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お姫様の目覚めには

本当に本当にお久しぶりでございます。諸々諸事情ございまして一ヶ月空きましたことお詫び申し上げます……

「暇だぁ〜……」

「暇ですわ……」

「暇ですね……」


三者三様に椅子にもたれて、深い深いため息をつく。


マリアたちが学園へと出かけて、早数週間。ユリウス、アレクセイ、アリスの三人はかつてなく静かな時間を持て余していた。


「なんか面白いことないかな……」

「もういっそギルドでも行きませんこと?」

「いや、一昨日行ったばかりでしょう……そこまで大きな仕事もなさそうですし」

「だってアル兄たちが学校行ってから何にもすることないんだよ。もー俺飽きちゃった。もっかい父上にゴネて編入試みてみる?」

「アレクにしてはいい意見ですわね。それならまず陛下の弱みを握ってきてくださいまし」

「落ち着いてください二人とも……いくらなんでも不敬罪ですよ」


自分の頭の上にとまったマリアの従魔、フェニックスのクコの頭を撫でながらユリウスはエキサイトする二人に声をかける。

マリアにべったりなクコは当然学校にも行きたがったが、今まで従魔士が現れなかったため学園に魔獣などの持ち込みが禁止されており、従魔士という職を隠しているマリアがクコを連れて行くことはできなかった。ゆえに同じ従魔士のアレクに預けられている。遊び相手にアレクの従魔、フェンリルであるリクとカイがいるし来年には彼の従魔として寮に連れて来られるからだ。


「なんだよー、ユリウスだってつまんなくないの?」

「そうですわよ! お兄様もお姉様もいなくなって、寂しくはないんですの?」

「……寂しいに決まっているでしょう。姉上と一番長く過ごしているのは弟である僕なんですから」

「じゃあなんでそんな冷静なわけ? もっとこう、駄々こねたりすればいいじゃん」

「我侭言ったところで叶えてくれる人はここにいないでしょう。 もし僕がここで姉上に会いたいって叫んだら来るって言うんですか?」

「ユリウスー!」


どんっと身体を打った衝撃に、ユリウスは飲んでいた紅茶を零しそうになった。すんでのところで堪えて、その衝撃と声の主を振り返る。


「あ、あ、姉上ッ!?」

「んふふ、ユリウスの大好きなお姉ちゃんだよぉ~!」

「お姉様! どうしてここに?」

「リア姉! ルー兄たちは一緒じゃないの?」


すりすりぎゅうぎゅう。ユリウスの身体を抱きしめながら、マリアは両隣に集ってくる妹弟の頭を撫でた。


「今日は皆でキャンプに行ってたんだけど私の友達がちょっと攻撃食らっちゃってね、ユリウスに助けて欲しいの。一応命の危険はないはずだしルークは向こうに置いてきたから急がなくていいんだけど、ちょっと出かける準備してもらえる?」

「っわ、わかりました。 ちょっと待っていてください」


落ち着いて返事をしているようだが、その声は若干上ずっている。おまけに部屋へと戻る足取りは軽い。久々に会った弟の可愛い姿に思わず笑みがこぼれる。そんなマリアの隣でアレクがぼそりと呟いた。


「ていうかリア姉、友達いたんだね」


そのほっぺたをマリアが思いっきり抓り上げたのは言うまでもない。


***


「お待たせっ!」

「お兄様!」

「兄上!」

「アラン兄!」


森に着いた瞬間、三人の年下組はそれぞれの兄の下に走っていった。ぴょんっと抱きついた少年少女を三人は兄の顔で迎え入れる。


「アリス! 元気にしてた? 今日はポニーテールなんだ。この髪飾りも可愛いね」

「シロちゃんがくれたんですの! 丈夫な蔦とお花を加工したんですって」

「ようユリウス、数週間ぶりだな! ちょーっと背ぇ伸びたか?」

「ほんの半月でそんな変わりませんよ。兄上はちょっと太りました? 姉上のお菓子食べすぎなんじゃないんですか?」

「おま、気にしてたこというなよ……」

「アレク……おまえこれは抱擁じゃなくてタックルっていうんだ……」

「あれっ、アル兄は?」


兄の不在に気がついたアレクが首を回すと、何もないところで蹲るアルヴァンスの姿があった。


「……えぇ~、あんなアル兄の姿何年ぶりだろ……どうしたのさ」

「マリアの友人のエレノア嬢が倒れてるのは聞いたか?」

「うん。リア姉にも友達いたんだねって言ったら怒られた」

「おまえは本当に人の地雷を踏み抜くのが得意だな……とりあえず、エレノア嬢が倒れたとき一緒にいたのは兄さんだったんだ。だから自分を責めている」


ほら、と指差したところを見ると、マリアがユリウスとアルヴァンスを連れて結界に入っていくところだった。


「おそらく、エレノア嬢がかけられたのは遅効性の毒か、一定の条件でないと解けない呪いだ。マリアの光属性でも解けないとなるとかなり特殊な条件だろう」

「それでユリウスの〈カルテ〉を? リア姉も結構強引なとこあるよね」

「初めてできた女友達だからな。あいつなりに必死なんだろう」


基本的に自分でなんでも出来るマリアだ。姉としてのプライドも人並みにある彼女が弟であるユリウスを頼るのはこれが始めてではないだろうか。


「まあユリウスの能力は僕らもよく知るところだし、安心していいんじゃないかな」

「そうですわ。あのユリウスですもの。きっとお姉様のお友達だって簡単に助けますわ」

「アリスのそのユリウスに対する無条件な信頼なんなの……」


半目のアレクの視線など意に解せず、アリスとルークはニコニコと離れていた間の近況報告をし合う。そこに周囲に魔物がいないか再チェックしていたニコラスが合流し、五人は静かな森の奥で結界が解けるのをまっていた。



*****


「……あの、姉上。一応この方の状態異常はわかったんですけど……」

「ホント!? どうすれば解ける!?」

「ええっと、言っていいんですか……? この対応できる人僕らの中にいないと思うんですけど……」

「頼むユリウス。教えてくれないかい? この子がこうなったのは僕の責任なんだ。僕が出来ることならなんでもするから……」


懇願するようなアルヴァンスに、ユリウスは少し躊躇った後、ぼそ、と呟いた。


「……ん、です」

「えっ、なに?」

「ですからっ、眠り姫症候群です!!!」

「眠り姫症候群……って、え、え? まさか、あの!?」

「そうですよ! その眠り姫症候群です! きっと攻撃したのは糸車の魔女ですね! あの魔女の出現率は他の魔女より出現確率が高いのでまず間違いはないと思います!」

「えええっ!? じゃあエリーを助けるにはっ」

「ちょ、ちょっと待ってくれないか!」


困惑を全面に出したアルヴァンスが、いつになく声を荒げるユリウスと頬を染めたマリアにストップをかけた。


「勉強不足ですまない。その、糸車の魔女というのは……?」

「アル兄様、おとぎ話の魔女を知っていますよね? 白雪姫の毒林檎の魔女、髪長姫の塔の魔女、ヘンゼルとグレーテルの竈の魔女……その他にもたくさん魔女がいますが、彼女らはモンスターとして出現します。逃げ足が速いので討伐や捕獲は難しいですが、その中でも一番目撃が多いのが眠り姫に出てくる糸車の魔女なんです」

「糸車の魔女は毒林檎や竈より人間に害はないんですが、その……厄介な点が」

「その厄介な点とは何なんだい? そんなに難しい条件なのかい?」

「あのですねー……この魔女、その、お節介というか、仲人気質というか……」


ここまでで察してはくれないだろうかとアルヴァンスを見るが、如何せん温室育ちの王子様だ。顔を真っ赤にして黙り込んでしまった弟を見て、マリアは腹をくくる。


「要するに、ちょっといい感じの年頃の男女をくっつけたがるんです」

「…………ん?」

「つまり魔女としてはアル兄様とエリーの雰囲気がいい感じだったからちょっとした世話焼きとしてエリーに魔法をかけたというか……」


なんで魔女の弁明をしているんだろうかと思いながら、ちらりとアルヴァンスを見る。顔を両手で押さえているからその表情はわからないが、髪の間から見える耳がほのかに朱に色づいている。


「それで……解呪方法は……」

「あー、えっと、その……お察しの通り、キス、です」


マウストゥーマウスの……と付け足して言うと、アルヴァンスはついにその場に蹲ってしまった。


「……少し、二人にしてくれないかい……?」

「は、はい……」


三人とも赤面して、茹で上がってしまったユリウスを抱えて外に出る。


「エレノア嬢の症状なんだった?」

「おい、兄さんはどうしたんだ。どうして置いてきた?」

「……糸車の魔女」

「なっ!?」

「ああー……なるほど」


入試トップのアランと職業:賢者のルークは察しがついたらしく、一方は顔を赤くし一方は苦笑を浮かべた。まだ十二歳の二人は知らないらしく、不思議そうに首を傾げるばかりである。ニコラスもしかり。


「アル様、割と最初からエレノア嬢のこと気にかけてたもんね」

「うん。アル兄様、女性不信気味だけどエリーのことは平気そうだし」

「まあ、家柄は問題ないからいいが……責任問題だな、これは」

「いいんじゃない? そろそろ王子の婚約者の一人くらい決める時期だろう」

「あの二人が婚約しちゃえばアランもアレクもしばらくは何も言われないしね。公爵令嬢と第一王子の婚約よ? だーれも文句は言わないわ!」


エレノアも満更でもないだろう。彼女は要所要所でアルヴァンスに興味のあるような発言をしてきたし、なんだかんだアルヴァンスを頼っていた気がする。ずっと姉として過ごしてきたエレノアに、兄の手本のような紳士で柔らかな物腰のアルヴァンスは初めて出来た頼れる異性だったのではないだろうか。


「アル兄婚約すんの!? 誰と!?」

「あのアル様が!? 私とお姉様以外ろくに会話もしたがらないアル様が!?」


ようやく話を理解したらしい年下組が驚愕に目を見開いた。


「あーはいはい。このことは秘密よ? 誰にも言っちゃ駄目」

「父上にも?」

「もちろん。それじゃ、帰りましょうか?」

「えっ、この状況で帰らされるんですの!?」

「それはないよリア姉っ!」

「だってユリウスがこの状態なんだもの。さすがにお父様になんの許可も貰ってないのに一晩預かるわけにもいかないし……」


ぷしゅう……と顔から火が出るレベルで目を回すユリウスに、アリスとアレクは押し黙る。その様子ににこりとマリアが笑うと周囲の草木が揺れた。ハッと気付いたときには遅い。既に二人は蔦で縛られており、身動きは取れなくなっている。


「卑怯だぞリア姉!!」

「悔しかったら長距離召喚できるようになりなさい!」


一瞬にして三人の姿は消え、次の瞬間にはマリアがひとりで戻ってくる。


「さっ、二人が出てくるの待とっか!」


それからエレノアを抱えたアルヴァンスが出てきたのは、三人を帰してから約一時間後だった。


二人はここまでのお話の中でもちょいちょいその気を見せてたりします。ほぼほぼ無意識ですが。

もしコロナ休暇でお暇な方がいらっしゃいましたらぜひ見つけてみてください。


皆様コロナで大変な方もいらっしゃると思いますが、なろう小説を読み漁って家に引きこもっていましょう。不要な外出を控え、手洗いうがいを欠かさずに、事態が収束するまで耐え切りましょう!


いつもブクマと評価ありがとうございます。感想などもいただけたらとても嬉しいです。

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