7. 事件の結末、そして新たな問題
その後、警察はトクリュウの一味から事情を聴き、犯行の動機や情報収集の経緯について捜査を進めることになった。
おばあちゃんのSNS投稿が犯人の手がかりになった可能性はあるものの、実際にどの情報を誰が利用したのかは、捜査で確認しなければわからない。
一方、赤ずきんはおばあちゃんのスマートフォンを手に取り、設定画面を開いていた。
「はい。まず公開範囲を確認します」
「おお」
「位置情報の設定も見ます」
「ほうほう」
「それから、家の中や窓の外が映る写真は投稿前に確認。リアルタイムの行動報告も控える。これ、今日から徹底ね」
「わかったよ」
「あと、知らない人から住所を聞かれても答えないこと」
「そんな人、いるのかい?」
「いるかもしれないの!!」
赤ずきんは天を仰いだ。
「……もう、私が家族の情報セキュリティ担当になるしかないの?」
その横で、ウルフが小さく手を挙げた。
「俺も手伝おうか?」
赤ずきんは、ゆっくりと彼を振り返った。
「……お前はまず、自分の行動を見直して」
「はい」
「他人のSNSを勝手に監視しない」
「はい」
「相手が嫌がることをしない」
「はい」
「助けたからって、ストーカー行為がチャラになると思わない」
「はい……」
「よろしい」
赤ずきんはスマートフォンをポケットにしまった。
「じゃあ、最後にひとつだけ」
「……何?」
「私の今日の投稿、見た?」
ウルフは固まった。
「……」
「見たよね?」
「……」
「何分でいいねした?」
「……」
「ねえ?」
ウルフは観念した。
「……四秒」
赤ずきんは笑顔になった。
「へえ」
「……」
「前より一秒遅くなったんだ?」
「……努力しました」
「そこ、努力するところじゃないから!!」
森の奥まで、赤ずきんの絶叫が響き渡った。
こうして、おばあちゃんの救出事件はひとまず解決した。
ただし。
赤ずきんのスマートフォンには、その夜も通知が届いていた。
『ウルフさんがあなたの投稿に「いいね」しました』
赤ずきんは無言でスマートフォンを見つめた。
そして一言。
「……ブロックするか」
ウルフの恋路は、まだまだ前途多難だった。




