第3章
狡猾な魔女シリーズ第一弾
麗しき令嬢は
鏡の中に
1.5巻 強かな少女は策と共に
第3章
「・・・メアリー嬢様。
何で、自分で運べてるんですか。」
大きな箱を、3つも重ねて持っているのは、メイドではなく、伯爵令嬢―メアリー・ブランカだ。
「日頃の努力と鍛錬の賜物ですわ!!」
「あと、本当に何処で焼くつもりなんですか。
あんな、大きなもの。」
「だから、言いましたわよね。
『知り合いの所』ですわ!!」
「・・・本当に、何処で知り合ったんですか。」
「覚えてませんわ!
もう、大分昔だと思いますの。」
「・・・本当に、末恐ろしい嬢様ですよ、貴女は。」
「どうもありがとう。」
「褒めてませんよ。」
「皮肉は全て、『誉め言葉』として受け取った方が、断然良いんですのよ?
自分にとっても。
相手へのカウンターとしても。」
「出過ぎた歩兵は、真っ先に狙撃されますよ。」
「貴女に?」
「もう、撃てませんよ。」
「あら、そうかしら?」
「・・・あと、どうやってあの『粘土』、持って行くおつもりなんですか?」
「それは、貴女の仕事ですわよ?」
「・・・馬車を、手配しましょう。」
「話が早くて、助かりますわ!」
「・・・謎掛けなんて、意地悪な嬢様ですね。」
「他の御令嬢方よりは、素敵だと言う自覚はありますのよ?」
「まぁ、そうですがね。」
「あら、これは素直に認めるんですのね。」
「その代わり、他の令嬢より、破天荒で、変ですけどね。」
「ちょっと!」
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「メアリー嬢様。」
「何ですの?」
「これ、売りましょう。」
「駄目ですわよ?!」
「・・・良い『商人』くらい、どうせ存じ上げているでしょうに。」
「駄目ですわよ。
カイン様のお顔に、泥を塗る事になりますわ!」
「・・・それはそうと、何でそんなに上手いんですか。」
「簡単な事ですわ!
・・・貴女も、『ずっと見ていたい』と思う顔の一つや二つ、あるんじゃありませんの?」
「『好みの顔』ですか?
人じゃなくて良いなら、まぁ。」
「そうじゃなくて!!
・・・ま、良いですわ。
どうせ、知ったら変わってしまいますし。」
「ことっ。」と、絵筆を置いて、メイドと向き合う令嬢。
ただしそれは、会話に専念するためではなく、絵具が足りなくなってしまったから。
メイドから令嬢に手渡される絵具の色は、アメジストを思わせるような、濃い紫。
「ありがとう。」
何処か、異国の文化も取り入れていそうな模様である。
何が描いてあるかと言うと、薔薇である。
しかし、赤のみではない。
そして、薔薇のみではない。
壺の絵には珍しく。
風景画である。
春の、庭園の一部を切り取ったのか。
かと言って、完全な風景画でもない。
草花のみが、切り取られている。
無機質で、風流心の無いもの―煉瓦や、外壁等―は一切除かれている。
空も省略する事で、花瓶の地の、白さを活かしている。
「ある人の御顔を、ずっと見ていたいと思いましたの。」
「殿下ですね。」
「そうですわよ。
だけど、ずっと引っ付いて、見ていたら…
迷惑ですわよね?」
「流石に、そこら辺の常識はあったんですね。」
「酷いですわ!」
「元・ストーカーが何をおっしゃる。」
「ストーカーじゃありませんわよ!
・・・まぁ、そこで。
カイン様の絵を眺める事にしましたの。」
「成程。不純極まりない動機ですね。」
「清廉潔白、純愛ですわ!!
・・・それに、素敵な絵の先生も居ましたの。」
「・・・強情ですよね、嬢様は。
転写魔法を使えば、あっという間に描けると申しますのに。」
「それだと何か、負けた気がしますの!!」




