私の旅行先 その2
「にしても飯綱・・・」
鞍馬さんがじっと飯綱を見つめた。
「大きくなったな・・・横に」
「ふぐぅあっ!!!!これ本日三回目よぉっ!?」
みんなして飯綱の体型いじる・・・そこまで太っては見えないけどな。
「ん〜、ここまで言われるって事はやっぱり、太って来てるのかなぁ・・・ここ最近フォックスやたら食べるし」
三上君はなんか本気で悩みだした。
「礼兄ちゃんまでぇ・・・むー!もうちょっとみんなデリカシーってのをだねぇ!!おいらだってレディーよぉっ!?もうちょっと言い方ってもんがあるでしょうよ!!もー!!」
あ、飯綱がとうとう堪忍袋の緒が切れた。
「・・・あっ!!飯綱ってそう言えば女子か!!」
三日月・・・言われた手前それ言うか?
「ぐぬぬ!!こらみかつきー!!おいらにゃ色気もクソもねーってかー!?」
「わー!すまーん!!だっていつもサッカー混じるし!一人称おいらだしさ!!てか三日月だー!!」
ふっ・・・いつも生意気な三日月が慌ててる。ぷーくすくす・・・私は大人気なく弟の失態を心の中で笑っていた。
「フォックス?僕も悪かったけど、騒いで周りの迷惑にはしないでね?」
その時、三上君がニッコニコ笑顔で飯綱を止めた。三上君って多分、いや絶対ブチ切れたら笑うタイプの人だ。
「「あ、はい。すんません・・・」」
圧にやられたのか、飯綱も三日月も謝った。
「あーい変わらず元気そうでよかったじゃーん。んじゃ、わたしはここでしつれー。他のお客さんとこ行かなきゃいけないしー。じゃ、鞍馬の旦那後ヨロシクー」
白銀はすすーっと他のお客さんとこに向かった。
「さてと・・・話は聞いている。天照を探しているんだったな」
話はここで本題に入った。
「はい。永零はあくまでどこまで行っても人間。それ以上になるつもりはない。なら、それを出し抜ける存在がいるとしたら神様だ。けど、ただの神様じゃだめ。最高神と呼べる存在じゃないとね」
「そういう事か。性格を除けば天照は凄まじい能力を持っている。だが、仲間になってくれるかは分からんぞ?たとえお前の能力を持ってしてもだ」
「ですよね。けど、会ってみない事には分からない。世の中、やるやらないじゃ大違いですよ」
「だな・・・なら三上、お前の予想では彼女は何処にいると思う?」
突然質問?そんなの分かるわけ無いだろ・・・
「うーん、色々考えてはみたんですけど伊勢か、出雲か、とりあえず伊勢には足は運びましたが彼女は感じませんでしたね」
目星はあったんかい。
「あぁ、今彼女はそこにいない。それに彼女も私たち同様神の本来力を失っている。力を感じないのはそのせいかもな。だがまぁ、彼女だけは使おうと思えば使える術は知っているみたいだが。三上、日本神話には詳しいか?」
「多少は、って感じですけど」
「今あいつは相当拗ねてるぞと言えば分かるか?」
「・・・あ、あ〜。って事は彼女はまたやってるんですか?」
三上君が珍しくジト目になった。
三上君が成る程と手を叩いた。いや、全然分からんぞ?
「またどころか、ここ数千年で何回やってるんだという話だ。しかも、今回は何百年も引きずってる。にしても、あいつはアレが相当気に入ってるみたいでな今はそっちに行った」
話の内容で分かる事・・・最高神って筈の天照から若干私と同じ匂いを感じた。
「って事は戸隠・・・あの岩、そんなに好きなんですか?」
「なんでもあの岩がいいらしい。そして、あいつも私たちと同じく普段は人間として今は生きている筈だ。そのおかげか、ある程度の場所は把握出来てはいるが、詳しい住処までは知らん」
「・・・いや、分かったかもしれない」
うん、私は全然分からん。
「どうやら運命の方が巡り合うように仕向けてるのかもね。僕が天正第二中学に入学する事になった理由もそこに行き着くのかもしれない」
ヒソヒソ
(三上君ってさ、なんかたまにエスパーみたいなとこあるよね?)
私はネーちゃんにこっそり聞いてみた。
コソコソ
(だよネ。今の会話で何が分かったヨ?ちんぷんかんぷんネ)
「ふふ、まぁこれは僕の予測でしかないよミツキさん。とはいえ確証はないけど、可能性は十分にあるんだ。天照に関しては多分、ミツキさんとネーチャンさんも出会う事になるかもしれないからね。話しておくよ」
げ、聞かれてた。地獄耳?てか、私たち・・・出会っちゃうの?この国の最高神に・・・
「来月、二泊三日で林間学校あるでしょ?場所は覚えてる?」
「ん?長野の山ネ。ここくらいならいいけド、ガチ登山はいやネー」
同感。そういえば休み明け班決めだったな。どうかネーちゃんと一緒の班になれますように。霧島は出来るだけ遠くになりますように。
「長野は長野だけど、詳しくは戸隠って所の近くなんだ。まあそこに行く予定は学校には無いんだけどね。簡単に言うと、その昔天照がスサノオって神様の悪さに耐えかねて、とある岩で家の扉塞いじゃって引きこもっちゃったんだ。それをなんやかんやでそいやっ!!て岩をどけて飛んでったのが戸隠にあるんだって」
日本神話そんな詳しくないけど、天照なにやっとんねん。これだから日本って引きこもり多いのか?
「日本の神話ってぶっ飛んでんネー」
「だがこれ、実際に起こった事なのだ。一部創作は入ってるが、世の中の神話とは実際に起きた事をベースに、誇張して描かれているものが多い。あの頃は神も存在していたからな。世界のルールもめちゃくちゃになっている所もあったのだ・・・」
鞍馬さんは腕を組んでしみじみと語る。
「ともかく、僕たちは林間学校で天照を探さなきゃいけないみたいだ。彼女ならば永零への対抗策が打てる筈。ミツキさん、ネーチャンさん。協力お願い出来るかな?」
「「もちろんだよ」」
ハモった。
私は決めたんだ。目撃者がどういうのから分からないけど私は見届けたい。この戦いの行く末、そして結末を。
「そしてグレイシアもお願い。班決めでちょっと裏工作頼むよ」
「分かってる。既に調整はやってあるから」
グレイシア先生がクールに言い放つ。なんかこの2人、ただ一緒に住んでるって割には信頼関係が重たく見えるのは私の気のせい?
「彼女の詳しい話はまた夜する事にしよう。そっちの方が都合がいい。君らは観光でココに来てるのだろ?せっかく来てるのだ、遊んでいきたまえ。私は玉藻の手伝いでもしてくるよ」
鞍馬さんは席を立った。
「あ!おいらもお手伝いしたい!!」
飯綱がぴょーんと鞍馬さんの方に飛ぶ。あ、そうか。飯綱にとっては何百年振りの再会なんだっけ。一緒にいたいのか。
「ね!良いでしょぉ?」
「いや、流石にいきなり手伝いと言われても・・・玉藻の旅館、それなりにネットの評価が高いからな。下手な事は」
鞍馬さんはどうしたもんかと悩んでる。そういえば気になって旅館のレビューを来る前に見てたけど、星4.5ってかなり評価高かったな。
「大丈夫だよぉ!せっかく会えたんだからさぁ!!何かしたい!!」
「うーむ。三上君、君はどう思う?」
「飯綱は多分、自分の成長を見てもらいたいんでしょ?なら、僕から言える事はないよ。鞍馬さん、飯綱は確かに普段はぽやーんとしてるし、適当なとこはありますけど・・・」
「礼兄ちゃーん。それ褒めてるー?」
「けどね、人への思いやりはかなりのものですよ。家の手伝いもやりますし、意外と器用なんですよ・・・むしろ是非使ってみてあげて下さい。折角の再会なんですから、ここは親子水入らずですよ」
三上君がニヤリと笑う。あ、これ親バカの顔だ。
「お前のその目・・・分かった。なら行くか?飯綱」
「おうともさ!!礼兄ちゃーん!!また後でねー!!」
鞍馬と飯綱は2人一緒に店を出て行った。うん、これは親子に見えるな。三上君とはやはり兄妹みたいに見える。
「飯綱様、御立派になられました・・・さて、拙者たちはもう少し京都を案内して周りましょう」
私も抹茶パフェ堪能したし、まだ昼の2時くらいだ。旅館行くには早いよね。
私たちは、赤影の案内の元京都の街を観てまわった。
そして夕方、駅近くから裏路地を通っていくとまたあの旅館へとたどり着いた。不思議だなぁ。
「ようこそお越しくだはりました。改めて、当旅館の女将やっとります玉藻言います。よろしゅうお願いいたします」
今度の玉藻さんはさっきの割烹着じゃなくてキリッとした着物姿で玄関にいた。改めて見るとめっちゃ美人だなぁ・・・
「では、拙者はこちらの仕事に入る。これにてお暇いたす」
観光案内終わった赤影はすっとこの場から消えた。マジで忍者だな・・・
「赤、ご苦労やったな。ほな、客室案内いたしましょか」
この旅館はオール和室。趣がある良い部屋だ。
「外どんなんだ?あ、路地裏?」
三日月が窓の障子を開け見えた景色は特に変わり映えのしない路地裏だ。
「ふふ、すまへんな。ここそこまでええ立地やないもんやから、景色はそこまでや。せやけど、料理と温泉には自信あるんよ。温泉なんかはうちの能力で日替わり源泉や。今日は白骨温泉から引いて来たんでな、すべすべもっちり間違いなしや」
玉藻さんの幻術ってどういう能力だよ。山の上からも駅前からもここに辿り着くし、空間を捻じ曲げてる的な感じか?すんごいな。
「あ、因みにな?今日は温泉混浴にしてあるんよ。昔、ニヒルはんの友人の隆二はんって方がな?男湯と女湯の壁壊してもうてな、いっその事行き来できるようにしたんや」
なに温泉ネタのテンプレートみたいなことしてるんだ。覗きは普通に犯罪だろうが。
「にゃっふー!合法覗き放題ネ!!良かったネー弟くーん!」
「なんで俺なんだよ!!」
ネーちゃんが三日月をからかってる。
「んー?三上君は、見た目アレだけど、なんか慣れてそうじゃんネ。だってグレイシア先生と一つ屋根の下ヨ?ならからかうのは弟君しかいないネ」
「いやからかわなくて良いから」
「にゃふふふふ。ワタシに興味なくてもサ、グレイシア先生もいるヨー?」
「だから行かねーよ!!」
・・・ネーちゃん、むしろグレイシア先生に興味あるのは私の方だ。そもそも教師と一緒に風呂入る事自体が珍しい。その上あの美人だ。非常に気になってくる。
「ほな、お食事は夜七時や言う事で」
「はい、宜しくお願いします」
気がつけば三上君と玉藻さんは食事の時間のやり取りをしてた。
「ほなら失礼しますー」
玉藻さんは部屋から出て行った。
「んじゃ、早速温泉行くネー!!!急がばレッツゴーアル!!」
ネーちゃんが勢いよく大浴場へ向かった。そんな温泉好きだっけ?
「元気だなぁー。じゃ、三日月君は僕と一緒に行こうか」
「おうれ
三上君が珍しく呑気な雰囲気。そしてゆっくりとお風呂の準備してた。じゃ私も・・・
「グレイシア先生、私たちも行きます?」
「うん。その前にちょっといい?今は先生付けなくて良いから。学校以外だと呼び捨てでいい」
えー、いきなり言われても・・・
「じ、じゃあ、グレイシアさんでいいです?」
「まぁ、それでいいから。じゃぁ行く?」
「はい」
私たちも大浴場に向かった。
「三上、白骨温泉ってあれだろ?確か長野の山の方の上高地とか乗鞍とかに近いんだよな。一回行ってみたいけど、車じゃないと行けないんだよなー。母ちゃんはペーパーだし」
「そうなの。じゃ、今度一緒に行く?てか、温泉好きなの?」
「あぁ、なんつーの?ああいう趣って俺好きなんだよな」
「気が合うね。僕もよく一人旅で温泉巡りしてたんだ。白骨温泉ってやっぱあの乳白色の・・・」
前歩く三上君と三日月の話聞いてたけど、頭良すぎてついていけない私だった、くそ・・・小5の癖に。




