赤い翡翠
長く争っていた『セブリア』と『テネリア』の休戦協定は国境の町で行われた。協定書をかわし、『ラクレス』も『コオカ』もそれぞれの城に帰ろうとした時、大きな爆発が起った。『セブリア』の地下兵器工場を休戦の証として、地下に埋めるためのものだ。『テネリア』の王『コオカ』も、それを条件に休戦に同意したのだった。
これはその日のことだ。
「『ラクレス』様、このようなものが埋まっておりました」
「こ、これはナツメの石ではないか……」
休戦の場に列席していた、大ゾウムシの大僧正『ミネス』が口を開いた。
「いや、似ているがその石は、ナツメの石ではない、おそらくは『イト』の『赤い翡翠』だ」
爆破した地下道からそれを掘り出したことが、『ラクレス』を『ナノリア』に向かわせたのだ。
その『赤い翡翠』は『ラクレス』の心に話しかけた。
「おまえが『レムリア』の子なら、わしの言うことがわかるであろう。わしが命がけで守ったのは『レムリア』という箱ではない、またその中のひ弱な国民でもない、ただ愛する『マンジュリカーナ』のため。王子たちが争い、お互いが傷つくのをもう見せたくなかっただけなのだ。なのに、その『マンジュリカーナ』を追放し、麗しい『レムリア』までも引き裂き小国にしてしまった。それがわしには無念で仕方ない、もう一度『レムリア王国』を愛しい『マンジュリカーナ』に見せてやりたい……」
その言葉に彼は心が乱れた。『レムリア』の再興のために『コオカ』は必要だった。『ラクレス』は『イオ』の寄り代となりその圧倒的な力で四王国をまとめ、人間界の『マンジュリカーナ』を呼び戻す。彼女の霊力を持ってすれば、不可能なことはない、彼は『レムリア』再興の捨て石になるつもりだった。しかしそれは誰にも知らせていない。何故そこまでするのか?『ラクレス』は『カブト』の因子を強く持って生まれた『レムリアの子』だ。『レムリアの子』それは『ラクレス』、『コオカ』、『エレファス』、そして『キング』この『赤龍刀』を受け継いだ四国の王たちの事を指していた。
サキはついに決断をした。
「約束通り、封印は解きましょう、でもそれだけでは『アギト』も『イオ』も降臨はしない」
『ラクレス』は自信たっぷりに言った。
「わしも、『コオカ』も赤龍刀を受け継ぐ『レムリア』の子、正統な伝承者だ」
空に高速トビヤンマがカラスヤンマとともに現れた。間違いなく二人が無事にエビネ城に届いたのを確認すると、『サキ』はヤンマに乗った。
「このまま、エビネ城に逃げるかもしれませんよ」
漆黒金剛石を手にした『サキ』が『ラクレス』をからかった。
「『マンジュリカーナ』の教えに欺きはない。漆黒金剛石の解放の際、そのとてつもない力は大地さえその形を変えてしまう。つまり大空で封印を解くしかないのだ」
「『ラクレス』、あなたは本当に『レムリア』王のことを知っているみたいね」
トビヤンマが空に舞い上がる直前に『ラクレス』はもう一言『サキ』に言った。
「サキ女王、封印を解いた後はエビネに向かえ、今度会うときは『レムリア』の城で会いたいものだ、俺が俺のままで、まだいられたらの話しだがな……」
サキを乗せたトビヤンマは一気に大空に舞い上がった。




