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ふとジュラさんの手もとに目線を向けると、彼女がなにか紙袋のようなものを持っていることに気づいた。
――あれ? なんとなく、どこかで見たような紙袋……。
今のこの状況で紙袋を持っているということに、あたしは不自然さを感じ、ジュラさんに質問を投げかけてみた。
「ジュラさん、その紙袋って……」
でも、あたしはその質問を、最後まで言い終えることができなかった。
あたしたちの目の前をかすめ、すべてを焼き払うレーザーが凄まじい音を伴って通過していったからだ。
「あはは、今はこうして再会を喜んでる場合じゃなかったね。こっちを先にどうにかしないと」
こんな状態にもかかわらず、落ち着き払った、というよりも危機感がまったく感じられない、のほほんとした調子で、大樹くんはそう微笑んでいた。
ああ、やっぱり大樹くんだ!
この少しとぼけた感じ!
なんて懐かしいのかしら!
……あたしの理想の男性像は、どうやら微妙にずれていると言わざるを得ないのかもしれない。
と、そんなことを言ってる場合じゃない!
白亜さんと三畳さんの目から放たれるレーザーはいまだ衰えることなく、辺りの木々をどんどんと焼き焦がしている。
まだ木々の密集している部分にまでは被害が及んでいないものの、それも時間の問題だろう。
やがては林となっている木々にも炎が移り、燃え広がって大規模な山火事――丘の場合、丘火事になるのかな? 語呂は悪いけど――になってしまうに違いない。
「僕たち五人には、まだ力が残ってる。そうだよね?」
大樹くんはそう言った。
どういうわけか、その視線は蘭ちゃんのほうを向いていた。
「でも、封印されてるんじゃないの? あたしあれ以来、特別な力なんて使えたことないよ?」
あたしの反論に、
「そこは、僕たちに任せておいて」
ウィンクで答えてくれる大樹くん。
きゃう。
ほわん、と温かくて甘酸っぱいような想いで胸がいっぱいになったあたしは、細かいことを考えられる状態ではなくなってしまい、ただ大樹くんの指示に従うことしかできなかった。
大樹くんは手招きをして、林檎と海斗くんもこちらに呼び寄せる。
さくらちゃんもどうやら目を覚ましていたようで、彼女にも声をかけ、同じようにこちらに来てもらった。
「これで、セイレンジャーの五人が揃ったね」
大樹くんが、やっぱりいつもながらの緊張感のなさそうな声を響かせる。
「ええ、久しぶりだわ!」
林檎が心底嬉しそうに叫ぶ。
「がっはっは、やっぱし俺たちは五人でセットなんだな!」
海斗くんは林檎の肩に手を回したまま豪快に笑う。
「私も……嬉しいです……。なんだか、よくわからない状況だけど……」
さくらちゃんも、かなり困惑してはいるようだけど、はにかんだ笑みを浮かべていた。
「それで、どうするの?」
あたしの声に、大樹くんはこう答えた。
「もちろん……歌うんだよ!」
☆☆☆☆☆
『セイレーン・ダンス 正義の想いを歌声に乗せて
セイレーン・ダンス 舞い踊れ ほらワンツースリー』
あたしたちが正義の味方だった頃。
歌声戦隊セイレンジャーと呼ばれるようになったあたしたちには、メインテーマ曲とも呼べる歌があった。
もちろんその場の状況や敵の宇宙人に合わせて、適切な歌を選んで対処するのが、あたしたちの役割ではあったのだけど。
最終的に決着をつける場面では、必ずと言っていいほど、激しくてノリのいいそのメインテーマ曲が選ばれていた。
それがこの歌、「セイレーン・ダンス」だった。
『熱い血潮流れる五人の勇士 その名はセイレンジャー
いつでもキミたちのことを ちゃんと見守ってるんだ』
レーザーはなおも、木々を焼き尽くし続けている。
そんな轟音をもかき消すように、あたしたちの合唱は、丘の上のこの場所に広がっていく。
おろおろと慌てふためいていた白衣の集団も、あたしたちの歌声を聞いて、何事かと視線をこちらに向ける。
所長さんとやらが、なにか叫んでいるように見えたけど、あたしたちのもとにまでは届かなかった。
きっと、「なにをやってるんだ、あいつらは? のん気に歌なんか歌いやがって!」とかなんとか言っているのだろう。
『悪い奴らの企みなんて この拳と心で打ち砕く
いつでもキミたちの笑顔を 守るために戦ってる』
周りがどんな状況でも、あたしたちは声を合わせ、旋律を風に乗せることに集中する。
それが歌声戦隊セイレンジャーとしての、あたしたちの務めだからだ。
数年前まで地球の平和を守っていた歌声が、今この丘の上で勇壮に響き渡っていた。




