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第25話

遅くなりました。月一更新できれば、と思ってます。

助けだされたあと、アル様から解放され、小部屋のソファーに座りお茶とお菓子を食べている小動物令嬢ラナです。


お菓子でほっぺを膨らかし、本当に誘拐されてたの?と思うくらい呑気な様子に殿下と周りは、ほっとして優しい眼差しで見ています。


「入れたてのお茶は美味しい〜」


にこにこ、もぐもぐ、ごっくん美味しい物が並べられ満足顔で食べてます。


「ラナ様、このお菓子もどうぞ。殿下が新しく作らせた美味しい物ですよ」


「わあああーっ!凄い〜!クリームいっぱい!」


ぱくぱくむしゃむしゃ、ほっぺに詰め込みお菓子を堪能しています。にこにこしながら、アル様は私を見ています。私の分はあげませんよ。備蓄に向かない物なので、お腹に入れて栄養になってもらいます。


「ふふ、ラナはいつも美味しそうに食べるな。籠にもいっぱい入れておこう」


アル様が、私の部屋の籠にも入れてくれるそうです。気がきくアル様さすがです。


「殿下、ラナ様と牢の中にいた人物を連れて来ました」


殿下付きの騎士が執務室に数人入って来ました。アル様が小部屋を出てソファーに行きます。


「入れ、そこに座らせろ」


小部屋から覗くと、執務室の奥のソファーに、少し不満げなクマなおじさんと拘束してる騎士が座り、反対側にアル様が座り、お付きの騎士が背後に控えています。


「まず先に、名前を答えてもらう。言えるか?」


アル様に聞かれた、クマなおじさんはため息を吐くと、自分の身分を話し出した。


「グラスファン国王弟バンデット・グラスファンだ。気ままに旅をしながら生きてるろくでなしだ」


兄に迷惑を掛けそうだと頭を抱えている。そして、嫌そうに牢にいた経緯を話し出した。


「グラスファン国の王弟?」


「殿下、グラスファン国の王弟と言えば、数年前から姿を見ていないと噂になっておりました」


侍従の1人が殿下に言いました。お付きの騎士もそうでした、と聞いた話を殿下に伝えます。


「公式発表では病気で静養中だと、王が年老いて王位を第1王子に譲った式典にも参加していませんでしたね」


「ああ、そう言えば式典に叔父に着いて行っていたな」


騎士の1人は、この国の王弟殿下が式典に出席した時に、護衛ついでに嫁いで行った姉の所に行けばいい、と送り出したのだった。


ラナは聞こえてくる話で、クマなおじさんが王弟で偉い人だと分かりました。


グラスファン王には2人の息子がいた。1人は正妃腹が生んだ第一子ギルファン王子、第二子は寵妃の生んだバンデット王子、それぞれの派閥が自分が押す王子に王位を継がせ様と躍起になっていた。


その式典にも、王弟の姿はなかった。激しい王位争いがあったと、噂では聞こえて来たが定かではなかった。


「そうだ。国にバカがいて、俺と兄を争わせそうとしたから国を出たんだ。元々王位に未練も執着もない。母も父の寵愛さえあれば、俺が王位を継がなくてもいいと言っていた。兄が優秀だから国も大丈夫だがな」


そう、バンデットの親子関係は良好で、王妃も自分の王子が王位を継ぐなら他の事には目を瞑る、と言って寵妃とは争う気はない。

国を出たバンデットに、王も寵妃もそれについては言う事が間違っていない、と言って賛成していた。王位を継ぐバンデットの兄は済まなそうにしていたが、寵妃を守ると約束した。政策の邪魔になりそうな派閥の貴族は潰しても構わない、と言っておいた。


それに、国を荒らす者たちは不要だ、母を頼むと兄に言って国を出たのだ。もう少しで、兄に盛大に迷惑をかけそうなのには、頭が痛いバンデットだった。


「それなのに、何故、我が国の地下牢にいるんだ?」


話を聞いていたアル様が、疑問に思ったようだ。


「偶々、この国の大臣の悪巧みを聞いてしまったからだ。俺の顔を知ってるから、殺す訳にもいかず拘束したんだろう」


「悪巧みとはなんだ?教えてもらおう」


厳しい顔をしながら、アル様がクマなおじさんに聞いている。


「暗殺だよ、暗殺。この国の王子を殺したいと相談していた」


放浪していた時に近くに宿が無く、空き家の下で寝ていて人に見つかるのも嫌だと思い、屋根裏でバンデットは寝ていたのだ。


「人の気配がしたので隙間から覗くと、見たことのある男が、自国の王子が邪魔で自分の思う通りにならない。下の弟は自分の娘を正妃に持ってくれば操りやすいだろう、と言ってたぞ」


アル様がそんなに簡単に暗殺できるかな?無理だと思う。


「水晶に映っていた、ブロイが犯人なのだな」


ブロイ公爵、先先代の王家の血を継ぐ物だが、権力欲が酷く一時は娘を王妃にと画策していたが、アルフォンス殿下に阻止されて恨んでいるのだった。


「ああ、そうだ。長い時間をかけ、自分が犯人だと分からなくする為の工作に時間がかかるとも、それが終われば俺は殺されただろうな」


牢に入れられたまま死んでいただろう。まさか、王子の大事な女の子に助けられるとは運がいい。と言うとアルフォンス殿下のラナ自慢が始まる。


「そうだろう、ラナは可愛い。特にお菓子を口いっぱい詰め込む姿は癒される。その笑顔で仕事が進む」


いい笑顔のアル様です。でも、お菓子をもぐもぐしてた姿がいいとは!変ですよ。


「そうだな、嬢ちゃんは度胸がある。波の令嬢なら、牢に入れられれば泣き喚くか、気絶して震えるかのどっちかだな」


呑気な嬢ちゃんだと思ったよ、とクマなおじさんが言ってます。


「身分を証明する物を持っているか?あれば出してくれ。父に報告して罠を貼り、一網打尽にする」


「証明か、俺が持っているのはこのイヤリングだけだ。これだけは取られない様に隠していた」


手のひらの上に置いたイヤリングを、騎士が受け取りアルフォンス殿下に差し出した。


「殿下、本物です」


魔法騎士が、受け取り魔法を掛けたのだ。イヤリングが反応し王家の紋章が浮かび上がった。国を違えても、この証明だけは共通の物になっている。


偽造はできない、血の契約がしてある。この紋章を刻む宝石には特殊な魔法が施してあるからだ。


「本人確認はできた。改めて王弟バンデット殿、貴方はこれから何を望む?」


いろんな者を巻き込んで何かが起こるのが予想できる。緊張感の高まった執務室で、真っ直ぐにクマなおじさんを見て問いかけるアル様に、ちょっとだけでドキドキした小動物令嬢ラナだった。



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