ヨミの国王
「この先に行くつもりか?止めときな、この先には絶望しかない……」
「あなたは誰なの?」
「ヨミの国王、『キュラウエラ』、『ヨミの花園』は元々わしのものだ。お前こそ、何者だ。この道を通るところを見ると、ただ者ではあるまい」
「私は『フローラル・由美子』、王国を救うために、エビネ国に向かう途中」
白い影は、由美子に近づいた。次第にその姿が壁のたいまつによって、照らし出された。まっ白な身体の間接の部分には、あちこちに短い毛が生えていた。目は小さく、洞穴に長く暮らしているうちに退化したようだった。
「王国を救うだと、大口を叩くだけの腕があるかどうか、かかってこい」
「いくわよ、メタモルフォーゼ・アゲハ」
新しいコマンド・スーツは、以前より軽くてしなやかだった。見たところ、相手は武器を持っていない。今までの戦いとまるで違っていた。
「ほう、美しい。お前がフローラ国の王女か、しかし腕の方はどうかな?」
『キュラウエラ』は胸の前で手のひらを会わせて、念じた。
「ムーン、ハッ」
ひとかかえもある岩が、数個浮き上がった。彼は念波を武器に使えるのだ。由美子のいた場所に、一瞬でその岩が集まって来た。
「ズガガガッ」
岩がこなごなに壊れ砂煙が上がる。しかし、由美子は『天羽の羽根』で間一髪、浮き上がり、すでにそこにはいなかった。
「ほほう、飛べるのか、ならこれはどうする」
『キュラウエラ』は両手を上げた。同時に天井、壁から勢いよく、水がなだれ込んで来た。洞窟の中に水を引き入れたのだ。彼は水が満ち、そしてすっかり引くまで、背面に飛び、高い岩の上に立っていた。
「溺れ死んでしまうだろう、普通ならばな」
水がすっかり引き、残された岩のひとつが動き出した。そしてその表面についた泥が剥がれ落ちた。ゆっくりと青いコマンド・スーツの由美子が立ち上がった。
「これはどうだ、カーッ」
『キュラウエラ』は紅蓮の炎を口から吐き出した。しかし由美子はそれも『天羽の羽根』を変形させたマントで防いだ。
「さすがに『天羽の羽根』だ。こいつは、なかなか巧く使うわい」
そういうと、『キュラウエラ』は岩から下り、拳を握り低く構えた。
「王女は拳法は得意かな、いくぞ」
彼は飛び上がり、由美子に蹴りを入れた。由美子は危うくそれをそらした。
「ほーら、脇が空いたぞ」
脇を狙って拳が入った。しかし、由美子が(あっ)と思ったとたん、スーツがそれを感知し、脇の部分が『ハガネ』の鎧のように堅く変形した。
「何と、そのコマンドスーツは意志を持っているのか?」
それでも身体の方にもダメージはある、何度も受けるわけにはいかない。彼女は、連続してくる拳を肘で受け、後方宙返りの要領で『キュラウエラ』のアゴを蹴り上げた。手応えがあった。
「ぐっ、今のは聞いたぞ。よし、剣での戦いだ」
『キュラウエラ』は腰にぶら下げた、青い刀を抜き、由美子に切っ先を向けた。
「青龍刀、名を『ブルー・ドラゴン』。いざ、戦え」
それは薄いが、大きく曲がった巨大な剣だ。由美子は『インディゴソード』を抜いた。その柄にある黄色の原石がまぶしいくらいに輝く。
「イエロー・ストーンの力、『ツイン・ドラゴン』に変形しなさい」
ソードはその形を変えた。『ピッカー』の持っていたものとは違い。すこし短くしてあった。
「それは、黄龍刀だな、『ツイン・ドラゴン』と名付けたのか。相手にとって不足はない」
「いくわよ、『ツイン・ドラゴン』」
由美子はそれを片手で回転させながら『キュラウエラ』に近づいていった。
「なっぴも一人で戦っているのに、私が負ける訳に行かないわ」
由美子は軽やかに、宙に舞い上がった。




