表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
なっぴの昆虫王国  作者: 黒瀬新吉
64/112

レムリア王国

 はるか昔、ひとつの巨大な大陸があった。やがて大陸の昆虫人たちは次第にまとまり、ひとつの国を作った、その名を『レムリア王国』という。初代の王の名は『ビートラ』妃は『リカーナ』。王女『マンジュ』はやがて『カブト』という王の妃になる。その国にやがて『イオ』、『アギト』という二人の王子が生まれた。国は富み、平和であった。それは王の『絶対的な威』と妃の『絶対的な愛』が国の隅々まで行き渡っていたからだった。しかしその平和もやがて終焉をむかえる。


 ある夜『レムリア』にまっ赤な星が落ちた。それはどこから来たものなのかは誰も知らない。伝わっているのはそれがきっかけだったということだ。その赤い星のかけらは異空間から飛んで来た、全宇宙を支配しようとしていた悪魔の成れの果てだ。粉々に砕けた悪魔の身体は『ナツメの石』と呼ばれ全宇宙に散らばった。そのひとかけらが『レムリア』に届いたのである。そのかけらは、二人の王子の悪を呼び起こす。それまで仲の良い兄弟であったのに、それぞれが王位を手に入れるために、次第に敵対していく。争いは一進一退を繰り返し、国民は疲弊していくばかりだ。女王『マンジュリカーナ』は心を痛め、王に仲裁を願ったのも一度や二度ではない。しかし王は一向に動こうとしなかった。それは『レムリア』の王、『カブト』自身も専制君主だったからだ。まず絶対的な威があり、そして国民を正しき方向へ導く、それが王だと信じている。王位をかけて、兄弟で争うのも正しき王選びなのだと思っていた。女王はまるで違う、国民が納得しなければ国は成り立たない、兄弟の争いは国民に恐怖しか残さない。たとえ王が決まってもその王は、国民が心から従う王ではないのだと、そんな国は滅んでしまうとさえ言って、王を諭した。

 王子たちは戦いの場を次第に国中に広げ山も形を変え、河も干上がる有様に『カブト』はしぶしぶ立ち上がった。城に近づく王子の姿はまるで変わってしまっていた。巨人になっただけでなく、異形な角を生やしている。兄の『イオ』は長いツノがさらに枝分かれし、身体が黄色に輝いていた。『カブト』のツノより太く長い後部のツノが頭部のツノと交差する度にバチバチと音を出す。弟の『アギト』は湾曲した三本のツノを持っていた、中央のツノはノコギリ状に枝分かれをしている。『レムリア』の城を二人は目指している、 国民は恐れおののき、逃げ惑うばかりだ。王はようやく、『マンジュリカーナ』の言ったことがわかった気がした。彼は立ち上がり、自らも巨大化した。しかし、兄弟の戦いを止めることはできない。やがて戦いは終わりを迎えた。『イオ』が『アギト』を倒し、『カブト』の方に向きを変えた。彼は『イオ』の後ろに回ろうとしたのだが、『イオ』はそのまま前進しようとした。その先には『マンジュリカーナ』のいる『レムリア』城がある。そう、『イオ』の狙いは『マンジュリカーナ』だった。悪魔が完全な復活のために、彼女を手に入れ、妃にするつもりだった。兄弟を操っていたのはまさしく悪魔だったのだ。

 死闘の末『イオ』も『カブト』もとうとう倒れる。最後にゆっくりと現れたその巨大な影は『カブト』の中の怒れる闇に入り込み、ついに『カブト』の身体を乗っ取った。それが『イト』である。巨大なツノはすでに『イオ』すら凌駕した。『イオ』を持ち上げ渾身の力で『イオ』の体を砕いた。その姿は悪魔そのものだ、そして真っ赤な目をしたまま、『レムリア』城に向かって声を上げた。

「『マンジュリカーナ』、わしの妃はお前しかいない。ともに全宇宙を治めようぞ」

 『カブト』さえ飲み込んだ宇宙の悪魔『イト』、しかし『マンジュリカーナ』の霊力によって『エビネ国』に封印された。彼女こそ、『レムリア』いや全宇宙を救った『虹の勇者』なのだ。


 『サキ』は『ラクレス』に聞いた。

「あなたは、『イト』の封印を解いて何をするつもりなの?」

「見ろ、『エビネ国』の広大なエビネ池には、かつて『レムリア』の城があった。城を沈めたのは『マンジュリカーナ』の力だ、その城に『イト』は封印されている。その封印を解くと、『レムリア』の王宮が再び現れる。それに呼応するように四王国に分断した大海は消え去る。再び『セブリア』、『テネリア』、『ゴラリア』、『ナノリア』は陸続きになる。『レムリア王国』を復活させること、それがわしの望みだ」


 その思いを『ラクレス』は偶然受け取ったのだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ