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お払い箱の聖女は占いで食べていく 〜冷徹な騎士団長が、なぜか毎日来る〜  作者: 丸ノ内きみこ


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24/24

24.

セシルの監獄での不穏な再会から数日。


占いの館の重い空気を吹き飛ばすように、カランカランと、これまでにないほど軽やかで晴れがましい鈴の音が響く。


ドアを開けて入ってきたのは、見違えるほど凛々しくなったエルフの青年・ルニ。


そしてその隣には、彼が大切そうに手を引く、同じくエルフの美しい女性が寄り添っている。


「ミコトさん! やっと、彼女を連れてくることができました!」


ルニが満面の笑みで報告すると、鑑定室の隅でいつものように「風景」と化していたレオンが、ぴくりと眉を動かして顔を上げる。


「あら、ルニくん。それに……あなたが噂の幼馴染さんね。いらっしゃい」


ミコトが微笑んで迎えると、女性の方は少し緊張した面持ちで、深々と頭を下げた。


「初めまして、ミコト様。ルニの婚約者のフィアと申します。……この人が変な薬に手を出して、とんでもないご迷惑をおかけしたと聞きました。本当に、ありがとうございました」


「いいのよ、もう終わったこと。……でも、二人とも。今のあなたたちのオーラ、本当に綺麗だわ」


ミコトの瞳には、二人の頭上で若草色と淡い桜色のオーラが優しく混じり合い、一つの大きな輪を作っているのが視える。それは、お互いへの信頼と深い愛情が結びついた、一点の曇りもない祝福の色。


「ミコトさん、僕たち、星祭りの夜に約束したんです。これからは隠し事も魔法の誤魔化しもなしで、一緒に歩いていこうって。……秋には里で式を挙げます。これは、そのご報告とお礼です!」


ルニが差し出したのは、エルフの里の秘宝とも言える、永遠に枯れない「真実の愛の種」。それを見た瞬間、隅っこで黙っていたレオンが、音もなく立ち上がって歩み寄ってくる。


「……結婚、か。一介の若造の分際で、なかなかの決断だ」


レオンは腕を組み、相変わらずの威圧感を放ちながらも、そのオーラにはルニを認めるような、穏やかな温かみが混じっている。


「団長閣下。……僕も、自分を信じて彼女を守り抜く覚悟を決めました」


「ふん。……ならば、その言葉を違えるな。もし彼女を悲しませるようなことがあれば、帝国騎士団が黙ってはおらんぞ」


「レオンさん、あなたが脅してどうするのよ。……でも、本当に良かったわね、ルニくん。魔法に頼らず、自分の心で掴み取った幸せ。大切にしなさいな」


ミコトが優しく二人の手を重ねると、フィアが涙を浮かべて微笑む。


「はい。……ミコト様、いつかお暇があれば、ぜひ里へも遊びにいらしてください。ルニがいつも言っているんです。ミコト様は、僕たちの恩人であり、憧れのお姉さんなんだって」


「お姉さん、ね。ふふ、嬉しいわ」


幸せのお裾分けを振りまくように帰っていく二人を見送って、ミコトは心地よい溜息を吐く。


「……いいわね、結婚。あんなに澄んだオーラ、久しぶりに見たわ」


「……ミコト」


背後から、レオンが静かに、けれど逃がさないという意志を込めてミコトの肩を抱き寄せる。彼の頭上のオーラは、先ほどのルニたちに負けないほど激しく、情熱的なピンク色に燃え上がっている。


「……あやつらに先を越されるのは、あまり愉快ではない。……私の里――いや、この帝国の中心で、あなたを隣に立たせる準備は、既に整っているのだが」


「レオンさん、あなた。それはプロポーズのつもり? ……ダメよ、そんな書類仕事の合間に済ませちゃ。もっと、私を驚かせてくれないと」


「……驚かせる、か。……覚悟しておけ、ミコト。次にその言葉を口にする時は、帝国全土が震えるほどの儀式を用意してやる」


「だから、極端だって言ってるでしょ……!」


ミコトは顔を真っ赤にしながら、レオンの胸元を軽く叩く。

占いの館に流れる空気は、いつの間にか、初夏の風のように爽やかで、甘い予感に満ちあふれている。

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