんか!
「おい夏! いきなり転校生イジメとかやめろよな!」
「えっ、私そんな事してた?」
あれ、自覚無いって事はイジメてるわけじゃないのか。
「いや、モロに睨んでるから」
「あら……ごめんなさい佐世保さん。
私は別に怒ってないからね?」
「いえ、ボクは大丈夫ですから……」
ううむ、とにかく今はハガネちゃんの事が知りたいなあ。
学園ではみんながみんなハガネちゃんに
質問攻めしてくれたおかげで全然お喋りできなかったし。
「とにかくアレだ。突然だけど自己紹介しよ!」
「え……?」
「また唐突ね……まあ慣れてるけど」
「あはは! とにかくあたしからね!
あたしの名前は秋月二実、
どこにでもいる普通の恋するJKでっす!
あと趣味はゲーム、漫画とかラノベを読む事!
それと特技はテニスでーっす!」
あたしのくそ軽い自己紹介!
夏はジト目を送り、ハガネちゃんは相変わらずの困惑顔。
まったく面白いぜ!
「ダウト。そんな女子高生が普通なわけないでしょ」
そして夏のこの指摘である。辛いぜ。
「あはは……っ!」
でもハガネちゃんが初めて笑った。
「ハガネちゃん……笑うとすっごい可愛い!!」
「うひゃっ……」
やっばい、隣座ってたから思わず抱き締めちゃう!
「コラ二実!」
「あぎゃっ!」
そしてまたぶん殴られた。このコンボは痛い!
おまけに無理やり引き剥がされたし。
「うう……乱暴者めえ……」
「まったく……あなたも少しは懲りなさい」
「仕方ないじゃん……本当に可愛いんだし……」
「あぅぅ……」
「そうね。佐世保さんに是非とも教えておくけど、
この子とんでもない女タラシだから」
「おい夏う!」
いきなりそれ言うのやめて、地味に傷付く!
「はい、それは何となく……」
「って、ハガネちゃーん!」
「ふふ、やっぱり分かる人には分かるのね」
「なんで納得するのさあ!」
「それでは次に私ね」
しかも無視して続ける始末だよ!
「うう……」
「私の名前は日向夏。趣味は読書に空手を少々よ」
空手は少々どころじゃないだろ!
「そうなんですね。日向さんは可愛いのに意外です」
「何か問題でも?」
「ひっ……」
「だから何で睨むのさあ!」
「あっ、別に睨んでるつもりはないのだけど……」
ううむ、確かに夏は可愛い顔だけどクールだからなあ。
少し目を鋭くしただけで睨んだ様に見えるのかも。
「はあ……でも安心してよハガネちゃん。
怖く見えても夏はとても優しい子だからさあ」
「はい……それも分かります」
「二実ったら恥ずかしい事を……」
うむ、夏が少し恥じらってて可愛いぜ。
「だけどあまり怒らせないほうがいいよ。すぐにぶん殴ってくるから」
「それはあなたにだけよ!」
「あぐぁ!」
おおう、頭が割れるう……。
「ほらあ……この通り」
「あはは……二人はとても仲がいいんですね」
「ええっ?」
そ、そう見えるのかあ……。
「そうだね。とても腐れ縁だしね」
「地味にひどっ!」
「だって本当の事だもの」
「あはは……っ!」
あう、ハガネちゃんったらとても楽しそうに笑ってる。
嬉しいけど恥ずかしいぜ。
「ふう……笑ってばかりでごめんなさい」
「いやいや、別に気にしてないから問題無しさ!」
「ええ、二実の言う通りだよ。
だって二実の顔が面白いものね」
「あのなあ!」
「ただの冗談よ。本気にしないでよ」
冗談だと分かってても、夏の言い方は割とえげつないから困る!
「あの……次はボクが紹介しても大丈夫……ですか?」
「ん、ああ問題ないよ! むしろ是が非でも!」
「お願いするわ」
「それでは自己紹介をさせて頂きます……」
ハガネちゃんは軽く息を整える。
「ボクの名前は佐世保ハガネ……。
趣味は料理……しかありません。
特技は……あう……」
あ、やばい今にも泣きそうかも?
「だ、大丈夫だって! 料理できる子とか最高だし!
むしろお嫁に欲しくなるタイプ!」
「うう……」
うぐ、励ましたのが逆効果だったかも。
「ふぅ……大丈夫だよ佐世保さん」
「え……?」
あれ、夏が珍しくあたし以外の子を慰めてらっしゃる?
それに肩に手なんか置いちゃってえ。
「私も言うほど自慢できる趣味ではないし、
特技だって無いのだから気にしたらダメ。
寧ろ料理が得意なのは好感もてるよ」
「日向さん……!」
おおう、ハガネちゃんたら嬉しそうじゃないか。
「だから今度、是非とも私に料理を教えて!」
「えっ? あ、はい」
「って……そう言う事かよ!」
「何よ悪い? どうせ私は料理ベタよ!」
確かに夏は料理ベタだ。それも劇物を作る程の。
まあその事実を知ったのは中等部1年の時にあった
家庭科の授業中だったんだけどな。
「いや、それなら母さんに言えばさ……」
「それは絶対ダメ!」
ああ、やっぱりそうなのね。
「前も怒ってたけど、どうしてさ?」
「決まってるでしょ!
もみじさんに料理ベタな所を見られたくないの!」
「その意味が分からないんだってば」
「と……とにかくダメなものはダメ!」
はあ、以前もこうやってごねたんだよねえ。
別に母さんは気にしないのにさ。
そう言えばつい最近も、
母さんがせっかく料理を教えてあげると言ってたのに
夏は一切台所に姿を現さなかったからなあ。
まあ母さんは何も気にしてないどころか、何故かあたしを叱るし。
「その……ボクが言うのも何ですけど……
二実さんは少しだけ乙女心を理解したほうがいいです……」
そう、こんな感じにね。
って、どうしてハガネちゃんにまで……!
「ほら、大人しい佐世保さんですらこう言うのだから!」
「えっ、どういう事なの?」
「あの……自分で考えてみてください……」
「そうよ。佐世保さんの言う通りなんですから!」
むうう、乙女心ならあたしだって理解してる筈……なんだけどなあ。
「全くもってわけ分からんぜ」
とにかく頼んだチョコパウンドケーキでも食べよう。
うほっ、美味いなあ。
「食べてないで考えてみなさい!」
「あ痛!」
うう、食べてる時にいきなり殴るとかありえないぜ。
あう、今度はハガネちゃんも少し呆れてるっぽいし。
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