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異世界マギア天星  作者: ボーリングおじさん
13/59

11話 よろこび(対話)

また、ここに存在することができた。

この胸が高まる気持ち、これが喜びと言うものなのかな、最初にあの妖精に言われて感じたものと同じだ。

やっぱり、いつか感じたことを思い出せている。

少しずつでも思い出せれば、必ず答えは見つけれるはずだ。


ところでここはどこなんだろう。

この前のシャングリラが輝いた宮殿では無さそうだし、ここは違う場所だろう。

あっ、あの口元を上げながらアゴを触っている軍服を着込んだ男の人は見たことがある。

確か、四英雄のラウさんと言う名前じゃなかったかな。


誰かと話している、気になるから聞いてみよう。


「ハハハッ、そっかアマギちゃん、やっぱり対魔獣兵器イギョウエビ型が壊されたのか」


「はいラウ元帥の言う通りに最大魔力攻撃、六武星の発射の前に破壊され、魔獣を倒したとされる三人の捕縛には失敗しました」


魔獣?

なんだろうと思い二人を見ていると、ラウさんはイスに腰掛け、さらに詳しく話しを進めた。


「それでもう一つ進めていた密偵からの情報はどうなんだい」


そのアマギさんという人は、目の前にあるテーブルに持ち込んだ紙を広げた。


「一人はアスラという氷魔術を使う吸血鬼でございまして、各地を渡り歩いて旅人をしている人物ですね。

もう一人は、マーニというエルフの女剣士で、昔から都市ティルウィングに住んでいる出身者ですね。

最後は、マコトという何処から来たのか分からなく、記憶がないとのことで本人からも昔のことは分からないようですね。

分かっているのは、槍使いのマジックスライムとのことだけですね」


すると、その最後のマコトと呼ばれている人に何か引っかかったのか、彼は腕を組みながら考え込んでいた。

「でもさ、アマギちゃん、本当にそのマコトとかいう少年はマジックスライムなのかな?

マジックスライムが魔力も使わずに槍を使うのは、不思議だよね」


「それがマジックスライム自体は、自称しているだけで詳しいことは分からない所存でして。

これが街に潜入した者が描いた彼ら三人のイラストでして」


そして、ラウさんは更に彼に渡された三枚の紙を手に取り、目を通してテーブルに置いた。


「あぁやっぱりね、このマコトとか言う少年は、マジックスライムじゃないね」


「えぇ、分かるんですかムツ元帥」


「マジックスライムは人型になるとき特徴があってね、この頭髪部分の毛が液状化していることが多いけど彼にはそれが見受けられない」


「確かにそう言われますとこの絵ですと、髪の毛もしっかり描き込まれていますね」


「それも姿はエルフ特有の耳や吸血鬼のような牙なども見えないようだし、絵に余計なものを加えなければ八割の確率で人間だろう、それも人間なら魔獣を倒せるのは転生者しかいないはずだからね」


「王様が召喚させていない転生者ですと……」


「正解、いやーこれは中々おもしろいことになってきたね。

もしかしたら魔王軍、王様しか知り得ない召喚技術を完成させたのかもしれない。

アマギちゃん、皆にすぐ彼の捕縛の準備を進めてくれ、相手は恐らく転生者だ、くれぐれも兵士だけで挑まないように」


「分かりました」


そして、アマギさんと言われる人はその部屋から出て行った。

やはり、彼には俺は見えていないようだ。

だけど、なんだろう彼らの言っていた三人の名前とその絵に対して少し興味があり、その絵を見ると。


「マーニさん、アスラさん、そして、あぁ見覚えがある顔だ、マコト、神楽誠カグラ・マコト

………そうだ、俺の名だ」


少し、思い出すことができた。

そうか、俺は神楽誠だ。

だが、あのラウさんが探しているのはこの俺のことでは無いと思う、しかしこれに対しては何も疑問を感じないことによってまた謎が増えた。

やっぱり次に存在できたら、彼らについていこう、俺の存在の意味、あったはずの記憶、その両方を思い出せそうだから。


そして、俺はこの部屋でラウさんを見ていると、彼が俺のほうを見て、近づいて来た。

おかしい、見えないはずなのに。


「ところでね」


彼がそう話すと……


バタンッ


いきなり部屋の扉が開かれて、アマギさんとは違う兵士が慌てた様子で入ってきた。


「失礼します、ラウ元帥閣下、王様が至急呼び出しで」


「そうか分かった、じゃあまた後でね」


彼は、そう俺に手を振った。

あっ、やっぱり見えていたんだ。

次は彼も俺のことを見てくれた、嬉しいな。


そして、その兵士とは分かれて別の部屋に向かう彼を俺は嬉しさのあまりスキップしながらついて行った。


だけど、彼は少し苦笑いしていた。

なんか悪いことしちゃったかな?


そして次に入った部屋は、先程とは違い、大きなパネルのようなスクリーンがあった。


「ラウ、聞こえている?」


突然、そのスクリーンから王の顔が映し出されて少し驚いた。


「はい聞いていますよ」


「ええ、それと追加でお願いがあるけど、アナタが攻める都市に魔王軍の幹部二人、マキュリーとモルガーナがいるみたい。

街に着いたらその二人を捕縛して、都市ティルウィングの住民も他の街に移して、あの天の炎を使用しなさい」


「それは分かりますが。

なぜ、わざわざ何もない街であの天の炎を発射しようと思ったのですか」


そういう王に彼は先程の苦笑いよりも困っているのか顔を歪めていた。


王もさすがにその表情を見て、その理由を話した。


「……、情報によるとその街に魔王軍幹部が魔王復活のための兵器を隠し持っているらしいのよね」


「あーあれですか、確か情報元は不明ですが、それによれば素体となるものに魔王の魂を編み込み、何らかの方法で魔王を復活させる計画、ゴーモト計画ですか。

ですが、その計画が本当にあるのか確認してからのほうがいいのではないですか」


すると、王は今にも泣き出しそうな声で懇願した。


「そうだけど、あれは、絶対に外には出してはいけないのよ。

だからお願い、ラウ。

魔王軍があれを作っていた施設や証拠があるのなら、住民全てを退避して都市ティルウィングを全て焼却させて欲しいの」


「分かりました、王様がどうしてもというのなら」


「本当にありがとう、ラウ。

都市ティルウィングの住民達を受け入れる都市を探して来るから、また、何かあった時は連絡をちょうだいね」


ピッ


それを言い残した後、彼女の顔は先ほどと同じ黒いスクリーンになった。


カチャ


すると、彼はその部屋にあったイスを二つ持ってきてそこに座り、机の上にあった赤いトウガラシのようなものを取り出し噛みしめた。


「やっぱり、唐辛子は辛いねぇ。

しかし、なんでかな。

王様はあの都市周辺に天の炎を使おうとしているし。

確かあの都市は数年前、暴食のリンネに襲われたがなんとか復興できた奇跡の都市と呼ばれているが再び、都市より西側にいた暴食の魔獣達が現れるといい、あの都市には何かがあるのだろう。

一度、しっかりと調べてもいいかもね」


彼はそう独り言を言うと、俺のほうを向いた。


「それで君は誰なんだ、さっきから小生のほうをずっと見ているけど」


「そうか、やっぱりアナタには俺の姿が見えるんですね。

だけど俺も知りたい、俺は誰なのですか」


「そうか、記憶がないから、自身の存在も知らないのか。

俗に言う、記憶喪失っていうものなのかな。

まぁ、立ちっぱなしは疲れるし、こっちのイスに座ればいいよ」


そうして、俺は彼が準備してくれたイスに座った。

イスに座ると、彼はまた唐辛子のようなものを噛み潰して話しを始めた。


「さて、小生に何のようでいきなり現れたの?」


「分からない、それを知りたくて俺はここに来たんだ」


「そうか、じゃあ一つ質問するけど。

君は、王様や他の英雄たちには視認されていたのか」


「アナタ達がラプマルさんと呼んでいる子は気づいているけど、他は誰も気づいてはいない様子だった、アナタだけが気づいたと今、知った。

ところで、俺の顔はどうなっているんだ。

もしかしたら、アナタが知っている顔じゃないのかなと」


「すまないが分からん、顔がボンヤリとしていてな」


そうか名前は分かったけど、もしかしたら顔もマコトかと思ったけどまだ彼らには分からないのか。

もしかしたら、俺はマコトとは別の存在なのかもしれない。


「そうですかありがとうございます、初めてあった俺にここまで相談に乗ってくれて」


「まぁ、なんか親近感みたいなものが湧いてね。

そろそろ、この時間だと夜が明けるか」


確かに何か自分の中の存在がどこか分からないところへ帰るように言っている。

もう、帰らないと、でもその前に。


「また、何処かでお話しましょう、ラウさん。

俺は帰ります」


「そうか、帰るのか、またいつでも来てもいいよ。

お菓子も準備しているから」


「ありがとうございます」


なぜかは分からないが、彼と話せて良かった、視認されることでここに自身の存在が保つことができたのだから。

後は、何処かに置いてある記憶を持ってくることさえできれば、確実に個として存在でき、忘れた目的も思い出せる。


そして、俺はその部屋から消えて何処かに行った。

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どうかよろしくお願いします。

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