四神の帰還
空が徐々に戻っていく・・・これも前の時と違う。前までは一気にこの空は元に戻ったのに・・・
「おい、ミツキ」
「何?」
私は今あんたに構ってる暇ない。
「・・・当たってんだけど・・・」
「は?」
「だから、胸!!当たってる!!」
・・・・・・あっ、そういえば抱えたまんまだった。
「ふんっ!!」
私は霧島をついでに突き飛ばした。
「いだっ!!てめ!何しやがる!!」
「それはこっちのセリフ!!こんな状況で何考えてんの!!」
「阿呆か!!一応俺も思春期男性だ馬鹿!!」
「あっそ!いつも東郷さんに抱きつかれてクールぶってるくせによく言う!!」
「それは関係ねーだろうが!!」
「あははは!このカップル面白いな〜」
「「誰がカップルだ!!!」」
私と霧島は同時に反論した。視線を送るとニコニコ笑顔のあの男の子がいた。
「って、この霧島は放っておいて・・・君は誰なの?何処から来たの?」
私は男の子に聞いた。
「それオレが聞きたいよ。姉ちゃんたち何処から来たの?オレと同じでこの異空間に囚われてるの?」
質問で返された・・・
「いや、よく分からないの。じゃぁアレは何?海から来たアイツは・・・」
「アレね、アレはアバドンの騎士だよ。異空間の果て、俺たちは魔界って呼んでるけど、生と死の狭間の世界にあるその更に奥の異世界にいる奴らなんだ。俺はずっとこの世界に囚われてるけど、それがここ最近どう言うわけかここに現れだしてさぁ、アイツってば酷いんだよ?昔俺にも他に友達がいたんだけどさ、みんなアイツが殺しちゃって悪魔に作り替えちゃったんだ」
「悪魔?それってあの変な仮面付けた奴らの事?」
「そだよ。俺はなんとか生き延びたんだけどねー。姉ちゃんたちはこれからどうするの?ってあれ?」
「あれ?ねぇ君、身体が薄くなってない?」
男の子は徐々に透明になっていく。
「あー、なるほど。君たちたまたま飛ばされたんだね。じゃ、お別れだな」
「き、君はどうするの!?」
「うん?そりゃまた、アイツらに襲われ続ける生活だね」
ら、楽観的過ぎない?この子・・・
「嫌じゃないの!?」
「うーん、嫌だね。だって面倒だし、魚は不味いし、アイツらキモいし」
「なんとかならないの?」
「さぁ、オレには分かんないよ?」
この子には聞きたいことがまだ色々あるんだ・・・後この子、なんとなく凄く重要な要素を持ってる筈。なんとかして向こうに戻さないと・・・今がチャンスなら尚更!
「ならさー、引っ張れば?ほら、手は握れるよー」
「本当だ、こんだけ透明だともう無理なのにな〜、お前凄いな!なはは!」
霧矢君が男の子の腕を掴んでいた。
「っ!!全員コイツに触れろ!!世界が完全に元に戻る前に!!」
すぐに察した三日月が声を張り上げた。どうやるかは分からないけど、私たちはこの子を掴んだ。
「っ!?何これ!!何か引っ張られる!?」
見えない何かに引っ張られる感覚がある。下手をすれば私たちは全員巻き込まれるんじゃないか?
「いててて!!世界が引っ張ってんだよ!オレをここから出さない為にさ!!」
「ちっ・・・この子が何したって言うの!!このアホ異空間!!」
「おいミツキ!!さっきのアレ出来るか!?」
「さっきの!?雷なんて落としてどうするの!!」
「違うわボケ!!あれはなんつーか!言葉を応用した感じに見えた!!だからまだ何かやれんじゃねーのか!?」
言葉・・・世界を知り、世界に命令する。そして魔法に命令する・・・
「・・・離せ!寄越せ!この異空間をこじ開けろ!!この子を・・・解放しろ!!!!!」
ぽんっ!!!
「ほんぎゃっ!!!」
大きなカブのごとく突然引っ張られる力が抜けて、私は後ろにすっ転んだ。空は真っ青・・・戻って来れたんだ。
「おーいミツキー!!どこ行ってたー!!あんま遠くには行くなよー!」
父だ。
「海の事故って怖いんだから、心配かけさせないでよねー!」
母もいる。
「おー!!青い空見るのなんて何百年ぶりだー!?あ!魚ー!!ほっ!!取れなかった!!」
あの子は安定にすんごい楽観的だ。普通感動もんなんじゃないの?何百年ぶりって言ってた割に普通に遊んでる。
「おやミツキ、その子は友達かい?ってか、猫耳?」
「ん?俺?俺は四神の一人の白虎っての。この姉ちゃんとはさっき知り合ったのね」
「ミツキ・・・」
「何?」
「ちょっとこれ持って」
父が私に何故か猫じゃらしを渡してきた。あー、なるほど。
「んー・・・ほっ!!」
「おっと!」
私の持ってる猫じゃらしに白虎は早速反応した。ぴょんと飛んで掴もうとして、私はひょいと猫じゃらしを引いた。
「やっ!」
「あっ!」
けど今度は普通に持って行かれた。そして白虎はその猫じゃらしで遊びだした。
「・・・猫だな」by私
「虎・・・いや、猫か」by霧島
「うん、猫だ」by三日月
「猫だねー」by霧矢
「ゴロゴロゴロゴロ・・・うにゃう!」
ぽんっ!
あ、最初見たあの虎に戻っちゃった!!やばいやばい!!周りに見られたら大変だ!!
「ちょっと!!白虎君!!姿!!戻ってる!!」
「にゃーん?あー、ほんとにゃねー。ふん!獣神化ゃ」
ぽんっ!
あ、戻った・・・
「呑気な性格は相変わらずのようだな、白虎」
誰だ?・・・わかったぞ、やっぱり原因いたんだ。クラーク、遠くで私たちを監視してやがったな?
「うーん?ふーん・・・くぁ〜!!ふにゅ、すー、すー・・・」
寝ちゃった!!人間体のまま身体を丸めて尻尾をくるんと巻いて寝てる。
「せっかくこの世界へ連れ戻す事に成功したと言うのに・・・だがまぁ元の性格がアレだ。この程度は予測通り・・・」
「おい、さっきの原因はあんたか?」
「あぁ、俺は今異空間の研究をしていてな、我々でもまだ完全にこの空間を知り尽くしている訳ではない。そんな中異空間内で悪魔になっていない存在、つまりは白虎の反応を見つけた。丁度良かったよ、お前たちをこの異空間に送り込み白虎を連れ出させた。試みは成功だ。
ただ、全員が戻ってくるとは思わなかったがな、これは予測通りではない。輝夜 ミツキ程度は始末したかったが・・・アバドンの騎士をどうやって退いた?」
「白虎君が強かったから倒しちゃったよ、おじさん」
私は言い返した。私程度始末したかっただと?そうですか、どーせ私は最弱のレッテルのままですか。
「おじ・・・ま、その件はどうでも良い。重要なのはこちら側に白虎が戻った事だ。渡して貰おうか・・・」
「生き物を物扱いする連中に渡す訳ないでしょうが」
「この俺に楯突く気か?このクラーク プファンクーヘンに・・・俺の力ならお前たちはおろか、国ごと一気に潰す事が出来るんだぞ?」
「力による脅しか・・・なぁおっさん、この世界にはやっちゃいけない約束ってのがあんだよ。それは一方的な約束だ、脅しってのはまさにそれなんだよ。相手に選択の余地を与えない、自分だけが得ようとする。俺、そういうの嫌いなんだよな」
「・・・あんたがそれ言う?」
私は少し呆れた声でツッコミを入れた。
「あん時の40万の話か?あれは軽音にお前が持ってくるって言っただろうがよ。やるっつー選択したのは紛れもないお前だ。で、あん時結局三上が助け船出さなきゃお前約束破ってただろうが」
「はぁ!?ふつーに考えて1日で40万なんて不可能に決まってるでしょうが!お陰で人生終わるかと思ったわ!!性悪変態野郎が!!
この野郎!!殴ってやろうか!?
「ぁあ゛!?そもそも原因はテメーが最初に約束守らなかったのが悪いんだろうがよ!!」
「なんの話だ!!私がいつあんたと約束なんかしっ・・・た?」
「あ・・・」
私と霧島は少しの間沈黙した。
「痴話喧嘩は終わったか?で、どうする?俺と戦うか?」
「無論!!」
今の話は置いておいて・・・
「そうか、俺による死はかなりキツいと思うぞ・・・一本目・・・ファースト・コマンドーから行くとするか」
来るぞ!!
「ちょーっと待った!!」
「「「っ!!?」」」
構えた瞬間、誰かが止めに入った。
「お熱いとこ悪いけどさ、ここは民間人もいる海水浴場だよ?ケンカは良くないなぁ〜」
ふわっとしたピンク髪の女性だ。手元にはなんだあれ、マイク?
「シャルロット・レッドローズ・・・ROD将軍のお出ましか」
「それ以外にも、今日はリーダーたちみんなで慰安旅行に来てるんだ。クラーク、いくらあんたでも私たち全員はやめといた方が良いよ?お互いの為にもね・・・」
あ、見た事ある顔ぶれがいっぱい・・・あのセクハラマンもいるや。
「ささささ!!何があったのか存じませんが、ここは穏便に行きましょうって!!クラークさんよ!!」
「お父さん、また知り合い?」
「おぉ、クラークが例の国連の10万ドルおじさんだ」
コイツかい、父を手懐けてたのは・・・
「で、どうするの?RODメンバー全員とやる気?クラーケンさん?」
どう出る・・・今の私は何処までやれる?あの触手たちと・・・
「・・・良いだろう、ここは手を引く。白虎はお前らにくれてやろう」
クラークは腕をおろした。
「ふっ、霧矢・・・親父さんによろしくな?」
え、今なんで霧矢君に・・・って、消えちゃった。
「なんだあいつ・・・霧矢、なんか知ってんのか?」
「さぁ?あんなおじさん知らないよー?父ちゃんが知ってんじゃないのー?」
「あいつ学校関係以外の仕事についてなんも話さねーからな」
「あんたの父親って、教頭が他になんの仕事してんの?てか良いの?」
「あ?親父はここら辺の神社の家系なんだよ。後、天正市の商店街の運営的な事やってる。やって良いかどうかは知らん」
これだから中途半端な町は・・・地味に権力持ってると下手すりゃ法律超えしてきやがる・・・
「・・・私からは何も言わないわ」
「そうしとけ、それよりも怪我は良いのか?」
「あ、さっきの?世界が元に戻ったと同時に治った」
珍しい、霧島が怪我の心配するなんてな。
「んにゅ・・・くぁ〜・・・」
そんな時、丁度白虎が起きた。伸び方が完全に猫のそれだ。背筋をぐいーっと伸ばして身体をプルプルと震わせた。
「ありゃ?クラークいねーや、けどなんか色々増えてんな」
そりゃ寝るからだよ。
「やほー!白虎君にミツキちゃんたちもはじめましてだね!私はシャルロット・レッドローズちゃん!RODの将軍務めてまーす!ミツキちゃんと三日月君の事はみかみんから聞いてるよー!」
あぁ、ただならぬ雰囲気と思ったらやっぱり三上君のご友人か。しかも呼び捨ての間柄ね・・・
「で、君が霧島京也君と霧矢君だね。ごめんね、なんか巻き込んじゃって!」
シャルロットはあざとくごめんねって感じで手を合わせた。
「いやいい。完全に巻き込まれた感じだが、なんか俺らも一口噛んでるみたいっぽくてな」
「そうなのよねー、不思議な事に。ミツキちゃんもそうだけど、君のお父さんとか荻山って人もなーんか永零と関係してんのよね。天正市ってなんなんだろーね。ま!そんな事考えた所で今は何にも解決出来ないか!白虎君も戻ってきたし!そもそも私たちは慰安旅行で来たんだし!!さー!遊ぶぞー!!」
この人も楽観的だなぁ。
「俺も遊ぼー!!」
白虎もか・・・
「俺もー!」
そして君もか霧矢君・・・君も大概なんか能天気だなぁ。
「ほらほら!!青春は待ってはくれないぞー!今を楽しみたまえお似合いカップルちゃん!」
カップル?誰が?
・・・・・目があった。
「「違います!!!!」」
そしてまた同時に声を張り上げた。
「ほほほ」
シャルロットはイタズラな笑みを浮かべていた。




