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episode15 『初めてのソロキャン』

episode15

『初めてのソロキャン』


[part1]



アウトドアセットオープン!


アウトドアセット(←プレミアムギルド登録者なのでこれらが2週間に1回、アイテムボックスに送られる)

・テント(底部分は魔力で浮遊)

・インナーマットレス(テントの中に敷く)

・タープ(簡易屋根みたいなもの)

・火石(火を生成)

・水石(水を生成)

・光石(光を生成)

・寝袋

・調理器具、食器

・椅子

・テーブル

・携帯食料品(カロリー◯イトみたいな奴、常温保存できる厚切りベーコン、インスタントコーヒー)

・その他



ノーチェ「おー」


アウトドア、キャンプ等に一ミリも知識がないので「おー」としか言えないノーチェ。


ノーチェ「このテントを遺跡、ダンジョン前に設営か……」


付属していたマニュアルを読むとそれぞれの使い方はシンプルのようだ。ようは全自動でポンッと終わる。


ノーチェ「現代のキャンパーが泣いて喜びそう……」


唯一の欠点が耐久性が低い為、買い替えが必要だが、月20Gのサブスクの恩恵で2週間に1回は補給されるプレミアムギルド登録会員なので心配ご無用。


30秒後、設営完了。


簡易屋根、タープの下の椅子に座る。鳥のさえずり、木々の葉が擦れる音、そして近くに流れる小川のせせらぎが耳に伝わる。木々の隙間から覗く太陽光が眩しい。


ノーチェ「……初めてのソロキャン」


ノーチェ「……いいじゃん」


水石と火石で湯を沸かし、ドリップポットでマグカップに注ぎ、インスタントコーヒーも入れる。味は……。


ノーチェ「うん」


現代、ようは過去世界のスーパーに売られているインスタントコーヒースティックタイプと同程度。まー飲めるぐらいの味。しかし、このシチュエーション、タダでのコーヒー(尚、サブスク代)は人生を彩り豊かにする何かがある……ノーチェはそう思った。


ノーチェ「あ、そうだ。チャッ◯ー!」


『質問、

この世界ってカップ麺ある?』


『返答、

ない』


即答。ノーチェは肩を落とす。しょうがないので常温保存できるベーコンを携帯用フライパンで炙る。ジュワジュワと音を立てて香ばしい香りが鼻を突き抜けた。


ノーチェ「うまい!」


焦げたベーコン。塩味が効いていて美味い。ノーチェは慌ててインスタントコーヒーも飲み、身体の中から染みる美味さを感じる。


ノーチェ「異世界ドリームとは程遠いがこれはこれで……わるく」


ブーン。


なんか寄ってくる。やや大きめの虫だ。それは羽音を立ててノーチェの顔辺りにまとわりつく。


ノーチェ「……じゃ……じゃま!」


手で振り払うと虫はどっかいってしまう。虫の色や形状からすると蜂のようだ。


無視してベーコンを頬張る。このベーコンは無料品(無料じゃない)としてはアタリのようだ。何度か咀嚼していると肉汁が溢れて……。


ブーン、ブーン、ブーン。


黒い物体が数匹、ノーチェの近くをたむろする。今度はハエだ。


ノーチェ「虫、多いな!ここ!」


今まで森の探索などはおこなってきたがこうやってスローライフ満喫している中での妨害はテンションが下がるノーチェ。


ノーチェはチャッ◯ーに質問する。


『質問、

キャンプ中の虫対策なんとかならない?』


『返答、

むし しましょう』


ノーチェ「ざけんな!クソAI!」(←AIのプロンプトはノーチェ自身が設定している)


色々調べた結果。冒険者達は魔法ポイズン・ライトという微弱な毒魔法を習得して害虫対策をしているらしい。現代で例えると虫除けスプレーや蚊取り線香というもの。


ノーチェ「《ポイズン・ライト》みたいなアイテム……アウトドアセットに入れといてくれよー」


因みに《ポイズン・ライト》のスキル本価格は20G……妙に高い。なので新米は虫を むし する対策というのはあながち間違ってはない。


ちなみにいまの所持金は18G(ブルレインボーとギルドホールAOで場代1G消費)。例え飛行能力で街へ飛ばしても購入は不可能。


ノーチェ「手で振り払って焼き切るか」


そう思って虫を叩こうとしたが……一瞬『空間が虹色』に変異した気がしてすぐにやめた。


そして彼女はテントにひきこもり、インナーマットレスの恩恵を受けながらゴロゴロ。暇なのでAIに冒険者の性能や職業について検索してある程度の情報をまとめる。



*ステータス


Lv/冒険者Lv

HP(端数切り上げ)/0.5×(Lv)

攻撃力(端数切り上げ)/0.2×(Lv)+武器攻撃力


*装備品

武器/剣(大剣、直剣、短剣)、槍、弓、杖、その他

防具/軽量、中量、重量型アーマーの3タイプ

装飾品/キャップやヘルム、指輪、アクセサリー等

盾/消耗品


*武器による重さについて(筋力がなければ戦いは不可)

軽量型

・低火力、重さは軽い

中量型

・中火力、重さは中

重量型

・高火力、高重量


*防具による機動力について

軽量型アーマー

・低防御、高機動力

中量型アーマー

・中防御、機動力はやや落ちる

重量型アーマー

・高防御、機動力大幅ダウン


*耐久について

武器も防具も耐久値が存在。破損中は修理が必要(修理費

はかかる)


*盾について

盾はダメージを大幅にカットしてくれるが修理不可

盾が使用可能な職業はウォーリアのみ


*職業

ウォーリア(戦士職)

・軽量、中量、重量型全ての機動力に適応

・筋力による高攻撃力、高防御力の再現性が優れており、生存率が最も高い

・スキル習得の難易度が低い為(身体で覚える為)、アイテムボックスの調整がしやすい

・オールラウンダー型で且つ、前線向き


メイジ(魔法職)

・軽量、中量型の機動力に適応

・攻撃、支援、妨害などの豊富なスキルと遠距離攻撃に特化

・呪文(心の中で)が必要で呪文を忘れると能力発動できない。また発動までにタイムラグがある

・スキル習得に読解力が要求、呪文を忘れないようにアイテムボックスに本を所持することが多く、持ち物が本で圧迫される

・後衛向きだが生存率は中程度

・武器は杖、防具はローブ系に揃えると魔法攻撃力が上昇する


トリックスター(翻弄職)

・武器も防具も軽量型のみ

・相手への弱点攻撃(頭、心臓、首、魔物ならコア)や奇襲、自身の圧倒的な機動力に特化した職業

・ユニークなスキルが多く、ステルス性も高い。

・反面軽量武器の為に基本威力が低く、ストッピング効果も弱い。真っ向勝負ではなく、テクニカルな戦いで賢く立ち回り、心理的に揺さぶる能力が要求させる為、上級者向けの職業

・遠近どちらの立ち回りが可能だが生存率は最も低い 


*ヒーラー(回復職)について

回復職はこの世界には存在しない。ポーションによるHP回復や病院で魔法治療(高額)が主流。多くの冒険者はポーションを重宝している。



ノーチェ「ヒーラー(回復職)ないのか……医療従事者やポーション屋ボロ儲けだろ……」しまいには神殿等も存在しない。つまり、結局、武器や防具、アイテムのリソース管理が重要となる。


更にノーチェはメイジのスキル等を調べる。



*メイジの基礎スキル


《ファイアショット》

属性:火

詠唱:速

威力:小

付与:炎上

解説:弾速並の火球を放つ。詠唱速度が極めて早く、威力も対人や小型の魔物を炎上させるほど。非常に汎用性のあるスキル。


《サイレントウォーター》

属性:水

詠唱:遅

威力:中

付与:拘束

解説:対象の足元から頭上まで無音の水の壁を生成。相手を拘束させる。更に追撃する場合は水を槍に変形させてダメージを与える。相手の音(声、動作音)なども無音になるので、ステルスからの奇襲に最適。


《ショックウェーブ》

属性:風

詠唱:中

威力:小

付与:吹き飛ばし

解説:極めて強い風圧を放ち、相手を転倒、吹き飛ばす。

威力は少ないが自身の落下衝撃の緩和に使ったり、用途は様々。特に高所からの落下させる手段、飛行物体を落とすには非常に強力。


ノーチェ「へー」


ノーチェ「いずれは持ってたほうがいいか……」(←借金1020G)



[part2]


19:12。もう草木も眠る時間。夜の虫がヒーヒーと音を立てている。ノーチェは……テントの中でゴロゴロしてた。


テント内の頭上に光石(ランタン替わり)を設置してずっとぼーっとしている。


ノーチェ「ムツキは今頃シューティング中か……」


などとくだらないことに思いをふけていたら……。


ブーン。


オレンジと黒い物体の虫……蜂がテントに侵入する。


ノーチェ「このっ!ついに来たか!!?」


当然、虫除け対策などしてないので蜂は悠々と飛び回る。しょうがないのでムツキから支給された短剣を振り回す!しかし、蜂も賢い生き物。刺激されたことにより、更にテント内を暴れまくる!


ノーチェ「(当たんない!!)」


そして……。


サクッ!


短剣はテントの布を華麗に捌いてしまう。


ノーチェ「あ゙ッッッ!!」


安息地だったはずのテントが惨めなボロい布切れになってしまった。


ノーチェ「ちょちょ!!耐久性!確か3回ぐらい野宿できたよな!!?」(←そもそもテント内で武器を振り回してはいけません)


そして――。


ブンブンブンブン!!


大量の羽虫が光石に目掛けて侵入!


ノーチェ「だぁーー!もう!」


テントをアイテムボックス(異次元)に送り込んで椅子に座る。とりあえず携帯食料品(カロリーメ◯ト的な)をもぐもぐ。


ノーチェ「僕は今、究極の選択を強いられている」


ノーチェ「テントを直すか……」


ノーチェ「虫を根絶やしにするか……」


とりあえずAI相談。


『質問、

テント生地を修復させたいんだけど』


『返答、

大きな破れ(5cm以上)


破れた部分を寄せる

同素材の補修布を用意

強力接着剤やシームグリップで貼り付け

両面から補強

大きい損傷は縫製+防水処理が理想です。



メッシュ部分が破れた場合


蚊帳補修テープや網戸補修シートを使います。普通のテープだと通気性が失われます。


絶対に避けたい応急処置


ガムテープだけで放置

セロハンテープ

瞬間接着剤を大量に塗る

これらは紫外線や折りたたみで劣化しやすく、後の本格修理を難しくします』


ノーチェ「誰が現代基準で言えっつったァァ!!?異世界基準で答えろ!!」


『返答、

失礼致しました。

魔力が込められたテントの場合、修復には魔力布が必要です。魔力布は魔物の皮を剥ぐことで入手が可能です』


ノーチェ「こんな時間だけど……魔物探しだな!……やだよ!めんどくさ!!」


検索中。


ノーチェ「……焚き火が良いらしいぞ!?っぱ煙よ!?」


ノーチェは誰の所有物ではない森に転がる枝や松ぼっくりを拾う。


ノーチェ「これじゃ薬草採集と変わらんじゃん!!」


文句をぶつぶつ言いながら燃料になりそうな木材を沢山抱えて火石で着火。


火がつかない。


ノーチェ「なんでだよ!?」


外の木々を見ると激しくしなっている。どうやら強風のようだ。


ノーチェ「え?なに?僕、この状態で椅子に座って野宿?!さすがに宿に帰るよ!」


ノーチェ「…………」


ノーチェは思考する。結局、宿代(宿泊費10)がかかってはリターンを取れてない。むしろマイナスの出費だ。しかしここでムツキとのコネを作れば異世界ドリームへの実現に一歩近づく。


ノーチェ「ああ!なんかメイジのスキルでも(特に《ファイアショット》)等でも取ればよかった!!」


ふといけない思考がよぎる。


ノーチェ「…………純魔法……で……何かできないか?」


ノーチェ「……火起こしだぞ?ちょっと念じれば……」


しかしノーチェは過去の事例を思い出す。毎回大惨事だ。


ノーチェ「いやいや!その考えはダメだろ!?」


ノーチェ「なにか……!方法!!」


ノーチェは強風と羽虫が飛び回る中、長考する。


ノーチェ「なんで……ムツキの依頼主はダンジョン制圧を要求したんだ?あっ!わかった!!」


ノーチェ「この遺跡をレジャー施設にするつもりだろう!」


ノーチェ「だったら!遺跡周辺は開発しやすいように森を削減したほうがいいじゃん!!そう!!」


ノーチェ「よし!着火!」


ボンッ!


焚き火が完成した。半径100mを更地に引き換えに。


そして翌朝までスローライフを堪能していたノーチェ。


遺跡から涼しい顔でムツキがやってきた。


ムツキ「やっほー!帰ってきた……え!?」


自分が探索した遺跡の周囲が更地になってる


ムツキ「ノーチェちゃん!?何があったの!!?」


ムツキが目を大きくしてノーチェに問いかける!


ノーチェ「あー……最近さぁ〜奇妙な現象が発生しててさー……なんていうかそのー……爆発?僕がテントで寝てたら突然、周囲が爆発して……そしたらこう……」


ムツキは首を傾げる。


ムツキ「あー……」


ノーチェ「……こう!」


ムツキはしばらく顎に手を当てて結論を出した。


ムツキ「『ミッシング(消失)』だねー……」


ノーチェ「え?ミッシング?」


ムツキ「最近、郊外や空とかで物体が突如消滅する怪奇現象が起きてるの。それで世間では『ミッシング』って噂されてる」


ノーチェ「……それの原因は?」


ムツキ「さあー……でもまあ、ノーチェちゃんは無事そうでよかったよ」


ノーチェ「……あーよかったー(棒)」


ムツキ「んじゃあ!帰るの移動!お願い!」


ノーチェ「まかせろ!あ、そういえばこの依頼ってなんで遺跡内全討伐なんだ?」


ムツキ「それ?なんか依頼主が土地開発権力者で……レジャー施設作りたいからだって」


ノーチェ「……セーフ!」


ムツキ「ん?」


ノーチェ「なんでもない!」



episode15

END

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