私の旅行先 その1
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三上君、今何と言ったかね?なんかこう、とんでもない名前を聞いたような・・・バカの私でも分かる最高位の神様の名前。
「天照・・・この国の最高神。神の力が無くなったこの世界だけど、まだ彼女はいる筈。けど、僕たち人間には彼女を探す術が無い。彼女を探すには同じ神、つまりあなたみたいな方が必要だったんだ」
やっぱり・・・アマテラスって言った。これ、コレとんでもない事になって来てない?三日月よ?
うんうん。
三日月は私のアイコンタクトに反応した。流石にコイツでもこうなるよな。ネーちゃんもぽかんとしてるし。
「天照大神かね・・・あん人ねぇ。確かに彼女が味方になってくれる言うんなら、それに越した事はあらへんけどな。あくまで最高神やし、けど今の彼女が人間たちの為に協力してくれる気がせぇへんねん。どないするつもりなん?」
「僕はこれでも神の片割れ、特異点を司る存在だよ。僕は決めたんだ。どんな形になろうとも彼女は僕たちの味方になってくれる。そこに確信がある」
三上君は真っ直ぐ前を見据えて自信ありげに語る。
「ほんま、あんさんも不思議な人やね。考えてないようで全部考えとるわ。天照はんの事なら旦那の鞍馬がよう知っとる筈や。けどな、今仕事で夜まで帰らへんねん。それに、三上はんらが今日ここ泊まるのはええけど、チェックインにはまだ早いねん。少し暇になるなぁ。あ!そや!赤影!こっちの仕事はええから、観光案内したってくれる?あと、あそこにも連れてってな〜」
「御意!玉藻様!!」
赤影は立膝をついて、頭を下げた。
「玉藻様言うないつも言うとるやん。お玉さんでええって。あ、うちの自己紹介まだしとらへんかったなぁ、すまへん。うちは玉藻。お玉さんって呼んでな?今日は目一杯おもてなししますから、どうかよろしゅうな」
「あ、はいこちらこそ」
玉藻・・・確か妖怪にいたな。男の夢を詰め込んだような羨ましい妖怪。
「てな訳で、あとよろしく頼むな?うちは夕食の準備の途中やさかい」
「はっ!!改めて、拙者志村 赤影と申す。飯綱様と同じく化け狐だ。以後お見知りを!」
赤影の頭の上の方から大きな耳がぴょこんと生えた。黒い忍び装束、そしてキツネ耳・・・うん、これは・・・
「「むっちゃ可愛い!!!」」
「な、ぬ?」
私とネーちゃんが同時に叫んだ。
「その耳触らしてネー!!」
「申し訳ないが、尻尾もいいですか!?」
私の中で新たな道が開拓された音がした。
「わ!!何するでござるか!?」
わお、ふわっふわだ。永遠に触ってられる。
「ひぇ〜!!耳は弱いから!!やめて欲しいでござるよー!!」
あのきりっとした喋り方は何処へやら。へなへな〜って情け無い喋り方になってる。
「赤兄ちゃんモテモテだねぇ〜」
「飯綱様ぁ!!呑気な事言ってる場合じゃないでござるよ!!くうっ!!こうなったら!!忍法!変わり身の術!!」
ーーーぼふんっ!ーーー
「あれ?」
「あら?」
モフモフしてたのが急に丸太になった・・・あ、あんな方にいる。成る程、コレが忍術か!
「ふー、びっくりしたでござる・・・尻尾触りたいなら先に仰せになって下さい。別に拙者は構いませんから」
「あ、はい。申し訳ない、つい」
いや、あれは触らずにはいられないだろ。
「赤兄ちゃん狐の中でも抜群にもっふもふだもんね〜」
そうなのね。確かに、普通の髪の質感も艶があっていい色してる。
「己を磨くにはまず己の身体から!そこをおろそかにする者に、精神を鍛える資格はなし!」
あはは・・・私にめっちゃ刺さる。髪ボッサボサだもん。
「さて、気を取り直し・・・」
ふにふに・・・
「え?」
あ、ネーちゃんがいつのまにかまた赤影の後ろを取って耳をふにふにしていた。
「にゃっふふふ・・・ワタシから逃げるなんて10年早いネ!!」
「ま、まさか拙者の変わり身を破るとは!!くっ・・・拙者の敗北でござる。耳は自由にくれてやるでござる!」
赤影、クソ真面目なのかふざけてるのかどっちなのか分からんけど、これ、くそ真面目な方だよな。
「わーい!!尻尾も良いけどこの耳最高に気持ち良いネ!!」
「そんなに触りたいのかよその耳」
三日月が若干引き気味にネーちゃんに言う。
「ケモミミ、ワタシ大好きなのヨ。弟君も触ル?」
「俺はいい」
「さてと、今度こそ気を取り直して・・・拙者がこれより京都の観光をさせて頂きましょう」
あ、口調が変わって丁寧になった。
これから赤影による京都観光案内が始まった。
「まず、そろそろお昼時ですので、軽く腹ごしらえをしましょう。こちら、スズメの丸焼きです。一応骨まで食べられますが、たまに硬い所があるのでお気をつけを」
・・・・・
「ねぇ、赤影さん。スズメって、あのスズメだよね?よくチュンチュン鳴いてるあの鳥だよね?」
私は赤影に質問した。私が手に持ったコレ、なんかめっちゃ目がガン開きでこっち見て来るんだけど・・・
「そうですよ?そのスズメです。それがどうかされました?」
「いや・・・」
そう言えば赤影はキツネか。食生活が違・・・
ーーーぼーりぼり。
「あ、美味ぇ!!」
三日月が普通に食った。
「なんだか懐かしい味がするから・・・はむ」
先生、一口で行った・・・
「むっしゃーっ!」
飯綱は言わずもがな。
「成る程。この濃いめのタレの味付け、そして振りかけた山椒が臭み消して野鳥独特の臭みが緩和されてる」
三上君は食レポ上手いな・・・てか、看板見たらマジで書いてあるじゃん。スズメって・・・
「これが本にも載ってたスズメの丸焼きネ・・・い、いざ!!」
ほぼ私と同じ目線のネーちゃんも食べた。
「んむぅー!!お腹のとこパリパリしてておいしー!!」
美味しいのか・・・私も、食べてみるか。か、覚悟を決めろ・・・一応人間の食べ物だぞ?いや、けどなんで私のコレはめっちゃ私を見て来るんだ?
「やはり、初めての方にはインパクトがお強かったですか?」
タジタジしてる私に赤影は気を利かせて話しかけてくれた。
「う、うん」
「ですよね、よく驚かれます。ですがコレも一つの郷土料理。この串一本にも様々な歴史や伝統があるのです。伏見稲荷は商売繁昌や五穀豊穣などのご利益がある神社。その中でスズメは穀物などを食い荒らす害獣とされてきました。それがここでこの丸焼きが作られた一説ですね。まぁ、昔に単純にタンパク源として取られたって話もありますけど・・・とは言え、今はもっと安くて大きいのが出回ってますから、スズメの丸焼きの店も数を減らしましたね・・・」
なんか、そんなふうに言われたら食べるしかないじゃん。私は一気にたべた。ドロっとしてる?なにこの味・・・苦いような感じ、けど、そんなに臭く感じない。この濃いめのタレと後からくる山椒のおかげ?今度はパリパリとした食感だ。少し硬い部分がある。コレが骨か・・・初めて味わう。こんな食感も味も・・・けど、言える一言はある。
「美味しい・・・」
どんなに回りくどく言ってもコレは美味しい。それだけは確かだった。
「バカ姉はこんな感じで他の食わず嫌いも治れば良いんだけどな〜」
「うっさいわ!」
全く、減らず口の多い弟め。
「なら、今度チャレンジで拙者の地元にあるヘボ飯でも食べてみます?アレもインパクトすごいですよー」
「へぼ?なに悪口ネ?」
「へぼって、クロスズメバチの事ね。へぼ飯はその幼虫なんかを甘辛く煮て混ぜご飯にするやつだよ」
三上君博識だな〜・・・ん?
「まぁ、僕も流石にアレは食べたくないけどね・・・ってあれ?みんなどうしたの?」
私と三日月、飯綱、そしてネーちゃんは顔面蒼白になった。
「あ、流石にこの話を振るのはまずかったみたいです・・・」
うん。さっき食べたものが戻って来ちゃうやつだ。
「レイの故郷、小さい時の私と同じもの食べてる。蜂の子って美味しい。小さい頃私のご褒美だったから・・・」
先生・・・とどめを刺さないで下さい。てか、先生昔何食べて生きてたの?
「グレイシア、タイミング考えてね。みんな今グロッキーになってるから」
「・・・ごめん?」
何故疑問系?
「拙者とした事が失礼した・・・なら、お口直しに宇治抹茶をふんだんに使ったパフェをご馳走しますよ。良いカフェがあるんです」
カフェのパフェとな!?コンビニのパフェしか縁のない私には未知の領域!!私はさっきまでの珍味の事なんか忘れて脳内スイーツ一択に変わった。
そんなわけで・・・
「「「よくぞ戻られた!!姫様!!殿様!!」」」
ん〜・・・私の想像してたカフェと違うぞ?なんか、キツネ耳付けて忍者の格好したお兄さんたちが壁の後ろから出て来たと思うと。私たちに立膝ついて頭を下げた。
「あの、赤影さん?ここは?」
「玉藻様プレゼンツ、キツネと忍者をテーマにしたコンセプトカフェ、名を『ニンコンカフェ』と申す」
あ、赤影が忍者なテンションに戻った。にしたって、カフェはカフェでもコンカフェかい。
「お母ちゃんいつのまにこんなの始めてたのー?」
飯綱が嬉しそうに聞く。
「玉藻様曰く、『最近コンセプトカフェ言うん流行っとるやん?うちらもそれに乗っかって新しい事業始めようと思うてんねん。旅館やけやとここ最近の物価上昇とかについてけへんやろうから、昼間はコンカフェ、夜は旅館ってな感じでな?ちょうど知り合いも仕事欲しい言うてはったから、キツネのみんな集めて始めてみぃへん?』との事でござる」
あの人、見た目以上にアグレッシブというかなんというか・・・
「で、やってみたら大成功って感じみたいだね。見た限りだと」
三上君が店内を眺めて感想を言う。私も見る。かなり盛況みたいだ。
「こう言うの外国人人気高いだろうな。特に忍者なんてよ」
三日月の言う通り、客の大半が外国人だ。何言ってるのか分からない話し声が聞こえる。
「けどサ、なんでキツネと忍者なのネ?女の子もいる見たいだけどキツネの組み合わせは巫女とかじゃないのネ?」
確かに、キツネ巫女はかなり需要高いんじゃないか?
「いや、玉藻様はありきたりなのは売れないから、人気かつ誰もやってなさそうな事をやろうと言う事でござる」
ほーん、けどこれは刺さる人は刺さるだろうな。かくいう私もその一人だ。私はテーブルに案内された。そしてメニューを見る。値段は、結構するなぁ・・・『火遁ノンアルカクテルの術』ってやつは1350円(税抜)って書いてある。一杯でこの値段・・・あー、ファイヤーって感じのパフォーマンス込みか。
で、絶品の宇治抹茶パフェは、パフェの上にここのキツネ忍者の形で抹茶パウダーがかかってる。お値段986円(税抜)上に比べたら良心的だ。私はこれを頼もう。
「ちーっす!!抹茶パフェどぞー!」
あ、来た。けど、持って来たのは・・・キツネ耳の忍者はいいけど、ぎ、ギャル?しかもちょっと昔の。
「白銀!ここにてそのキャラは如何なものかといつも!!」
「えー、めんどくさいじゃーんキャラやんのー。しかもくのいちってわたしよくわかんないしー、それにこれで結構人気あるしー。てか、飯綱ちゃんじゃーん!!めちゃでかくなってんじゃーん!主に横に!」
「ぐっさ!!」
あ、また飯綱がダメージ喰らった。
「にしても変化の術上手くなってんじゃーん。耳は・・・まだ下手っぴだけど・・・今日は何?観光?」
「そんなとこだねぇ。お母ちゃんとお父ちゃんに会いにきたのさね。シロ姉ちゃんは今ここで働いてるのー?」
「そっ。お玉に言われてさー。最初はやだったけど、鞍馬の旦那にも頭下げられちゃねー。他の人は飯綱の友達?って、あ、一人やべーのいんじゃん。あんた、神様だろ」
神様?あ、三上君の事か・・・
「その呼ばれ方は好きじゃないな。三上 礼です」
「礼兄ちゃんはおいらの家族さね!!」
「へー、神様に狐憑き・・・変わってんのー。わたし茶山 白銀ってんだ、ヨロシクー。なーんとなく察したわ。鞍馬の旦那、今日こっち顔出すつってたからさ、待ってたら来るんじゃないー?って、噂をしたらなんとやら」
1人、少し大柄な時期に似合わなくてもロングコートの似合う男がゆっくりと入り口から現れた。一目で分かる。この男・・・只者じゃない。
「玉藻から今朝、稲荷が来たと聞いた。そして、飯綱が帰って来たと・・・冗談かと思っていたが、どうやら本当らしいな。半日年休使ってまで来た甲斐があった・・・」
「あ!お父ちゃん!!」
「久しぶりなんてレベルじゃないな。飯綱・・・そして、お前が三上 礼・・・特異点の転生者。はじめましてだな。私は稲魂 名は、鞍馬だ」




