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 冬の童話2016投稿作品です。

 連載作品のスピンアウトの童話ですが単品でもお読みいただけます。

 それではどうぞ。

 メイプルグランマは年寄りのねこのおばあさん。

 本当の名前は別にありましたが、みんなからそう呼ばれているので自分でもそういう名前だと思っています。

 メイプルグランマは村のはずれの木でできた家に一人で住んでいます。


 前はおじいさんといっしょに住んでいましたが、ある日山に一人でのぼったきり、それから帰ってきていません。

 メイプルグランマのお仕事は寒い雪山に登ってサトウカエデの樹液を集めることです。


「ふう、ふう、さいきん山を登るのがつらくなったわねえ」


 メイプルグランマはおじいさんが作ってくれたブーツをはきました。

 同じくおじいさんが作ってくれたかごをもち、つえをさして一人でゆっくりと登っていきます。


「ふう、やっと登れた。おじいさん、ありがとうございます」


 メイプルグランマは見晴らしのいいところへ出ると、山や空にむかって手を合わせます。

 そこにおじいさんがいるわけではないのですが、そうしているとひょっこりおじいさんが帰って来る。

 そうでなくてもおじいさんがむすっとした顔をしながらも見守ってくれている、メイプルグランマはそう考えています。


「サトウカエデさん、ごめんなさい。それからありがとうございます」


 かつん、かつん、ごりごりごり。


 メイプルグランマはのみと木づち、きりをつかってサトウカエデのみきに穴をあけます。

 そこにバケツをくくりつけます。

 そうすると、ちょろちょろ、ちょろちょろと木の幹から澄んだ樹液が流れてきます。

 メイプルグランマはサトウカエデの木一本一本に手を合わせて、バケツに樹液を集めます。


「ふう、ふう、登るのもたいへんだけど下りるのもたいへんだわ」


 メイプルグランマは樹液の入ったバケツを持ってしんちょうに山を下ります。

 山から下りても次の仕事。

 こんどはは集めた樹液を大きなかまに空け、かまどで樹液をにつめていきます。

 たきぎは山に雪がつもるまえに集めておきました。

 こうすることで、澄んだ樹液は深い色と味わいのメイプルシロップになるのです。


「ふう、できた。ありがとうございます」


 シロップができてからようやくごはん。

 近所のクマにもらったたっぷりの果物に木の実、それから自分で作ったワッフルにスコーン。

 メイプルグランマはパンやスコーンに用意してあったシロップをかけてたべます。


「きょねんのはもうのこりすくないわね。

 あら、もうこんなじかん。おじいさん、ありがとうございます。それからおやすみなさい」


 メイプルグランマはたなにかざってあるおじいさんのしゃしんに手を合わせベッドに入ります。

 そうやってまいにちをすごしていました。



 そんなある日のこと、山に見なれない男たちが来ました。


「おい、はらがへったぞ」

「おれもだ」

「めしくったのは三人ともいっしょだろ」


 雪山をのしのしと歩いているのは大きなブタのさんぞくたち。

 名前はそれぞれタギー、ラウディー、そしてブランビイ。

 タギーは大金づち、ラウディーは大きなおの、ブランビイは大きくてじょうぶな手ぶくろをもっていました。

 三人そろって乱暴者でなににたいしてもおこっています。


「しかしさむいな」

「ああ、あったまりてえぜ」

「おい、みんな、あれを見ろ」


 ブランビイが指さすとそこにはけむりが立ちのぼっています。


「おい、だれかいるぜ」

「火をたいてるってことだな」

「ああ、めしにありつけるかもしれねえ、いってみようぜ」


 三人がやぶをかきわけて進むと、そこにはたき火をしているオオカミの木こりがいました。


「なんだ、やせオオカミか」

「火にあたらせろ」

「くいものをもってたらよこせ」


 オオカミの木こりはおどろいてにげようとしましたが、三人につかまりました。

「ひいい、いのちだけはおたすけを」


「なぜにげる」タギーは大金づちをつきつけます。

「やせオオカミなんかくってもうまくもない」ラウディーはおのをかざします。

「くいものをよこすんだ」ブランビイは手ぶくろをつけた手で木こりのくびをつかんでもちあげました。


 三人にかこまれた木こりのオオカミはなけなしのパンとぶどうしゅをさしだしました。


「これっぽっちか」

「しけてやがんな」

「ようじはすんだ。いのちがおしけりゃうせろ」


 木こりのオオカミは命からがらにげました。三人はたき火にあたってパンをたべます。


「たいしてうまくねえな」

「ぶどうしゅもすっぱいぜ」

「おい、おれにもよこせ」


 パンを食べおわり、やがてたき火がきえると三人はまた山の中を進みます。


「あんだけじゃかえってはらがへったぜ」

「それにのどもかわいた」

「それよりもくらくなってきた。こんやねるところをさがすぞ」


 三人はさらに山を進みます。


「おい、これを見ろ」

「ああ、ゆきでぼやけてるが足あとがある」

「だれかが山にきてるってことだ。ふもとにいこうぜ」




   ***




 ふもとまで下りるとレンガでできたえんとつからけむりが出ているのが見えました。

 三人の身体も服も雪がかかって真っ白です。


「おい、けむりが太いぞ」

「ああ、なにかにたきしているしょうこだ」

「くいものがもらえる。それにねどこも」


 三人のさんぞくはノックもせずに家のドアをガチャリと開けます。


「まあまあ、どちらさんですか?」

 家の中からはメイプルグランマが出てきました。


「なんだ、ばあさん一人か」

「おれたちははらがへってる、くいものをよこせ」

「それにねどこもない、ねるばしょをかせ」


「まあまあ、それはおこまりだこと。なにもありませんが、さあお上がりください」

 三人はゆきをはらうとずかずかといえに上がりこみ、火にあたります。


「さあ、なにもありませんがめしあがれ」

 とうぞくたちはいただきますも言わずに、だされた木の実や果物、パンやスコーン、あたたかいスープをがつがつとたべだします。


「なんだこれは」

「すごくあまいぞ」

「こんなうまいもんくったのはじめてだ」


「ありがとうございます」

 メイプルグランマは目をほそめてにこにこします。


「「「ばあさん、このあまいのはいったいなんだ?」」」


「それはメイプルシロップ。わたしがつくりました」

 三人はおかわりをたのみますがメイプルグランマはこまりました。

「パンとスコーン、スープはありますけど、メイプルシロップはそれがさいごでまたつくらないと」


「なんだって?」

「もうこんなうまいもんが、もうくえないのか?」

「どうしたらこのシロップはつくれるんだ?」


「これはサトウカエデのじゅえきをにつめてつくるの。ふゆはまいにちつくれるから。あした山にいってあつめるからそのときおだしするわ。

 きょうは三人ともおやすみなさい。しょっきはかたづけておくから」

 後半部分は1/13(水)投稿予定です(ギリギリ)


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