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理の外の力

 「何してんだ?こんなとこで・・・」


 「え、旅行・・・」


 なんたる事だ・・・夢だ。夢であってくれ、せめて一人旅するって言ってたネーちゃんと被るのなら分かる。けど、よりによってコイツかよ!


 「あー、三日月の姉ちゃんだー。おひさー」


 「あ、霧矢君、林間学校の時はお世話になりました」


 一緒に遊んでたって事は本当に兄弟だったんだなこの2人・・・


 「で、教えろ。なんでここにいる。よりによってなんでここを選んだんだ?」


 「いや、お父さんが商店街の福引でここの近くのホテルの宿泊券当てたから・・・」


 「ちっ・・・あんのくそ親父が・・・」


 「おやー!?君確か霧島教頭先生の息子さんだったよね!!あっしはミツキの父ですー!覚えてるー!?」


 ぎぎっ!!変なタイミングで来んな!!ただでさえ変な空気なのに!!


 「あ、あぁ覚えてるけど・・・」


 つか、父よ何で霧島家とつるんでるんだ?また迷惑かけて無いだろうな?特に霧島だぞ、余計な事するなよ?


 「親父さんは仕事ついでかぁ?確かあん人新宮出身だったもんなぁ!」


 「まぁ、そんなとこです・・・」


 「大変だねぇ、親父さん仕事中つーかなんかだろ?兄弟だけじゃアレだし一緒に遊ぶかぁ?」


 ぎぎぎっ!?やめれや!!何が好きでこんな奴と一緒にいなきゃならないんだ!?


 「い、いや俺たちは結構ですんで・・・」


 ふぅ、霧島の方からいなくなってくれた。良かったぁ、三日月は霧矢君とは仲良いからな。今泳ぎに行ってて良かった。下手すりゃ霧島とビーチボールで遊ぶなんて地獄やる羽目になってたとこだ。


 「あら?今のってキョウちゃんじゃない?おっきくなったわねぇ〜」


 「おー、親父さんの仕事ついでに被ったらしいぞー」


 母も着替えてきた・・・って、


 「あのさ、なんでお父さんとお母さんアイツの事そんな知ってる感じなの?」


 「なんでって、お前幼馴染じゃんかミツキよぉ」


 ・・・・・・・・はぃ?


 ・・・・・・・・はぃ?


 ・・・・・・・・はぃ?


 「昔は一緒によく遊んでたわねぇ〜、しばらく引っ越してこっち戻ってからはキョウちゃんの話聞かなかったけど、相変わらず仲良さそうで良かったわ〜」


 両親揃って何を言うてんねや?てか、キョウちゃんって・・・確か小1の時によく遊んでたのって・・・


 この時、私の中で記憶の鎖が一気に繋がったのを感じた。


 「おいおいおいおいおいおいおいおいおいぃぃぃぃっっ!!!!」


 やめろ、マジでやめろ!!そんなわけない!!私の幼馴染と言えばキョー君って呼んでた子が1人いる!!あの頃から見てたアニメの話も分かってくれて、よく一緒にごっこ遊びもしたりした!!


 そんなアイツが、あの霧島だと言うのか!?あり得ない!!絶対あり得ない!!しかも、確か記憶が正しければ夫婦ごっことかしてなかったか!?


 「お、おえ〜!!!」


 は、吐き気が・・・


 「あー、三日月はっけーん!」


 「あ?って!?霧矢!?何してんだお前!!また迷子か!?」


 「違うよー、兄ちゃんと一緒〜。あ!一緒にビーチバレーでもやるー?ここじゃサッカー出来ないしさー」


 霧矢くーん!!せっかく霧島と離れたのに何言ってんのー!!


 「おい霧矢!!いいから!やらなくて良いから!!あっち行くぜ!!」


 「えー、兄ちゃんのガールフレンドいるのになんで?」


 「はぁ!?おい霧矢こら!!誰がガールフレンドだ!!」


 「だって三日月の姉ちゃんの話いつも家でしてんじゃん。俺てっきりそういうもんかって思ってたけど違うのー?」


 「違うわ!アレは愚痴言ってただけだろうが!!」


 ま、毎日毎日私の愚痴言ってたのか・・・にしてもなんでそこまで私は嫌われるんだ?昔は仲良くやってたのにさ・・・あ?まさか・・・原因は・・・


 「っ・・・え?」


 私は一歩歩いた。その時だ、突然空がまた真っ赤に・・・




 『ぐるるるる・・・・・』




 「害獣!!?」


 なんでこんなとこに!!しかも、赤い空の下で!悪魔じゃないの!?


 私は銃を取り出して構えた。


 「おいまたか・・・ほんと何が起きてんだ?」


 「下がって!!ここは私がなんとかする!!」


 お父さんたちの姿も消えた・・・私たち4人だけがこの異空間に囚われたんだ。けど一体誰が・・・誰かがやった筈なのに、誰もいないなんて・・・


 「どけ、ミツキ」

  

 「あちょっ!!何すんの!!」


 霧島は私を後へぐいっとどかしてきた。


 「なんで俺がお前なんかに守られなきゃならねーんだ」

 

 「けど、武器ない」


 「三日月君、霧矢から話聞いてるが、あいつらに対抗出来る武器持ってんだろ?」


 「あぁ、コイツだ。けど、こいつは竹刀とか木刀とはまたちょっと癖違いますよ?」


 三日月はクロノスのあの剣を取り出し、霧島に渡した。


 「剣道だけが俺の取り柄じゃねーよ。ケンカは親父に絶対止められてるけどな、正当防衛でなら、何やっても良いってな」


 わ、笑ってる・・・ヤバいこの人戦闘狂だ!!サイコパスって奴だやだー!!


 「じゃ、行くぜ!!」


 容赦ないな・・・私も最初の頃は引き金引くの躊躇したのに・・・しかも切った感触が直に伝わる刃物でよーやるわ。


 「ふん、雑魚が・・・で?ミツキ、いつになったらコレ終わるんだ?」


 「敵連中が言うにはこの空間作り出してる奴を倒すか、10分くらい経過すれば良いみたいだけど・・・肝心な敵がいない」

 

 「敵ってのはこの間のサクラっていけ好かない奴か?奴が大将?」


 「いや、一応は永零って人がラスボス。桜蘭さんはよく分からない・・・けど、この戦いに巻き込まれた始まりはあの人から始まった。私は春休み最後のあの日、この害獣に襲われて殺されかけた・・・そこから助けてくれたのはあの人。あの出会いがきっかけで私はここにいる・・・」


 「殺されかけた?」

 

 「うん、まぁあの時はこのまま死んでも良いかとか思ってたっけ・・・あっ」


 やべ、そう思うきっかけの前で言うべきじゃないな。けど、あんたのせいでもあるんだからな?


 「ちっ・・・お前はなんでいつもそう簡単に塞ぎ込むんだか。言っておくが俺は謝らないからな。死のうとしたのはお前自身の判断だ、お前が選択した事だ」


 「分かってるよ、全部私が選んだ事。あんたのせいじゃない。勝手に睨んでたのは私だし・・・」


 半分は、私に原因あったって認めるけど・・・


 「あぁ、後一つだけ言い訳しておく。俺は別にお前にいなくなれとは言ったが、死ねとは言ってないからな」


 「・・・それ、今更言っても遅いからっ!!!!」


 ズガンッ!!


 私は引き金を引いた。現れたんだ・・・悪魔が、これまでの2種類とはまた違う。泣いている・・・悲しげに、けど恨めしく私たちを睨む涙を流した仮面をした悪魔だ。

 

 「私はもう、死ぬつもりなんて毛頭ないし、あんたの前からいなくなる事もないから」


 「ふーん言ったな?俺は嘘を吐かれるのが嫌いなんだ。やれるもんならやってみろよ」


 「どれだけ嫌がらせ受けたとしてもやってやる。今度はちゃんと守るよ、約束」


 「なら、その約束っつーのを成し遂げたいのなら・・・」


 「まずは、こいつらぶっ飛ばす!!」


   




 悪魔の戦闘能力はさほど変わらない。それにまだ数が少ない、4人いれば対処出来る・・・


 「おらよっと!!くそ、まだ終わらねーの?つーか妙だよな、なんで俺たちだけ、しかもこんな場所で起こるんだ?」


 三日月も同じ疑問を感じでいた。

  

 「私もそう思う、チャールズもメグも、あいつらキーセブンたちがこの空間を作り出してた。けど、そんな奴らは今ここにはいないし、なんならなんで私たちを限定したのか。前までなら範囲内の人たち全てが異空間に取り込まれてたのに・・・」


 「うーん、どっかで見張ってるとかー?」

  

 だったら尚更意味が分からない。



 カシャ・・・カシャ・・・



 あ?何の音だ?


 「ミツキ、後はここから出る方法はねーのか?」


 「確か、リリアちゃんは強烈なパワーを外側からぶつけて突入して来たから、逆をやれば出られるかも・・・」


 「で、その強烈なパワーってのはどんなもんのパワーなんだ?」


 「い、一撃で建物とかが壊れるくらい・・・」


 「あぁ、つまりは不可能か。期待して損した」


 ぐぬぬ・・・




 カシャ・・・カシャ・・・



 

 っ、さっきからなんだ?変な音が聞こえる気がする。歩く音?


 「ねー、もう悪魔たちもみんないなくなっちゃったよー?」


 まさか・・・私たちこの空間に閉じ込められたとかないよね?三上君が言ってた、この空間が自然に出来るのは天文学的な数字だって。私たちはもしかして、その確率に当たったと考えられなくもない。ってなると、ガチでやばいかも・・・


 『海だ!!海を見ろ!!』


 「海?っ!?ね、ねぇあれっ!!」


 



 ガシャ・・・ガシャ・・・ガシャ・・・ガシャ・・・





 海の先、水面を歩く影がいた。そして私はその影を見たことがある。全身鎧のような姿、悪魔よりも更にふたまわり以上の大きさ。腕と剣が一体化した武器・・・夢の中で見た敵と同じだ。


 「なんだありゃ・・・」


 「見るからに、なんか今までと雰囲気ちげーな・・・」


 「威圧的ー、俺やだよあいつー」


 予知夢ってやつだっのか?私に警告する為に・・・けど、誰がそんな事を・・・


 鎧は水面をまるで地面を歩くかのように近づいてくる。


 「おいミツキ!!他に方法は本当にねーのか!?」


 「分からないよ!!私もあんな奴見るの初めてだし!こんな状況も初めてだし!!そもそも全然こんなのまだ慣れてないんだから!!私に何か求めても無駄なの!!私だって必死なんだから!!少しは自分でも考えろ!!!!!」


 「っ・・・わ、悪かった・・・すまん」


 なんか頭に来たから思いつくまま叫んだ。霧島は少し黙った。


 だからといって現状が変わるわけじゃない。夢みたいに私のフィギュアが動き出して一発逆転みたいな事は起きそうもない・・・


 「どうすれば・・・」


 考えろ・・・あいつが上陸したらなんかヤバい気がする。その前になんとかしないと・・・


 「簡単だ・・・奴を殺す」


 「なっ!?アホかあんた!!明らかにヤバいじゃん!!近づいたら絶対ダメだって!!」


 「だったらここで指加えて見てんのか!?ぁあっ!?今出来る事をやるべきだろうが!!」


 「だからって・・・」


 「見ろよ・・・威圧感たっぷりだが、動きはトロい」


 霧島は海へと向かった。そして浅瀬に立ち、剣を構える。


 

 ガシャ・・・ガシャ・・・ガシャッ


 

 霧島の前で止まった?


 「・・・・・っ、来やがれ・・・」


 霧島君汗が凄い・・・相当緊張して・・・いや、あの汗は緊張じゃない。恐怖だ・・・呑まれてる!!


 「行くぜ!!」

 「だめっ!!!」


 私は思わず後ろに向かって銃を撃っていた。そしてその反動で私は吹っ飛んで霧島に激突し、そのまま横に弾き飛ばされた。


 「っ!!ミツキ!!なにしやがっ!!!?」


 「っっ!!っつ〜・・・!!」


 案の定だ、あの一瞬で鎧は剣を振り下ろしていた。目にも止まらない速度だ・・・あんなの、剣ごと殺されてた、私は外から見てたから先読み出来て、このかすり傷で済んだけど・・・私たちじゃあいつに勝てない!!


 「霧島君!!ちょっと離れるよ!!」


 「なっ!!?おい!!何を!!」


 兎に角今はアイツから離れるのが懸命だ。私は霧島を担いで海から上がった。


 


 ガシャ・・・ガシャ・・・ザスッ・・・




 鎧は砂浜に足を付けると動きを止めた。






 『ギギッギギ・・・グギャァアアアアアアアアアオオオオオオオオオオオッッ!!!!!!!』



 

 うるっさ!!!なんだこの雄叫び!!口元の鎧がばっくり割れて牙まみれの口からけたたましい咆哮を上げた。鎧はこっちを見る、狙いを私たちに絞ってるんだ。


 ズガンッ!!


 撃ったけど、やっぱり弾かれる・・・ダメなのか?私じゃ、どうしようも・・・いや、諦めてたまるか・・・ふざけんなよ。こんな、こんなとこで死んでたまるか!!!!


 「うあああああああっ!!!!来やがれっ!!相手してやるっ!!!」

 「おいミツキ!!止めっ!!っ!?」


 ほんの一瞬、私たちの横を影が飛んで行った。そしてその影はあの鎧に突撃し、牙を立てて噛みついた。


 「ガルルルルルッッ!!!!」


 「ね、猫っ!?」

 「いや虎だろっ!!」


 その影は体長が1メートル程の猫型の動物みたいだった。真っ白な毛並みと黒色の縦線模様。


 「硬ってー!!俺の牙でもダメか!!けど、上陸はさせねーよ!!」


 「し、喋ってる!?」


 その猫科の動物は普通に喋ってた。


 「っしゃー行くぜ!!獣神化(じゅうじんか)だー!!」


 あの猫は一歩踏み出す度に姿が徐々に変わって行く。そして、最高速度に到達した瞬間、私の目では追えなくなって見えたのは白髪と黒髪の混じりで尻尾の生えた猫耳男子があの鎧の腹部をえぐってる姿だった。


 「今だ姉ちゃん!!!」


 私はチャンスを逃さなかった。ありったけ威力の弾丸を空いた穴に撃ち込んでやった。


 「倒れていく・・・っ!?いや待って!!」


 『ギョォォォォォォォォオオオオオオッッッ!!!』


 あの鎧の空いた口、それが更に開いてそこになんか変なエネルギーの塊みたいのが溜まりだした。


 「おいこれ!!チャールズの撃ったレーザーなんかじゃ比較にならねーぞ!?」


 確かに、感覚で分かる。ここら辺一帯は吹き飛ぶ威力だ。


 「あんにゃろ!!ファイナルアタックかますってか!?やらせねぇって!!!」


 ガゴンッ!!!


 男の子は顎を蹴り上げた。


 「そうだ!」


 私はアイツの頭部に向かって銃を撃つ。


 けどこの位置はダメ。私の望むのは上から、あいつの頭を押さえつけて口を閉じさせる事!!


 『ならば!!それを口に出せ!!魔法に命じろ!!』


 「命ずる・・・」


 『そうだ!!世界を知り!世界に命令しろ!!己の言(・)葉(・)を!魔法に伝えるんだ!!』

  

 「邪魔、失せろ、そしてその口を・・・閉じろっっ!!!」

  

 



 ビシャァァァァンッッ!!!!!





 「んなっ!?」

 「うわっ!?」


 私が引き金を引いて放たれたのは銃口から電撃を纏った弾丸ではない。その遥か先、あの鎧の頭の上から雷が落ちた。


 鎧はその衝撃で口の中であのエネルギーが暴発、頭が吹き飛んで身体はバラバラに崩れた。

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