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誘拐班

 一方、ミツキは・・・


 朝の6時半、私は三日月に叩き起こされた。そして私は絶望した、


 「・・・やべっ!!もうこんな時間!!いだだだだ!!!痛いよー!!」


 激痛が全身を襲う。身体が言うことを聞かない・・・その時だった。


 『ピンコン♫』


 今のは、スマホの通知・・・そして


 着信アリ・・・


 「は、はい」


 『朝練開始時刻マルナナマルマルなんですけどー?まさかまだ家にいるとか言うんじゃないでしょうねー。まー私はいいわよー、入部届は捨てておくからさ」


 東郷だ。昨日言われた朝練開始時刻マルナナマルマルは要するに7時。今は・・・6時45分。学校までは・・・15分。


 「い、今行ってまーす!!」


 私は某天空の城前の映画もびっくりな速度で支度した。


 「行って来まーす!!」

  

 「おいミツキ?朝メシは?」


 「要らぬ!!」


 私が入部するって言った手前、ここで遅刻はまずい!!私は父を無視して家を飛び出した。


 「うおおおおおおおっ!!!!走れぇぇぇっ!!!」


 私は走った。凄いな、昨日の痛みが消えたみたいだ。人間追い込まれるとやれるもんだな。まぁ、普段からやれればいいんだけど!!


 「マルロクゴーゴー!!ミツキ遅い!!新入部員ならあと15分は早く来なさいよ!!」


 「ひー!!ごめんなさーい!!」


 「謝る暇あったら行動で示せっ!!ストレッチして!ランニング!!」

 

 「サーイエッサー!!」


 この部活、本当に部活か?ガチで自衛隊に来た気分。


 「らら先輩またあの子いびってるよ・・・」

 「いやー、俺たちもあんまし変わんないでしょ。けど特にあの子に厳しい気がするよねー。期待してんのかな先輩」


 後輩だけど先輩な一年に後ろからなんか言われてる。期待されてる訳じゃないと思うんです。多分普通に嫌がらせ入ってます。


 「ひっひっふー!!ひっひっふー!!」


 私は必死こいて1番後ろを走った。しんどい、止まりたい・・・いや、そこで止まったら半端者の今までの私!頑張ってくれ!私よ!!


 「ほんぎゃっ!!ご、ごめんなさい!!」

  

 あまりに必死になってたせいか、視界が狭まって誰かとぶつかってすっ転んだ。


 「うわいったー。これ骨折れたわー、てめー何してくれてんだ?」


 げっ、よりによってぶつかったらいけないタイプにぶつかった。なんで朝っぱらからこんなのがいるんだよ。


 やばい、東郷たちは先行っちゃった。


 「てめー天正第二か?って事は俺の後輩って訳だ。ならまずは先輩に出すもんあるだろ?」


 「い、いえ・・・ごめんなさい」


 「ぁあ?何言ってんの?金に決まってんだろ金によー。先輩への挨拶代と今の慰謝料払えやゴラ!!」


 ひーっ!!これまで恫喝なんてされた事ないのにー!!なんで私ってこうも金をたかられるんだ!?


 「が、学校にお金なんて持って来てないですよ!!」


 「はー?なら仕方ねーなー。ガキっちぃけどよ、そこそこ上玉の部類じゃん?そんならその身体で払って貰うわ。あ、この事バラしたら、お前んとこの家族全員海に沈めてやるからな?」


 え?なんか仲間たちがぞろぞろと来た。や、やば・・・こいつよりによって1番やばい部類の人間だ。その前に私が上玉って冗談だろ?


 「ミツキ遅い!!周回遅れ・・・って、何やってんの?」


 「え、あ・・・東郷さん。その・・・ぶつかって」


 町内コース2週目に入ってた東郷がもう来た。東郷ならこの状況なんとかなるかも。割とあちこちに顔が効くっぽいし。


 「ぁあ?なに、お友達?」

  

 「誰がこんな奴とお友達だ!!けど、一応部員なんですけどー、勝手な事しないでくれますー?あ、つーかミツキちゃんと謝ったんだろーな?」


 「あ、謝りました!!」


 「ならよし。で?他に何か言うことある?私たち朝練中なんですけどー」


 東郷、味方になるとなんて頼もしい・・・


 「あー、俺そいつとぶつかってケガしちまったからよー。慰謝料払えってんだけど、そいつ払おうとしねーんだよ」


 「あぁ成る程ー、無理無理こいつ金なんてねーもん。相手が悪かったわねー。当たり屋ご苦労さーん。ほら行くよ」


 東郷が私の手を引いてここを離れようとした。逃げるのが懸命って判断したんだ。よし、逃げ・・・


 「っ!!東郷さん!!」


 「んぐっ!!な、離し・・・ぐぐっ!!」


 東郷は突然背後から男に羽交い締めにされ。口を抑えられた。


 「お前、東郷 ららだろ?お前のお父ちゃん自衛隊の偉い人なんだって?なら金持ってるもんな。なら、ターゲットはお前に変更だ」


 こいつら・・・まさか誘拐犯!?なんでこんな町に!!


 「ふん!!」

 「ぐはっ!!」


 東郷の膝が男のみぞおちに入った。


 「私をただの自衛官の小娘だって舐めないでよ!?ミツキさっさと立て!!逃げるよ!!」


 「はい!!」


 私は条件反射的に立ち上がった。


 「くっ・・・あんま調子乗ってんじゃねーぞゴルァ!!」

  

 男は電気バトンを取り出した。あれは、前に軽音が持っていたやつと同じ・・・


 「ちょっ!!それは反則でしょ!?」


 「反則だー?知らねーなそんな言葉。世の中反則した方が有利なんだよ」


 「・・・・・っ!!!」

 ーーーバァァァァンッ!!ーーー

 

 突然雷鳴のような音が響いた。やったのは私だ、持っていた銃をアイツに向かって撃った。そしたら電撃が発射されてあの男に当たった。


 「がっ!!はっ!!!て、てめ・・・なんだそれ、エアガン・・・じゃねーのか!?」


 「そんなの知らない!!けど効いた!!逃げるなら今!!」


 私は東郷の手を引いて逃げた。学校まで逃げろ!!呼吸がしづらくなってもまずは走れ!!走り切れば助かるんだからそれまでくらいに辛抱出来るだろ!!


 「くそ!!逃すな!!絶対に捕まえろ!!」


 私は逃げる。


 「ミツキ!!前に!!」

 「っ!!」


 私は左の道へ。


 「うそ!!こっちにも!!」

 「っっっ!!!」


 今度は右に。


 「また!!」

 「っっっ!!クソッタレやろー!!」


 いい加減頭に来た。どこからでも現れやがって。私はもう一度撃とうとした。が、


 「それなきゃ意味ねーんだろ?」


 横から腕を掴まれて引き金が引けない。そして無理矢理奪われた。


 「なんだこりゃ、ただのおもちゃじゃねーか。どんなカラクリだ?まぁいいや、鬼ごっこはおしまいだ。そろそろ騒ぎを聞きつけてサツも動いちまう。ここが潮時だからさっさと来い。ま、恨むなら自分の運命でも恨んでな」


 本当に万事休す・・・


 こんな所で?嫌だ、絶対に!


 私たちはそんな覚悟とは裏腹にひょいと担がれた。叩いてもビクともしない。


 「おい」

 「あ?」


 ーーースパァァァァンッ!!!ーーー


 「ひぎゃっ!?」


 小気味の良い音が鳴り響いて私は地面に落ちた。ついでに銃も落ちて来た。


 「っつ・・・なんだてめ!」

 「突き!!」


 「がほっ!!」


 今のは竹刀?竹刀で男はみぞおちを突かれて呼吸困難になってうずくまった。


 「ちっ、朝練のロードワークのルート変えてみたらこいつは一体なんだ?ほんと、ムカつく・・・なんで俺がお前なんかを助ける羽目になんだ?ミツキ」


 「霧島 京也・・・」


 やったのは霧島だ。霧島は私は地面に落としたけど、東郷は綺麗にお姫様抱っこしてる。東郷は目がハートになってさっきまでの威勢は消えて完全にお姫様になった。


 「きゃー!!京也くーん!!ありがとー!!怖かったよー!!」


 「ひっつくならら・・・にしてもあんたら、ミツキ拐うなんて趣味わりーな。俺としてはいない方がせいせいするんだが・・・そんなこいつでも一応俺のいる学校の生徒でクラスにいる一員だ。そいつに手を出してただで済むと思うなよ?」


 「あんた確か、剣道部主将だったな。確かに強えーかもな。が、たった1人でどうやって戦う?」


 霧島は竹刀袋から木刀を取り出した。


 「この木刀、一本2000円だったんだ。安いだろ?けど、1年から使ってたから割と馴染み深いんだよな。それを、てめーらぶちのめすのに使うんだ。あームカつくな・・・来るならさっさと来やがれ、複数相手だろうが知ったこっちゃねーよ」


 霧島がケンカしたところは見た事ない。というか私はこいつをそんなに知らない。だって剣道部だって事も主将だって事も今知ったくらいだ。

 

 けど、そんな私にだって分かる。剣道とケンカは全くの別物。ケンカの仕方が分からなきゃいくら強くても意味ない。霧島はそれを分かってて尚私たちの前に立ってる。


 「くたばれや!!」


 一撃目は霧島が完全に見切ってる。けど、それを捌いても他が一斉に来る。私に出来る事・・・援護。撃て、あいつが嫌な奴でもあいつは私を助けた。その恩は返せ!ビビってんじゃない!!


 「まず1人目・・・んっ!?」


 その時だった、霧島は突然攻撃をやめて後ろに飛んだ。その瞬間あの男の電気バトンが真っ二つに切れた。


 「な、に?」


 「あ、すまーん。そのケンカ俺が買うわ。だいじょーぶだって。ポリスの馬鹿共は別の事件でしばらくは来ねーから、俺とやろうぜ?なぁ、道山会系の兄ちゃんたちよ」


 「馬喰 一兆?」


 切ったのは一兆君だ。


 「おうミッちゃんおはよーさーん。にしてもほんと不思議な奴だなあんた。よりによってなんで巻き込まれたのがあんたなんだろうな?」


 「知らないよ」


 この空気でこの軽いノリ・・・


 「ま、いいや。目撃者の運命ってやつなんだろうなきっと。それより霧島、ケンカはあんたの家じゃ御法度だろ?正当防衛にせよなんにせよ、あのクソ親父はそういうの徹底的に否定する野郎だ。ここは俺に任せて彼女と学校までランデブーしてきなよ」

 

 「え、あ、あんたが私たちを助けてくれるってこと?」


 東郷が少したじろぎながら一兆に聞く。


 「別にいーじゃん。貸しって訳でもねーし。それにちと俺が実験したくてな?まーなんだ、俺が巻き込む形になるわけだからわりー」


 謝る気ゼロなこのノリ。何しようとしてるんだ?私こいつあまり読めないんだよな。


 「さーて、先輩たち待たせるのもなんだから、そろそろやるか。あー、安心しなよ。俺の武器は使わねーからさ、ほんじゃ一丁隙ありー」


 「なぁっ!?」


 叫んだのは私だ。明らかにこれからやりますみたいな空気感になる前に先制攻撃した。一兆の飛び膝蹴りは男の顔面にクリーンヒット。


 「ぼーっと突っ立ってんのが悪いの。んでおい、なに倒れそうになってんの?俺の武器はお前らなんかに使うの勿体ねーからさ、お前俺の武器な?」


 「うっ・・・え?」


 「せーの、どーん!」


 一兆は男の腕を無理矢理掴むとぶん回して投げ飛ばした。


 「んぎゃーっ!!」


 「んじゃ次いーくーぞー。ケンカってのはなぁ、死なない程度に再起不能にするのが醍醐味なんだよ。めちゃくちゃに殴ったり蹴ったりはつまんねーのさ。1番いたーい所にめがけて・・・ほい!!」


 で、電柱に顔面ぶつけられて男の歯が折れた。


 「あははは!!前歯取れてやんのー!!ケラケラケラケラ!」


 「ぐっあっ・・・」


 無邪気に笑う一兆・・・怖・・・。一兆は一方的に敵を蹂躙していく。


 「み、ミツキあんた・・・馬喰 一兆と知り合いだったの?」


 そんな中、東郷が怯えた声で私に聞いた。


 「し、知り合いって言ってもついこの間だ知ったばかりなんだけど・・・」


 「だとしても、あいつにコネがあるって相当じゃないの。京也君のパパ相手するよりももっとヤバい奴なのよ?」


 「そ、そうなの?私にはそんなに悪い人には見えないけど・・・」


 「いや、あれの何処が善人よ?」


 確かに・・・悪の親玉そのものにしか見えない。


 「そ、そうだね・・・でも、今やられてる人も相当悪い人たちだよ。悪対悪って展開だね」


 「何言ってんの?」


 「あ、いやごめん」


 すまん、この構図は正にそれだと思って思わず。


 「さーて、そろそろぶちのめすのも飽きた所だ。そろそろ来るか?」


 来る?そもそも一兆は何を実験・・・まさか。


 「恐怖の前にバケモノは現れる・・・恐怖が強ければ強い程、そこには脅威が存在しているからな」


 「ん?なんだ・・・」


 『ぐるるるるぅぅぅ・・・』


 霧島が真っ先に反応を示した。霧島の視線に私も合わせる。そこには一匹のバケモノがいた。


 「な、なんだこいつ・・・動物、なのか?」


 あの私を襲った男も目の前に現れた異形に恐怖してる。


 「さぁ?あんたんとこのボスにでも聞けば?道山 隆二って奴だ。知ってんだろ?あいつは今何処にいる?教えねーのなら、お前こいつのエサな?」


 「か、会長だと?お、俺が知る訳無いだろ」


 「ほーん、ならなんであんたここに来た?俺たちがいるこの町で、何をしようとしてた?人攫いってのはついでなんだろ?いや、本命はいる筈だ、攫うべき対象がな・・・キャロライン ガイア。てめーらの狙いはあいつか?」


 「なっ!?」


 「図星か・・・って事は、道山会にもう道山 隆二はいねーって事になるな。そいつがまだいたんなら、道山会はこんなクソみてーな組織になってねーだろうからな」


 「お前、なんなんだ!?」

  

 「馬喰 一兆でーす。そんな事よりほれ、あー!くーわーれーちーまーうーぜー!?」


 「う、うわぁぁっ!!!」


 『ぐぅぁあああっ!!』


 バケモノが男めがけて襲いかかった。


 「なんて」


 その次の瞬間、バケモノの首が取れて地面に落ちた。


 「連れたのは一匹か。やっぱり小学校から分散させんのはムズイなぁ〜。まいっか、零羅ならなんとかすんだろ。ってなわけでてっしゅー!今日の公演はここまででーす!道山会のてめーらも、さっさと帰りな。ここは俺が仕切ってる町の一つだ。これ以上俺の町で勝手な真似してみろ?実験道具じゃ済ませねーからな?」

  

 どさ。


 一兆は男を地面に捨てた。


 「い、一兆君!!聞きたい事ある!!小学校ってどういう事!?三日月に何かあったの!?」


 今の話の流れ、あのバケモノは小学校にも現れた。そう言った風にしか聞こえない。


 「あぁ、三日月んとこに多分そうだな・・・俺の予想だとあと三十分くらいで、あのバケモノの本隊は小学校に現れるぜ」


 「そ、そんな!!なら行かないと!!」


 いまするべき事は、小学校に!!


 「いや、零羅がいるから問題はねーよ。あいつ、わけわからん事しようとしてたしな。ま、要するにだ。敵さんの目的はこのバケモノっつー脅威を世間に一気に知らしめる事だ。三上も俺もそんな日常送りたくねーからな、んで対策だ。


 あんたら、変身ヒーロー敵な作品は見るか?俺はあんま見ねーけど、それをこの現実でやらかそうぜって話だ。敵の襲撃をパフォーマンスに変えちまう。三上とシャルロットの発案だ。変身ヒーローにしようぜとか事をややこしくしたのはあの麗沢(でぶ)だけどな」


 あのバケモノをパフォーマンス扱いするって?とんでもない事するなあの人。


 「んじゃな。あ、東郷 ららだっけ?あんたらの部員、部室にいたぜ?てか、そろそろ遅刻じゃね?」


 「・・・あっ!?」


 「ここでの事は聞かなかった事にしといてなー」


 一兆は手をひらひらとさせながら去った。


 「ちっ・・・ミツキてめぇ、ほんと人が悪いな。まぁいいさ、俺は何にも聞かねーから。知らねーからな。行くぞらら」


 「あ、まってー!」

 

 「・・・あ!遅刻!!って!!身体重たっ!!」


 ひー!!なんでぇ!?足が、足が動かん!!


 私だけ遅刻した。

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