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私の入浴タイム

 大浴場の脱衣所に行くとネーちゃんがタオル持ってすっぽんぽんのまま待ってた。


 「ほら!!お湯が冷めちゃうネ!」

  

 「温泉は冷めないと思うけど・・・」


 さてと私も脱いでって・・・ん?


 すん・・・


 「「あれ?先生いつのまに脱ぎました?」」


 グレイシア先生を見たらいつのまにか脱いでた。にしても、スタイル良いなぁ・・・でかい。何食ったらこうなる?あ、昼間の蜂の子?いや無理。


 「普通に・・・あと先生じゃなくていいから」


 まぁ、それはそうとして・・・一つ気になった事がある。元々右目に眼帯はしてたんだけど。


 「グレイシアさん・・・左腕、無いんですか?」


 グレイシア先生の左腕が無い。義手だったのかな?いや、でも置いてないな。


 「うん、昔ちょっと無茶して無くした。けど問題ないから、こうすれば良い・・・」


 ーーーバキィン!!ーーー


 グレイシア先生の左肩から氷の腕が生えた。これも魔法?


 「普段はこれに手袋付けて生活してる。けどお風呂入る時は冷ましちゃうから外してる」


 グレイシア先生から氷の左腕が消えた。


 「魔法ってなんでもありなのネ・・・」


 「レイはここまで扱うのは無理だって言ってた。その私も、昔は下手でなんでもかんでも凍らせちゃってたから。なら行く?」


 グレイシア先生は髪を頭の上で纏めた。なら行きますか。ガララっとドアを開けると外の景色からは想像出来ないような巨大な浴場が眼前に現れた。こりゃプールか?って思うレベルだ。しかも、私たち以外誰もいない。温泉の色はさっき三日月が言ってたみたいに乳白色だ。


 「おーっす!!お背中洗いまっせー!!」


 「わっ!飯綱ちゃん!!?」


 後ろから飯綱が現れた。三助ってやつ?甚兵衛姿が異様に似合ってる。


 「夜ご飯の準備できたからさ、お母ちゃんがお客さんの背中でも流して来てやーって。それに、グレイシアは一人で入ると一瞬で出ちゃうんだ。だから礼兄ちゃんにちゃんと洗ってやってって言われてるのさね」


 先生、ちゃんと身体は洗いましょう。と言うかなんでそれであんなに髪さらっさらで肌もツヤッツヤなの?


 「なら、ミツキお姉ちゃんから洗おっか。そこ座って〜」


 まずは頭から・・・ぬっ!?飯綱・・・洗うの上手い!!この若干小さい手が頭のツボに綺麗に入る・・・


 「かゆいとこない〜?」


 「ほぇ〜・・・大丈夫で〜す」


 「んお?」


 気持ち良かったー・・・背中も普段洗えたかどうか分からないとこも丁寧にやってくれた。


 「ほいじゃ次ネーチャンお姉ちゃんね〜・・・って言いにくっ!!」


 「だからおねーちゃんって呼んでっていつも言ってるヨー!って!!めちゃ気持ちいい!!何コレ!?」


 ネーちゃんも満面の笑みだ。


 「あー、飯綱そっちにいるのー?凄いでしょ飯綱のジャンプー」


 三上君の声だ。反対側も他のお客さんいないのかな?


 「おいらの動体視力とこのゴッドハンドがあれば、ノミ一匹シラミ一つ逃さないよぉ!!」


 凄い特技だな。整体師とか向いてるんじゃないかしら。 

 

 「ほいじゃら次グレイシアって・・・」


 「ん?洗い終わったから・・・」


 グレイシア先生はお湯をバッシャーって被ってる。


 「またー?礼兄ちゃーん!またグレイシアがー!!」


 「こらっ!!グレイシア!!いつもちゃんと洗いなさいって毎日言ってるでしょうが!!まぁ仕方ない!せめて百は数えて入りなさいよ!?」


 「・・・ちっ」


 どこかのお母さんか?三上君は・・・てか今舌打ちした?


 「うーん、次はどうしよっか・・・あそうだ!!みかつき〜!!背中流してやるよ〜!!」


 あ、飯綱が露天風呂の方から男性浴場に向かった。


 「ぎゃーっ!!飯綱おまっ!!人の裸じっくり見んじゃねー!!てか三日月だー!!」


 「んだよ〜、減るもんじゃなし〜」


 会話だけ聞くとただの男子小学生のやり取りだ。


 さてと、身体洗ったし、温泉に浸かるとしよう。


 そう言えばガチの天然温泉って入った事ないかも。いや、あるかもしれないけど覚えてない。風呂は風呂って感覚だったからな。こんな入浴剤みたいな色の温泉は人生初めてだ。


 これは・・・なんか、肌がスベスベする。乳液みたいなしっとり感を感じる・・・すげぇ。しかも、ただのお湯と違って体の芯の方から熱くなってくる感覚がある。


 「ミッちゃん!!露天風呂行こっ!!ネ!!」

 

 「え、混浴なんでしょ?」


 ネーちゃんが嬉しそうにやって来た。外誰かいるかもしれないから恥ずかしいな。


 「さっきチラッと見て来たけど誰もいなかったネ!それにサ!!なんか外の出入り口にゆあみぎ?っての置いてあったヨ。だから大丈夫ネ!!」


 それなら・・・


 「グレイシアさんも行きましょうよ」


 「仕方ない、あまり早く出るとレイに叱られるし、外で入るのは懐かしいから嫌いじゃない」


 私たちは露天風呂へと向かう。湯浴み着ってこれの事か。確かにまぁ、これならそこまで恥ずかしくないか。けど、それでも先生のスタイルは隠しきれない。


 露天風呂・・・あれ?京都って温泉有名だっけ?あのお湯がブワーって吹き出すとことかあるのって京都だっけ?いや、地理が赤点ギリギリの私でも、そこと京都は別ってのは知ってる。けどこれは広すぎる。もはや池、いや湖と言っても過言じゃ無い。


 「わー・・・レビューで見たけど、ほんと広いね・・・」


 あ、三上君だ。体つき、あんなにめちゃくちゃな動きしてたのに、そこまで筋肉質じゃないんだ。意外・・・


 「ここさー、お母ちゃんが幻術で空間を捻じ曲げたかなんかで作ったらしくてさ、お父ちゃんが本来の姿でも全身浸かれるサイズにしたらこうなったんだって」


 しれっと本来の姿とか言ったけど、あの鞍馬って人・・・やっぱり九尾の妖狐って感じなのか。


 「草津に西の河原温泉ってあったよな。あそこもバカ広いみてーだから一回行ってみてーなぁ」


 三日月お前ほんと温泉に詳しいな・・・何故その見た目で趣味が渋い?


 「レイは行った事あるの?」


 「西の河原?あるよ。でも草津温泉は湯畑が絶景かなぁ、って、グレイシア珍しいね。そっちから温泉の話するなんて」


 「たまにはいいと思ったから。それより・・・三日月君顔真っ赤になったけど」


 「シュー・・・」


 あっ、あー・・・流石に反抗期入って思春期入り始めにグレイシア先生はきついよな。三日月は平静を装おうとしてるが、ダメだな。茹タコみたいになってる。


 「ネー!!あっちに洞窟風呂あったヨ!!後で行こーネ!!」


 ネーちゃん、どこ行ったと思ったら探検してた。


 「お母ちゃん更に増やしたのね。ほいじゃおいらは次の準備してくるさね!」


 「お疲れー」


 私は飯綱にお礼を言って見送った。にしても、三日月どうしよう。顔真っ赤で目がぐるぐる、珍しくギャグ顔晒してる。あの生意気が・・・ふふ、写真撮りたい・・・

  

 「三日月ー、おーい」


 「はっ!?俺は!正気に!戻った!!」


 起きた。大丈夫そうだな。


 「よーし!!起きた記念に弟クンよ!!洞窟風呂行こうネ!!」


 「なんで俺なんだよ!バカ姉連れてけっ!!」


 ネーちゃん時々三日月にちょっかいかけるよね。


 「だって面白そうだもノ。てな訳で!!ネーチャン探検隊出動するネ!!」


 「行ってらー」


 私と三上君とグレイシア先生は一緒にのっぺり浸かった。


 「やっぱ温泉は良いねー。肩こりがほぐれる」


 三上君は首をゴキゴキ鳴らしてる。おっさんか?


 ・


 ・


 ・


 「さて、私は出ようかな?ネーちゃーん!!私そろそろ出るけどー!」


 私はネーちゃんに呼びかけた。


 「あー!ワタシもあともうちょっとしたら行くネー!結構面白いのヨこっちー」


 「俺もあともうちょっとで行くー!」


 三日月のやつ結構仲良くやってんのか、てか何があんだろ。明日朝風呂行って見てみようかな?


 「僕もそろそろ行くから、湯あたりに注意してねー!」


 私たちは風呂から上がった。そして着替えて、やはり銭湯だろうとお風呂上がりは牛乳が飲みたい。自販機を発見。今日は・・・1番普通の低温殺菌牛乳!!


 うむ、美味い。


 で、飲み終わった頃に三上君が出て来た。


 「あ、自販機あった。僕は・・・コーヒー牛乳で行こう。グレイシアは?」


 「・・・飲むヨーグルト」


 三上君が買うのね。牛乳飲み終わってしばらくしたらネーちゃんと三日月が出て来た。


 「ほっくほく♬ぽっかぽっか♩最高ネー♫」


 凄いご機嫌だな。


 「ネーちゃん、奥何があったの?」


 私はネーちゃんに聞いた。けど答えたのは三日月だ。


 「洞窟風呂。入り口は狭ぇんだけど、中は思いの外すんげー広くてさ、なんか凄かった」


 語彙力低下が著しい。けど絶景だったっぽいな。明日行こ。


 「サ!お部屋戻ったら夕食ヨ!!」 


 ・


 ・


 ・


 てな訳でいざ夕食、食事は部屋に運ばれてくるっぽい。


 「失礼致しますー、夕食お待ち致しました」


 玉藻さんがやって来た。飯綱も一緒だ。


 「ほい、右からこれ刺身湯葉ね。んでこれが生麩の田楽。この味噌付けると美味しいよ〜」


 飯綱、相変わらずフレンドリーだけど、説明が凄いわかりやすい。


 「飯綱、昔からよう食べるからかなぁ、料理名なんか一発で覚えてもうたわ。これならうちで雇って給料出してもええレベルやなぁ。まぁもうちょい口調なんとかせぇへんといかんのやけど、うちもこの喋りかたやしなぁ」


 「やったぁ!お小遣いだぁ!礼兄ちゃんがいつもちゃんと料理に名前付けてくれたおかげさね!だからなんとなく分かるのさ!」


 飯綱はえっへんと鼻を伸ばした。


 「三上はん、ようここまで育ててくれはったわ。改めて礼言わなきゃあかんな。それにさっきも、三上はんの料理絶賛してはったわ。農耕の神の子に料理を絶賛されるってのは凄い事なんやで?今度一度食べてみたいわぁ」


 「え!さすがにこの料理には及びませんよ!?」


 三上君は照れ笑いしてる。珍しいな。


 「そぉ?礼兄ちゃんの料理、お母ちゃんと同じくらい好きだけどなぁ。あ!麗沢のあんちゃんのハンバーガーはあれは別の意味で最高だよね!なんせ体力全回復のハンバーガーだもの!」


 麗沢、あいつ料理できるんだ。しかも、ハンバーガーって・・・確かに似合う。食べる姿が・・・(へくしょいのほー!)


 またなんか聞こえた気がする。てか体力全回復ってなんだ?薬草とかポーシ◯ン的なの?


 「へー、それも食べて見たいなぁ」


 にしても、美味しいなぁ。野菜嫌いな私でも、この京野菜の天ぷらってのは美味しく感じる。鮮度ってのが良いんだろうな。


 てな訳で、最後にお玉さん印のオリジナルプリンを食べて完食。大変濃厚な時間でございました。


 その後私たちは用意周到な三上君がトランプやらUNOやらを持って来てくれてたのでそれに興じた。いやぁ、スマホばっかり眺めてるのって良くないね。たまにはこういう事もしないと。と、いつもスマホばかり眺めてる現代っ子はそう感じました。


 



 翌朝


 私はふと目が覚めた。朝5時・・・この私がこんな時間に目覚めるとは・・・


 みんな寝てるな、どうしよ?あ、そうだ。大浴場はもう開いてるって言ってたっけ。1番風呂にでも行こうかな?昨日ネーちゃんが言ってた洞窟風呂気になるし。私は置き手紙して大浴場に向かった。


 「あ、やっぱり誰もいない」


 ここ、私たち以外に出会わない気がする。ちゃんと他のお客さんいるよね?まぁいいや、洞窟風呂は・・・あ、これか。確かに人1人通れるかぐらいの入り口だ。


 「わ、広い・・・」


 中は巨大なドーム状の洞窟風呂だった。水面の光が反射して天井に映し出されてる。成る程、確かにこれは語彙力失うわ。永遠に見てられる景色だ。


 「にしても、こんなのどうやって作ったんだ?」


 率直に出た感想は寧ろこっちだった。


 「うちの能力や。空間歪曲や言うてな?本来狭い筈の空間も、広いって錯覚させる事でこないな風にしとるんよ。この洞窟自体は旦那に掘って作ってもらったんやけどな。どっかの創造神さんみたく、いきなりは作れへんわ」


 玉藻さんも朝風呂か・・・やっぱり、こっちもスタイル抜群だ。男子でもないのに私を悩殺する気か?そんな私にお構いなしに、横に座られた。


 「ミツキはんと三日月はんの事、飯綱から少しだけ聞いたわ。いきなりこないな事巻き込まれてまって、辛くあらへん?」


 あ、真面目な話だ。流石に真面目に返さないとな。


 「いや、正直言うとそこまで辛いって思ってないんですよ。私、これまでほんと周りに対して興味がなかった。去年のクラスも、1年間一緒にいたにも関わらず私は、周りと関わりたくなくて、嫌な奴以外誰も覚えてなかった。なんなら、学校の名前も自分が住んでる住所もしっかり覚えてないようなやつだったんです。


 けど、桜蘭さんとの出会いで何もかも変わった。ネーちゃんに出会って、三上君たちと出会って・・・これまで興味があるとしたらアニメの続きぐらいだったのに・・・今は、もっとみんなを知りたいって思ってしまってる。嫌いな奴の事だって、もっも知らなきゃいけないって思い始めてる。だからかな・・・確かに今も訳わからない事の方が多いけど、これまでに比べたら楽しいの方が上に来てるんです」


 私にしてはやたら饒舌に喋れたな。


 「そっか、ほなら良かった。なんやずっと小難しい顔してはったから心配やったんや」


 「眉間に皺寄ってるのはいつもの事ですよ」


 「ふふ、そう言う物事を客観的に見れるん、ちょいと三上はんと似てはりますね。ほなら、うちはそろそろ朝食の準備や。またよーさん作るから楽しみにしててや〜」


 「そうですね。楽しみにしてます」


 さて、私ももうちょっと浸かってから上がるとしよう。

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