私の小さな願い事
精神世界から元の世界へと戻っていく・・・
「あ!そうだミッちゃん!」
ネーちゃんが私を呼び止めた。
「ん?」
「ミッちゃんのファッションは戦いも含めて1000点オーバーヨ!!」
「ありがと!!また何か作ってよ!!私!今度はもっと綺麗に着てみせるから!!」
「約束ヨ!!そしていつか、ワタシがプロデュースしてもっと大舞台のTGCとかに立たせてあげるヨ!!」
「そ!それはいいかなぁ!?」
「それガこれからのワタシの夢!ワタシの願いヨ!!ワタシが欲しいのハミッちゃんとずっと親友でいるコト!!ダカラ!ワタシのこの小さな野望に巻き込まれるヨロシ!!」
「どひー!!」
どひったけど、これで・・・これでいっか。それがネーちゃんの願いなら、私はそれを応援するよ。
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元の世界へと意識が戻った。体育館の天井・・・元に戻ってる。そしてみんなが私を覗き込んでいた。
「・・どうなったの?」
「にゃふ!!」
「わっ!?」
私は跳ね起きると同時に喜びの感情が吹き出した。
「ネーちゃんだ!!」
「そりゃワタシヨ!?」
そうじゃない。今目の前で見えてるこの人はネーちゃんだ・・・私は抱きついた。
「良かった!!死んでない!!」
「死んでたまるかヨ!!代わりにアイツらは消えたネ!」
他のみんな・・・戦ってたからかボロボロだ。けど、みんなも生きてる。いないのは第三帝国だけ・・・
「良かったぁぁぁ・・・みんな無事で・・・」
私は安堵のため息を漏らした。なんとか、全部丸く収まった・・・
「あったり前だっての!!っしゃ!!ミッキーの勝利を祝って胴上げすんぞ!!」
「え、あちょ!?メグ!?」
私はメグに担がれた。
「じゃぁそれと、チャンさんの復活祝いも同時に」
「ほあ!?チョ!?アイヤー!?」
軽音がネーちゃんを担ぎ上げ、気がついたら私はポーンポーンと上空に投げ飛ばされた。
そして胴上げの1番てっぺんに来た時、チラッと横を見ると遠くに桜蘭さんとレイノルド、そしてアレクシアが私たちの様子を眺めていた。そしてレイノルドとアレクシアが瞬間移動で消えた。
(忘れるな・・・次会う時俺は敵だ・・・お前たちを滅ぼす為に俺は現れる・・・今のうちにその喜びを噛み締めておけ。後悔しないように・・・)
そして頭の中で桜蘭さんが私に語りかけた。
(後悔なんかしない。この事も・・・そして、これからも・・・次会う時も、その次会う時も私は後悔しない生き方をしてみせる)
「・・・なら、俺を止めて見せろ。どれだけ時間がかかろうともな・・・」
あの顔・・・桜蘭さんもバチバチと電撃を纏って消えた。今、なんとなく気がついた事がある。桜蘭さんは戦う時ずっと悲しい顔をしている。
三上君は戦う時凄く爽やかに笑うけど、その中にすんごい怒りが籠ってて正直怖く感じる・・・けど、桜蘭さんは戦う時凄く眉間に皺が寄ってて怒ってるように見えるけど、その一撃一撃がなんか凄く悲しく感じるんだ。
上手く表現出来ないけど、常に何かに謝ってるような・・・そんな感じがする。
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波瀾万丈の文化祭が終わった、あれだけ一般人を多く巻き込んだ事件だ。この現状を隠し通すのは難しいだろう。私はそう考えてたけど、次の日テレビを点けてもスマホ開いても特にこれと言った事は起こってない。
三上君たちがまたメディア操作しているのかと思ったけど、そうじゃないみたい。なんなら三上君自身もそろそろ現状くらいは世界全てが理解しておくべきだろうと言うスタンスだ。
おそらくこの国が、世界自身が無理矢理口封じしてる。増子味さんが言っていたように、報じようとしても止められる・・・第三帝国を倒したとしてもこれじゃ意味が無いな・・・
けど、私の願いは守られた・・・
「おはよーネー!!」
「ネーちゃんおはよ」
相変わらず私とネーちゃんは一緒に登校してる。
「アイヤー、来年の文化祭はもっと盛り上げたいネー」
「だね〜、にしてもあんな戦闘はごめんだよ。疲れるし、怖いし、痛いし・・・」
他愛もない?会話をしながら一緒に歩く。
「だからこそ!来年はもっと派手に行こうよ!!ミツキちゃん、今度はマイクロビキニなんかどうかな?若しくは逆バニー!!」
そこへ安定に屈託の無い笑顔で私にセクハラする軽音かやってくる。
「オゥラミツキ!!おっせぇ!!朝練始めるぞこら!!さっさと部室来い!!」
そして相変わらず部活熱心な東郷。
ブロロロロロロォォォッ!!
「おう!おはよミッキー!朝練遅れそうなんだっての?あたしの背中に乗りなよ!!乗せてってやるっての!!」
今日はバイク登校ですかメグ・・・
「コラッ!!道山さん!!バイクで登校は禁止よ!!」
「あん!?誰があんたの言う事聞くかっての!!」
「ほぎゃっ!?」
私は無理矢理メグの背中に乗せられた。
「なんですってぇ!?って!!私のミツキちゃんを何処に連れて行く気!?待ちなさーい!!」
「どひーっ!!助けてー!!」
「おー!ミツキバイク乗ってんの!?すげー変な格好!ぎゃはは!!」
「新庄君!?何笑ってんの!?お助けー!!」
「楽しそうで何よりだなミツキ」
新庄と京也が歩いてた。私は助けを求めてみたけどダメだこりゃ。
朝からバイクで連れ回された・・・けど、それで良い。私の願いはこんな日常。世界を平和にするとか、死なない世界を創るとか、そんなのはよく分からないしどうでもいい。私の願いはこの小さな日常。私に出来たこの親友たちと一緒にこの世界を生き抜く。それが、私の戦い。
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プロローグ
永零のアジト
「ただーいまー!!」
レイノルドが元気に戻ってきた。
「お疲れ様・・・」
「あ?なんでぇ永零?何してんだ?刀なんか眺めてよ・・・」
永零は自身の刀をじっと眺めていた。
「決戦の準備ですよレイノルド。第三帝国戦において私は馬喰 一兆に敗北したです。その際の条件が永零の居場所を教えることでしたので」
アレクシアは澄ました顔で言い放った。隣でレイノルドが口をあんぐりと開けてる。
「何してんのーっ!?」
「仕方ねーです、負けたものは負けた。私は機械なので言い訳出来ないですし、屁理屈も特に言える事は無いですので」
「おいおい馬鹿正直過ぎんでしょ・・・良いのかよ永零よー」
「だから準備してるんだ。そろそろ終わりにしよう・・・ミツキさんの存在が僕の想定した物語と大きく変わった場所に向かってるけど、目的自体は達成した。この世に蔓延った汚らしい遺物を根絶やしにする・・・現在最大規模だった第三帝国は完全に滅んだ。けど、人間このまま進めばまた新たな第三帝国が生まれるのは間違いない。だからこそ雌雄を決するのは今なんだ。
安心してよレイノルド、互いに今すぐは動けない。礼だってここを見つけるにはあと少し時間はかかるし部隊を揃えるのにも時間がかかる。決戦は年末になるね・・・人間の年明けが来るのか、新たな人類の年明けになるのか・・・決めようじゃないか」
永零は刀を収めた。
「・・・はいよ。んじゃ、俺も準備すっか。桜蘭はどうする?」
「俺は待つだけだ、ただ時をな・・・」
「ほーん、ニヒルちゃんは?」
「私に聞いてどうするです?何度も言うが私はAIだ。人工知能だ。人が作った。人間が唯一生き残れる術は永零の出した答えが私の最適解と一致している。私はその為に動くですよ」
「わーってるよ、聞いてみただけー。んじゃボローニャちゃんよ。まずは最終防衛線のあんたが礼の大隊と戦う事になるだろうけど、クラークがいねーんだ。ほぼ確実に死ぬぜ?良いのか?」
レイノルドはどがっと椅子に腰掛けて暗がりにいる女性に向かって声をかけた。
「問題ないわ。永零様の為ならばこの命、いくらでも捧げる覚悟は出来ている」
「ちゅーせーしんたっけーな相変わらずよ。ま、兎に角だ・・・ようやくこの腐った世界を終わらせられんだ。神の野郎が放棄した人間の為の世界・・・中途半端に創られたこの世界、ぶっ潰すぜ俺はよ。んでもって、奴に代わり完璧な世界を創る」
レイノルドの顔は険しい表情へ変わり、拳を強く握りしめた。
「・・・・・」
その言葉を聞いていた桜蘭は目を瞑り、真っ直ぐ前を見た。
「ミツキ、お前がこれから味わうのは絶望だ。これまでの足掻きが無駄になるような、お前の力でもどうしようもない運命がお前に次々とのしかかる・・・受け入れるのか、はたまたそれでもお前はまだ諦めないのか・・・見せてくれ。俺は、俺の全てを懸けるぞ」
第五局面 A SMALL WISH IS THE BEST FRIEND 完