第2章
狡猾な魔女シリーズ第一弾
麗しき令嬢は
鏡の中に
1.5巻 強かな少女は策と共に
第2章
「・・・メアリー嬢様。
流石の私も、少し聞き間違いを疑いますよ。
・・・本当に、何してるんですか、アンタ。」
「はいそこ!!
雇い主への口の利き方がなっていませんわよ!!」
そう言って、主人と一緒に粘土をこねているのは、
右目を包帯で隠した、薄い金髪のメイド―アメリだ。
「・・・そこは『口より手を動かせ』と言う場面では?」
「貴方、手も動いているじゃないですの。」
「・・・本当に、私、何させられてるんだろう。」
「ちょっと!!せめて私が居ないところで、そう言う事は言いなさい!!」
「陰口にしないだけ、マシと思いますがね。」
「もう、真面目におやりなさい!
マリアに勘づかれない内に、完成させますわよ!!」
「・・・そう言えば、メアリー嬢様?」
「何ですの?」
「・・・なんで、『玄関壺の偽物』作ってるんですか?」
「・・・そう言えば、言っていなかったですわね?」
「そうですね。」
「まさか、理由の前に
『どこで焼くのか』
『材料は何処から持って来たのか』
とか、聞かれるとは思いませんでしたわ。」
「メアリー嬢様と違って、現実的ですので。」
「そうですの。
・・・って、ちょっとお待ちなさい?!
今何か、余計な一言がありましたわよ?!」
「気のせいでは?」
「はぐらかさないでくださいまし!!」
「・・・それで、結局の理由は?」
「簡単な話ですわ!
マリアお姉様のために、私は【女神様】を出迎えない。
ですけれども私は個人的に、マリアお姉様を助けて下さるよう、件の【女神様】にお願いしたい。
だけれども【女神様】に会ったら、マリアお姉様に嘘を吐く事になる。」
「・・・『アリス嬢様』、ですよね?
『マリア嬢様』ではなく。」
「いや、あれはどこからどう見ても、マリアお姉様ですわよ?!
全く皆、何が見えているのんですの?」
「茶髪で緑の目の令嬢。」
「私じゃないですの!!」
「嬢様より薄い色をしています。
髪も目も。」
「・・・顔のパーツは?」
「・・・この国の王族の女性に、近しい方がいらっしゃいますね。」
「・・・それ、何時の時代ですの?」
「現在にも、いらっしゃいますよ。」
「・・・皆、おかしいですわ。
・・・私が、おかs。」
「いえ、これは珍しく、嬢様が正しいです。」
「ちょっと!また余計な一言!!」
「まぁ、それより。
話を続けて下さい?」
「全く…まぁ、貴方に代わりに【女神様】に言伝してもらうと言う方法も、ありますわ。
・・・でも貴方、知り合いでしょ?」
「はて。何の事でしょう?」
「・・・まぁ、そう言う事にしておきますわ。
・・・ともかく、作戦はこうですの。
私が【女神様】の従者の方に、【女神様】に言伝を頼む。
それで【女神様】はアテネから、事情を聞く。
完璧ですわ!!」
「・・・それで、何故これを作っているんですか?」
「女神様を従者の方と間違えたりしないよう、女神様の顔を知っておく必要がありますの。
それにブランカ家の令嬢としても一応、お顔を知っておく必要がありますわ。」
「・・・それで?」
「簡単な事ですわ!玄関に隠れられる場所は少ない。
少なくとも、マリアお姉様か女神様に見つかってしまう場所しかありませんわ。」
「・・・私が魔法で嬢様を隠すのは?」
「相手は【狡猾な魔女】様ですのよ?
見つかってしまいますわ。」
「・・・まぁ、確かに。
隠しきれないでしょうね。」
「やっぱり知っているんじゃ、ありませんの!」
「風の噂ですよ。
・・・それより、嬢様こそ何故、その名前を知っているのですか?」
「私が幼い頃から構築してきた、素晴らしい情報網の賜物ですわ!!」
「王子殿下のストーカー時代から?」
「ストーカーじゃありませんわよ!!
・・・まぁ、話を戻しますわ。
隠れられる場所が無いなら、作ってしまえば良いんですわ。」
「それにしても…。
・・・何故、壺?」
「壺に隠れられる方は、少ないからですわ!
意外性と完全性を求めた結果ですの。
それに。」
そう言って令嬢は、粘土をこねる手を止めて立ち上がる。
そして、目の前にある壺まで歩く。
「この大きさ!
もはや私が隠れる為に作られたと言っても、過言ではありませんわ!」
「過言です。」
「きっと陶芸家も、この瞬間を見越して作っていますわよ、このサイズは!!」
「風評被害ですね、陶芸家も。」




