再試合
「Etes-vous Prêts?(エト・ヴ・プレ)。用意はいいか?」
もはや戦うしかない、由美子は、ソードを長く変形させた。
「Oui。『インディゴ・ソード』」
『ピッカー』は両先端にやじりの着いた、彼の最も得意な長い槍を抜き、回転させながら進んで来る。
「名を『ツイン・ドラゴン』、この武器をかわせるかな?」
真上から打ち降ろした槍を、『インディゴ・ソード』で受けても、もう片方のやじりが瞬時に真下から由美子の喉を狙って、突き上げられてくる。
「これは、なっぴが使った棒術と同じだわ」
後方に宙返りをして、なんとか避けた。
「それで逃げたつもりか、今度はこうだ」
『ツイン・ドラゴン』を回転のこぎりのように、片手で回転させて、少しずつ間合いを詰めて来た。由美子は後ろに少しずつ下がったが、もう壁が近い。
「このままだと輪切りにされてしまう……」
由美子は『天羽の羽根』を使った。ふわりと上空に飛び、回転する『ツイン・ドラゴン』を避けて真上から『ピッカー』に叫んだ。
「いくわよ、アゲハの舞」
そういって『インディゴ・ソード』を上空から降下しながら振り下ろした。
『ピッカー』はそれをかわすと『ツイン・ドラゴン』を回転させようとした。しかし長い槍は片手だけでは縦の回転ができない。それに地面に当たってしまい、思い通りには使えなかった。第一の太刀をかわしても、今度は切っ先を変えて下から第二の太刀が来る。それを避ければまた次の太刀が上から振り下ろされる。自在に上下に飛び回るアゲハらしい華麗で鋭い舞だ。
「ラッサンブレ・サリューエ、試合終了だ。フローラル・由美子」
『ピッカー』はそう言って、片膝を着き、臣下の礼をとった。
「試験は終わったのかい、『ピッカー』。そう声をかけたのは、『ガマギュラス』だった。由美子は『ピッカー』に試されたのだ。
「本当に、素直じゃないんだからな。さあお前も早く出せよ『ピッカー』」
『ガマギュラス』は緑色の長いカマ『グリーン・サイス』を由美子に差し出した。『ピッカー』もその横に、黄色の『ツイン・ドラゴン』を縮めて置いた。
「由美子いや、アゲハ。さあ、『インディゴ・ソード』をその上にかざすのだ」
『ダゴス』が厳かにそう言った。由美子は言われた通りにした。
『ガマギュラス』の『グリーン・サイス』は緑色、『ピッカー』の『ツイン・ドラゴン』は、黄色い輝きとともにその変形を解き、丸い原石に戻った。そして『インディゴ・ソード』に吸い込まれていった。
「これが『インディゴ・ソード』の本来の役目なのじゃ」
「本来の役目」
「そう、この地下の花園こそ、クモ族、ハチ族、カマキリ族に与えられた、ヨミの花園じゃ。黄泉はヨミ、『世』界を『見』るに通じる。そして王国に災いの予兆がある時には、真っ先に立ち上がれるように『インディゴ・ソード』を預かっていたのじゃ。もちろん、あの伝説の勇者からな」
『ダゴス』は話しを続けた。
「『インディゴ・ソード』には、ハチ族には『ツイン・ドラゴン』、カマキリ族には『グリーン・サイス』として与えられた、虹の原石をその中に収めることができる」
『ガマギュラス』が話した。
「王国にデリートされる途中、俺はその古い記憶を取り戻した。そしてここで『ラクレス』たちを食い止めているという訳さ」
「じゃあ私がここを通ると知って、待っていたの」
ああ、俺たちの預かったものを、あなたに渡していいか試したってことさ」
『ピッカー』は新しい戦い方を由美子に、身をもって伝えたのだった。
「この先に、さらに『強敵』がいる。そいつを倒さねば、その先にある、エビネ国までは行けない、だから危険だが、試させてもらった。この原石を託せるかどうかを……」
「結果は?」
「もはや、この国であなたに勝てるものはいない」
「さあここからは、一人で行かねばならない。『インディゴ・ソード』は黄色と緑の原石を取り込み、さらに力を増している。『天羽の羽根』を使った『アゲハの舞』か、華麗で実に鋭い剣だ。これで安心して見送れる」
『ダゴス』は言った。それは『ガマギュラス』も『ピッカー』も同じだった。
ようやく闇に目が慣れて来た頃、由美子は背後から、かすかな足跡が聞いた。そしてそれは彼女が長い地下のトンネルを進むにつれ、確実に近づいてくるようだった。
「誰かが追ってくるのかしら?」
しかし由美子が足を止めると、それは聞こえなくなった。前方を見ると、誰かいる。目をじっと凝らすと白い姿が浮かび上がった。




